令和7年度(2025年度)施政方針

更新日:2025年06月03日

令和7年度(2025年度)施政方針

中田慎也市長は、令和7年6月2日、令和7年第3回市議会定例会で、令和7年度の施政方針を表明しました。

施政方針は次のとおりです。

目次

誇りあるまちを、次の世代へ。

1.  誇りあるまちを、次の世代へ。

2.  市政運営の基本方針

(1)未来への投資

(2)健康的な暮らし

(3)チャレンジ応援

(4)安全第一のまち

(5)改革の断行

3.  4年間の重点施策

4.  補正予算案の概要

1.誇りあるまちを、次の世代へ。

(はじめに)

令和7年第3回伊丹市議会定例会の開会にあたり、令和7年度一般会計補正予算(第1号)をはじめ、提出した各議案の提案理由をご説明申し上げるとともに、市長就任後、初めての定例会でありますので、今後の市政運営に対する私の所信の一端を申し述べさせていただきます。

(伊丹への想い)

4月13日に執行されました伊丹市長選挙におきまして、市民の皆さまからのご信任を賜り、4月24日に就任いたしました。第25代伊丹市長として市政運営の舵取り役を担うこととなり、皆さまの期待の大きさを実感するとともに、この重責を果たすべく決意を新たにしたところです。
私は、この伊丹で生まれ育ちました。そして地元をより良く、より魅力的なまちにしたいという想いで、伊丹市議会議員、兵庫県議会議員として活動し、それぞれの立場から、常に伊丹のまちを見つめ続けてきました。これまで伊丹を支えてこられた先人の想いを大切にしながら、若者世代が希望をもって未来が描けるような、次の世代のための政治を心掛けてきました。
伊丹には、国内主要空港まで約2時間以内にアクセスできる伊丹空港があります。また、平坦でコンパクトな市域に幹線道路が整備され、鉄道や市内全域を運行する市バスにより、大阪や神戸をはじめ近隣都市への通勤・通学に便利なうえ、商業施設や医療施設、教育施設が立地しており、日常生活における利便性に優れた「暮らしやすさがちょうどいい」まちです。
私は、「安全・安心」や「人づくり」を柱としたバランスの取れたこれまでのまちづくりを引き継ぎながら、伊丹の暮らしやすさを彩る歴史や文化、身近に四季を感じられる豊かな自然、また、市民や地域が主体となった多様な活動などの伊丹のまちが持つ魅力を、市民や事業者の皆さまとともに、一層の磨きをかけながら、市内外に発信していきたいとの強い想いを抱いています。
伊丹のまちに誇りを感じ、「住みやすい」、「住み続けたい」と実感するだけでなく、伊丹を離れても「もう一度住みたい」と思えるまちづくりを実現し、次の世代に引き継いでいけるよう、市政運営に全力で挑む所存です。

 

2.市政運営の基本方針

次に、市政運営の基本的な考え方について、申し上げます。
私は、誇りあるまちを、次の世代へとつなぐため、5つの政策方針を公約に掲げました。
これらの政策方針では、次の世代を担う子どもたちをはじめ、様々な年齢や世代の「すべての人」を中心に据えて取り組んでまいります。

(1)未来への投資

政策方針の1つ目は、「未来への投資」です。
まず、次の世代を担う子どもたちのための政策に取り組みます。
今年2月に公表された日本の人口動態統計速報値によりますと、令和6年の出生数は、約72万人と過去最少を更新することとなり、本市の子どもの数も国と同様に減少傾向にあります。出生数の減少と死亡数の増加により、人口の自然減が急速に進む社会において、次の世代を担う「子どもたち」は、最大のまちの財産です。
すべての子どもたちが心豊かに健やかに育ち、子育て世代が「伊丹で子どもを育てたい」と思えるまちづくりを目指すため、新たな学びや体験の機会を創出するなど、未来を見据えた支援の充実と、子どもや子育て世帯を支える環境づくりを進めてまいります。

