平成31年度教育基本方針

更新日:2021年03月31日

木下教育長は、平成31年第1回市議会定例会(平成31年2月25日)で、平成31年度教育基本方針を表明しました。内容は以下のとおりです。

はじめに

   先程、市長から市政運営の基本方針及び平成31年度予算案の諸事業について所信の表明がございましたが、これに基づきまして、私から平成31年度の伊丹市教育基本方針について、重点施策を中心にその考えを申し述べます。
   最近「人生100年時代」や「超スマート社会(Society5.0)時代」の到来といったことばをよく耳にするようになりました。このように今、我が国は、時代の大きな変革期にあります。その変化は、これまで人類が築いてきた様々な原理や約束ごとが、波にさらわれていくような巨大なものかもしれません。
   私たちの「使命」は、子どもたちにこのような変化の激しい先行き不透明な時代をしなやかに生き抜いていくことのできる力をつけることです。
   このようなことから、新学習指導要領では、「コンテンツ(知識や技能)の定着」から「コンピテンシー(資質や能力)の育成」に大きくその比重が移りました。
   学校教育においては、新学習指導要領の趣旨を踏まえ、新しい時代に求められる資質・能力を育成するために、授業において、「主体的・対話的で深い学び」を実践するとともに、「カリキュラム・マネジメント」に取り組んでまいります。また、子どもたちに必要な力や地域への愛着、誇りを育成するために「社会に開かれた教育課程」の策定に向け、学校と地域の連携・協働を推進してまいります。さらに「地域とともにある学校づくり」を進めるために、平成30年度末までに、全小・中・高等学校26校をコミュニティ・スクールとする手続きを終え、更にその充実を図ってまいります。
   教職員の勤務時間の適正化については、平成30年8月に策定した「学校における働き方改革基本方針」に基づき、教職員の心身の健康の保持やワーク・ライフ・バランスの取れた生活の実現、情熱とやりがいをもって働くことができる職場環境を整備してまいります。また、教職員が子どもと向き合う時間を十分確保するとともに教材研究等授業準備の時間を確保し、質の高い授業を実現してまいります。具体的な方策としては、業務改善の推進など4つの観点から取り組んでまいります。
   中学校の運動部活動については、平成30年10月に策定した「伊丹市中学校運動部活動に関する方針」に基づき、生徒が生涯にわたって豊かなスポーツライフを実現することができる資質・能力を育む基盤として、運動部活動を持続可能なものとするよう、指導・運営に係る体制の構築に取り組んでまいります。文化部についてもこれに準じてまいります。
   社会教育においては、2020年4月の中央公民館のスワンホール内への移転を機に、さらに多様な市民の学習、交流の場となる取組を進めてまいります。みやのまえ文化の郷再整備事業に伴う博物館の機能移転については、連綿と続く本市の歴史への理解が深まり、郷土への愛着がさらに増すよう、市長部局の関係各課と連携し、取組を進めてまいります。
   スポーツの振興については、「伊丹市スポーツ推進計画」に基づき、全ての市民がアクティブライフを楽しむことができる環境づくりに引き続き取り組んでまいります。
   そして、平成31年度より、これまで市長部局にあった『こども未来部』を、教育委員会に設置し、本市の全ての子どもに質の高い保育・幼児教育を提供するとともに、子ども・若者の育ちを支援する施策を総合的に推進してまいります。
   また、国に先駆けての幼児教育の無償化をさらに一部前倒しし、併せて保育所待機児童の解消に取り組むとともに、『第2期子ども・子育て支援事業計画』を策定し、『伊丹市幼児教育推進計画』を着実に推進してまいります。
   「教育」の出発点は学校教育ではありません。教育は人としてこの世に生を受けた時から始まっており、様々な人との出会いや体験を通して、自分らしく幸せな人生を送ることができる力を身につけていく営みです。一人一人が作っていく「人生のドラマ」を応援していくことが教育の本来の目的であります。
   人のライフステージに合わせて、乳幼児期から生涯にわたる教育環境を整備し、伊丹を担う有為な人づくりを目指してまいります。
 引き続き、「伊丹市教育大綱・基本大綱」の体系に沿って、教育の各分野におけるその主な取組をご説明申し上げます。

基本目標 市民が主体となったまちづくりの実現

基本方針2 多様性を認め合う共生社会

   「人権尊重のまちづくり」については、学校、家庭、職場等において、人権教育指導員の派遣や市民団体との連携等により、人権学習の機会の充実を図ってまいります。
   「性的マイノリティ」ヘの対応については、発達段階に応じた教材を活用し、児童生徒の正しい理解を深めてまいります。
   「多文化共生のまちづくりと国際交流」については、国際友好都市への中学生の派遣や受入などを継続し、自国の文化や異文化への関心を高め、国際的な視野を持った生徒を育成してまいります。また、今後、増加が予想される外国人市民である園児児童生徒に対し、適応指導員の派遣等による個々のニーズに応じた指導の充実に努めてまいります。