(2)健康的な暮らし

2つ目は、「健康的な暮らし」です。
日本の平均寿命が大きく延びており、人生100年時代といわれています。厚生労働省の「健康日本21(第三次)」においては、個人の生活の質の低下を防ぎ、全ての国民が健やかで心豊かに生活することは、平均寿命と健康寿命の差を短縮することとなり、持続可能な社会の実現に寄与するものと示されています。
一人ひとりが健康への意識を高め、より良い生活習慣を身に着け、自分らしい人生を送っていただきたいと考えます。
長寿社会に対応した市民の主体的な健康づくりや社会参加を支援するとともに、健康寿命の延伸に資する多様な取組を関係機関と連携しながら進めてまいります。

(3)チャレンジ応援

3つ目は、「チャレンジ応援」です。
兵庫県民がともに目指す姿が描かれた「ひょうごビジョン2050」では、「誰もが希望を持って生きられる、一人ひとりの可能性が広がる『躍動する兵庫』」とし、目指す姿の一つに「新しいことに挑戦できる社会」が掲げられています。
人生のあらゆる段階における、新たな経験や知識の習得は、自己の成長や自己実現、社会との関係性を深め、多様なライフデザインを描くことにつながっていくと考えます。また、市民一人ひとりが、年齢や性別、経験にかかわらず、新たなことに積極的にチャレンジし、生き生きと活躍することで、まちの魅力や活力も生まれます。
就労や起業、資格取得をはじめ社会貢献、地域活動への参加など、ライフステージの変化に応じたあらゆるチャレンジを応援するために、より効果的な情報発信や支援策の充実に努めてまいります。

(4)安全第一のまち

4つ目は、「安全第一のまち」です。
我が国においては、大規模な自然災害が頻発しており、南海トラフ地震の発生確率も高まっています。また、高齢化等により医療需要の増加が見込まれるなど、さらなる安全や安心への備えが求められています。
市民の生命や財産、健康が守られる環境は、暮らしの基盤となるものです。そのため、誰もが安全で安心を感じながら暮らすことのできるまちづくりが大切です。
国や兵庫県と連携した危機管理体制の強化をさらに進めるとともに、市民や地域、事業者の皆さまの取組を支援し、地域防災力の向上を図ります。また、警察や関係機関と連携し、交通安全や地域防犯に取り組むとともに、地域医療の中核となる統合新病院の整備を進めてまいります。

(5)改革の断行

そして5つ目は、「改革の断行」です。
近年、地方自治体の持続可能性が注目されています。本市が将来にわたって活力を維持できるよう、市政を運営していかなければなりません。
そのためには、まず、「稼ぐ市役所」として、時代とともに変化する市民ニーズに応えていくため、伊丹市行財政プランに基づき、新たな財源確保や事務事業の見直しなど、さらなる行財政改革に取り組みます。
次に、「伝える市役所」として、市政情報の発信や、まちの魅力を市内外に発信するシティプロモーションなど、情報伝達の手段やターゲットを研究し、より効果的な広報活動を展開します。
最後に、「働きやすい市役所」として、職員がやりがいを感じ、組織や仕事に貢献する意欲が持てるチーム作りや、自ら課題解決に向けて行動できる人材の育成に取り組みます。また、高い知見を有する外部人材を活用し、組織力の向上に努めてまいります。
 

3.4年間の重点施策

次に、公約の実現に向けて、今後4年間に取り組む重点施策について、第6次伊丹市総合計画の枠組みに沿って述べさせていただきます。

(1) 大綱1  安全・安心

大綱の1つ目、「安全・安心」です。
避難所環境の向上を図るため、令和6年度に学校の受水槽を活用した応急給水設備を整備し、組立式仮設トイレの備蓄をはじめ、学校や市立スポーツ施設等の体育館空調についても整備を進めているところです。災害時において、配備した資機材等を活用し迅速な避難所開設が行えるよう、地域と連携して防災訓練を行います。
避難行動に支援が必要な方への支援制度の周知・啓発に、引き続き努めるとともに、市民の皆さまが災害時に必要な情報を得られるよう、「LINE防災アプリ」や「ひょうご防災ネット」に加え、SNSなど多様な情報伝達手段を活用した情報発信・啓発を行います。
また、様々な事業者や団体等との災害時応援協定の締結に取り組んでいくとともに、国の専門家をアドバイザーとして招き訓練の評価・検証を行い、迅速かつ的確な災害対策を行える体制を構築してまいります。