政策目標1 支え合いの心でつくる安全・安心のまち

施策目標1 安全・安心のまちづくり

主要施策3 交通安全と地域防犯の推進

   「交通安全対策の推進」については、引き続き児童生徒の交通安全意識の高揚と交通マナーの向上を図るため、伊丹警察署との連携を強化し事故等を分析し、全小・中学校において「自転車交通安全教室」を実施してまいります。 

政策目標2 未来を担う人が育つまち

施策目標1 子ども・若者・家庭・地域がともに育ちあう環境づくり

主要施策1 子どもの育ち・若者の自立を支援する環境づくり

   「保育・幼児教育の充実」については、「伊丹市幼児教育ビジョン」に基づき、公私立の幼稚園、保育所(園)、認定こども園等就学前施設及び、学校、家庭、地域、行政が十分に連携を図り、全ての子どもを対象に質の高い保育・幼児教育の実現に取り組んでまいります。
   保育需要が大きく伸びる中、新たな民間保育所の誘致や保育人材の確保を図るなど引き続き、待機児童対策を進めてまいります。
   乳幼児期(0・1・2歳児)においては、身近な大人の愛情に満ちた受容的で応答的なかかわり(アタッチメント)を大切にした保育を丁寧に進め、「非認知的能力」の土台となる好奇心(意欲)を育んでまいります。
   幼児期(3・4・5歳児)においては、子どもの主体的な「遊び」や様々な体験を通して、自尊感情や自制心、忍耐力、協調性などいわゆる「非認知的能力」を育成してまいります。
   これら幼児教育の重要性については保護者や地域住民に広く発信するとともに、「質の高い保育・幼児教育」を実践するために、市内全ての就学前の保育・教育に携わる職員等が学び、交流する場を設定してまいります。
   また、2020年4月の開園に向け、西部認定こども園・南部認定こども園の整備及び、稲野運動公園内にこばと保育所を移転整備してまいります。
   2022年開園予定の南西部こども園につきましては、幼稚園教諭・保育士・保育教諭等の意見を十分に踏まえ、子どもにとって魅力的で、地域からも愛される施設となるよう、基本設計を進めてまいります。
   「発達に支援を要する子どもの支援」については、発達に支援が必要な子どもたちが地域で安心して生活できるよう、こども発達支援センター「あすぱる」及び総合教育センターや民間事業所等との連携を図ってまいります。また、公立保育所(園)に定着している「統合保育」を、民間保育所(園)にも拡大してまいります。
   「子どもの育ちの支援」については、2020年度内の供用開始を目指し、新児童館を整備するなど、多様な学習や体験の機会を提供し、子どもの創造性を育んでまいります。また、「放課後児童くらぶ」においては、施設等環境整備を進め、全学年を対象とした活動を実施してまいります。
   「若者の自立支援」については、少年愛護センター等において、青少年や保護者の相談に対して適切な対応と助言を行い、青少年の健全育成・自立支援を図ってまいります。

主要施策2 家庭の子育て力を高める環境づくり

   「家庭教育の推進」については、子育て中の親が、子どもの年代ごとの親の悩みを共有し、解決策を考える機会となるような事業を実施してまいります。特に、働いている方の参加機会の充実を図ってまいります。
   「子育て支援の充実」については、地域子育て支援拠点において、子どもを遊ばせながら、常時、子育てに関する相談を行うことができるフリースペースの提供及び子育てコンシェルジュによる情報提供など、子育て支援施策の充実に努めてまいります。
   「子育て家庭への経済的負担の軽減」については、0~2歳児の保育料を見直してまいります。また、秋からの国の無償化動向を注視しつつ、制度の周知に努めてまいります。

主要施策3 子育ち・子育てを地域で支える環境づくり

   「地域ぐるみの子育て支援」については、子育て支援に関係する組織やサークル、地域団体、青少年健全育成に資する団体の活動を支援してまいります。また、少年補導委員による補導活動を通して子どもとの信頼関係を築き、地域での声かけや見守りの大切さを市民に広く啓発してまいります。