(2)大綱2  育ち・学び・共生社会

大綱の2つ目、「育ち・学び・共生社会」です。
子どもの学びや体験の機会を等しく提供するため、習い事などに対して一定の費用を支援する、いわゆる「習い事バウチャー制度」の導入を行います。
いじめや不登校など、複雑かつ多様な課題に対応するため、兵庫県と協調して教育人材の確保・充実を図ります。
学校給食では引き続き、食材に有機栽培による米や野菜等を使用します。
中学校部活動の地域移行については、令和8年度中の円滑な移行を進めます。学校・地域が連携した子どもたちのスポーツ・文化芸術活動に親しむ機会の確保と教員の働き方改革の両立を図ります。
幼児教育では、待機児童対策に引き続き取り組むとともに、事業者と連携し、さらなる質の向上に取り組みます。
放課後児童クラブにおいては、共働き世帯の増加等による利用希望者の増加と多様化するニーズに対応するため、民間児童クラブの誘致を進めます。
子どもたちの自主的な学習意欲を育むため、公共施設を中心に自習環境の充実を図ります。
女性があらゆるライフステージにおいて自分らしく活躍することができるよう、活用しやすい相談体制づくりを進めてまいります。

(3)大綱3  健康・医療・福祉

大綱の3つ目、「健康・医療・福祉」です。
出産前後の子育て世帯を心身ともに支える取組を推進し、産前・産後の支援の充実を図ります。
高齢者や障がい者の移動手段を確保し、社会参加を促進するため、外出を支援する市バス特別乗車証の交付を継続します。
また、心身の活力低下によるフレイルを予防する取組を充実させるとともに、要支援・要介護状態の悪化の防止・改善に向けた支援に取り組みます。
健康意識を高め、疾病の予防や早期発見・早期治療につながるよう、健康診査の受診率の向上に向けた取組を行います。
地域医療の中核となる市立伊丹病院の統合再編整備を着実に進めるとともに、経営基盤の強化に取り組みます。また、近畿中央病院跡地への医療機関の誘致については、早期の実現に向け、公立学校共済組合とともに進めてまいります。

(4)大綱4  市民力・にぎわい・活力

大綱の4つ目、「市民力・にぎわい・活力」です。
伊丹空港の周辺地域の安全・環境対策に万全を期すとともに、伊丹市と世界をつなぐ道を拓くため、国際線就航に必要な規制緩和について、国をはじめ関係機関へ積極的に働きかけます。
「清酒発祥の地 伊丹」や「住みやすさ」など、本市の魅力にさらに磨きをかけ、内外にその情報を発信するとともに、伊丹の特色を活かしたブランド力の向上を図ります。
伊丹で創業したい人のスタートアップを支援するため、創業者のニーズにあわせて講座内容等の充実に取り組みます。
都市農業の基盤強化を図り、食の安全・安心に努めるとともに、市内産農産物の魅力向上や販売促進にかかる情報発信を行い、地産地消を推進します。
市立伊丹ミュージアムにおいては、登録博物館を目指すとともに、市民の皆さまに愛され、親しみや誇りをもっていただけるような事業展開を図ってまいります。

(5)大綱5  環境・都市基盤

大綱の5つ目、「環境・都市基盤」です。
本市では、伊丹市ゼロカーボンシティ宣言を表明し、市民や事業者の皆さまと一体となり、2050年カーボンニュートラル実現に向け取組を進めているところです。
電力の地産地消を推進するため、豊中市伊丹市クリーンランドにおいて、ごみの焼却により発電した電力を、市内の教育施設等を中心とした公共施設に供給します。
また、事業者の脱炭素型のビジネススタイルへの意識や行動の変容を図るため、地域金融機関や関係団体等と連携し、脱炭素経営支援を行います。
家庭から回収した廃食用油を持続可能な航空燃料(SAF)へ再資源化する取組に参画するため、事業者と資源化促進に係る連携協定を締結します。
子どもたちが安心してボール遊びを楽しめる公園の環境整備に取り組みます。
安全で快適な住環境を形成するため、道路や公園、上下水道等のインフラの長寿命化を図るなど、引き続き、施設の安全管理を徹底してまいります。

(6)大綱6  参画と協働・行政経営

最後に、大綱の6つ目、「参画と協働・行政経営」です。
伊丹の魅力や必要な情報を伝える広報力の向上を図るため、外部人材の活用により、広報戦略を策定し、効果的な情報発信や職員の広報マインドの醸成に取り組みます。
市民サービスの向上を図るため、外部人材を活用し、組織課題の解決や働きがいのある職場づくりなど、職員のエンゲージメントを向上させる取組を進めます。
将来を見据えた持続可能な行財政運営の実現に向け、DXの推進などによる労働生産性の向上やネーミングライツ等による財源の確保、公共施設の再配置基本計画の取組などを推進します。
市長の行政運営の評価として、市長退職金について、外部の客観的意見に基づく成果報酬型の評価制度を導入します。

4.補正予算案の概要

続きまして、令和7年度の6月補正予算案に係る主要な施策について、その概要を申し上げます。
人材の育成等に関する高い知見を持った外部人材を活用し、自ら行政課題の解決に向けて積極的に行動できる職員の育成につなげます。また、DXに関わる高度人材の育成と全庁的なデジタルスキルの向上を図ります。
令和8年度の中学校部活動の地域移行に向けて、多様な地域クラブ等の参画を促すための相談窓口の設置や研修を実施するとともに、施設整備等の調査・研究を行います。また、地域クラブ等の活動を支援する中間支援団体の運営に関する諸課題の整理を行うとともに、マニュアルを作成します。
安心して子育てできる環境づくりを推進するため、令和8年度新1年生において「まちなかミマモルメ」の利用料等を無償化し、広報時期を早めることで、より多くの保護者に利用してもらえるよう取り組みます。
急な病気や怪我をした際に、看護師等の専門家に24時間365日、電話で相談ができる「救急安心センターひょうご事業(#7119)」を本市においても開始します。
学校現場において教職員が校務で活用する端末機器等について、国の有利な財源を活用して更新します。
動画を活用した広報力の強化を図るため、動画制作に必要な機材を更新します。
保護者サービスの充実と保育士等の業務負担軽減を図るため、私立保育所におけるICTを活用した、業務システムの導入を支援します。
令和7年10月から開始が予定されている障がい者の就労選択支援事業に対応するため、システム改修を実施します。
これらの主要施策を盛り込んだ令和7年度6月補正予算案の規模は、1億5,135万6千円となっております。

(おわりに) 

私は、「未来への投資」をはじめとする5つの政策方針を公約として述べました。これらについては、市長就任後、半年以内を目途に着手率100%を目指してまいります。
伊丹のまちづくりは、私一人の力だけで成し遂げることはできません。私とともに政策を進める職員に向け、就任当初、私が大切にしたい3つの視点について伝えました。
1つ目は「市民目線と現場主義」です。現場で把握した課題を分析し、改善策を職員自らが提案することができるよう、市民目線で見て、聞いて、感じることが何よりも重要であるということ。
2つ目は「対話とコミュニケーション」です。職員間の活発な対話による信頼関係を構築し、目指すまちづくりについて、組織内で共通認識を持つこと。
3つ目は「積極的なチャレンジ」です。本市の発展のためにはチャレンジが不可欠です。一人ひとりが課題解決に向けたチャレンジが行える組織風土を作っていくこと。
これら3つの視点を念頭に置いて、市長として先頭に立ち、職員とともに取り組んでまいります。

以上、市政運営に対する基本的な姿勢並びに市政に臨む所信、公約の実現に向けた重点施策、補正予算案の主要な事業について申し述べました。
議員各位をはじめ、市民の皆さまのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。