施策目標2 子どもの生きる力を育む魅力ある学校教育

主要施策1 確かな学力の向上

   「自ら学び自ら考える力を育む教育の推進」については、主体的に学ぶ姿勢や知識を活用し問題を解決する力に課題があることから授業改善、学力低位層の底上げ、家庭における主体的な学習習慣の確立に取り組んでまいります。
   授業改善については、教師主導の授業から子どもが学びの主体となる、「主体的・対話的で深い学び」を実現してまいります。単なる知識や技能の習得ではなく、得た知識等をもとに自分で考え判断し表現できる力の育成が不可欠であり、「比較、分類、関連付け」などの思考スキルの定着を図ってまいります。
   学力低位層の底上げについては、学力向上支援教員を配置するなど、「少人数指導」を充実し、一人一人を大切にした授業を実施してまいります。また、教員免許を有する人材を活用した「放課後学習」や教職志望の大学生による「子どもサポーター派遣事業」を実施してまいります。
   家庭における主体的な学習習慣の確立については、家庭との連携を図り、予習・復習の定着や自主学習ノート等を活用し、自己の課題に応じて学習に取り組む力を育成してまいります。
   また、学校・家庭・地域・ボランティア等の連携・協力により実施している「土曜学習事業」を、より魅力ある学習内容に充実させてまいります。
   「新たな社会への対応力を育む教育の推進」については、「Society5.0」を生きる子どもたちを育てていくために、全小・中学校にタブレットを各40台整備するとともに、それに対応する無線LAN環境を整備してまいります。
   小学校の外国語活動については、2020年度からの外国語教育全面実施に向け、昨年度実施時間数にそれぞれ10時間程度上乗せし、実施してまいります。
   また、学級担任や外国語を担当する教員が、英語指導補助員(JTE)や外国人英語指導助手(ALT)の協力を得て、より効果的な英語教育を推進してまいります。
   「魅力ある市立高等学校づくり」については、選ばれる学校を目指し、特色化・活性化を一層推進してまいります。特色化事業では、グローバル社会に対応できる資質能力を育成するため、また、2020年度から導入される「大学入学共通テスト」に向けて、イングリッシュキャンプ等の実施や、自分で課題を見つけ探究する学習として、「論文作成」や「課題研究」に取り組んでまいります。
   活性化事業では、「放課後特別学習」や教職員による「補習授業等」を実施し、学力の伸長を図るとともに、チャレンジ精神旺盛な意欲ある生徒を育て、多様化する生徒の進路実現に対応してまいります。
   「特別支援教育の推進」については、全ての子どもにとってわかりやすい「教育のユニバーサルデザイン化」を推進してまいります。また、特別な支援を必要とする園児児童生徒の教育的ニーズの把握に努め、「個別の教育支援計画」の作成及び活用を促進し、切れ目のない指導と必要な支援を行ってまいります。

主要施策2 豊かな心と健やかな体の育成

   「豊かな心を育む道徳教育、情操教育の推進」については、小・中学校における道徳の教科化に伴い、答えが一つではない道徳的な課題を一人一人の児童生徒が自分自身の問題ととらえ、向き合う等、「考え・議論する道徳」を実践してまいります。また、子どもたちの成長を認め、励ます「評価」を実施してまいります。
   キャリア教育については、将来を見据え、学ぶことや働くこと、生きることの尊さを実感し、社会とのつながりや社会における自らの役割を考えることができる力を育んでまいります。
   「子どもの問題行動への対応」については、いじめ問題の対応として、「いじめ防止等対策審議会」や「いじめ防止フォーラム」等を通じ市民のいじめへの認識を高め、いじめの未然防止に市民総がかりで取り組んでまいります。
   また、「いじめアンケート」調査により、いじめを組織的に認知し、早期発見・早期対応に努めてまいります。
   さらに、「スクールカウンセラー」等の専門スタッフを配置し、「チーム学校」としての組織力を向上させるとともに、警察等関係機関との連携を進めてまいります。
   不登校児童生徒への対応については、わかる授業や魅力的な学校行事等を通して、児童生徒に学ぶ意欲や達成感を与え、学校が「心の居場所」となるよう努めてまいります。
   また、学校復帰支援については、適応指導教室の環境整備やカリキュラムの見直しなど、内容の充実を図ってまいります。
   さらに、「不登校対策共通理解実践事項」や「児童生徒の個人状況・学校対応状況シート」の活用を図り、新たな不登校を出さないように取り組んでまいります。
   「子どもの健やかな体づくりと部活動の推進」については、体育授業を改善するほか、日常的に運動する習慣をつけるため、休み時間等における「外遊び」を進めてまいります。
   中学校においては、外部指導者や部活動指導員を配置するなど、部活動の充実を図ってまいります。また、「伊丹市中学校運動部活動に関する方針」に基づき、適切な部活動の運営を進めてまいります。
   「健全な食生活の推進」については、「献立コンクール」などを通して、今後も引き続き食への関心を高めてまいります。
   アレルギー対応としては、「伊丹市立学校園におけるアレルギー対応マニュアル(3訂版)」に基づき、個に応じたきめ細かな対応に努めてまいります。また、公立保育所(園)、神津こども園においては、「食物アレルギー対応の手引き(改訂版)」に基づき、アレルギーを有する子どもに合わせた「なかよし給食」を引き続き実施してまいります。

主要施策3 信頼される開かれた学校園づくり

   「学校園情報の積極的な発信と学校園運営への市民参画」については、教育広報紙「教育いたみ」や教育情報紙、アピールリーフレット、市ホームページ「教育長の部屋」等を通じ、保護者や地域住民に伊丹の教育の現状等の情報を積極的に発信し、課題の共有を図ってまいります。
   また、社会総がかりで子どもを育てていくために、学校と地域が協働して学校運営に取り組む「コミュニティ・スクール」を充実させ、学校運営協議会と地域学校協働活動との連携を図ってまいります。
   「安全・安心な学校園づくり」については、学校園施設の整備として小学校1校、中学校1校の大規模改造工事、小学校5校、中学校1校、幼稚園1園の空調設備改修工事などの老朽化対策及び、小学校1校の体育館、中学校4校の格技室のLED化を実施してまいります。
   通学路の安全確保としては、市関係部局や伊丹警察署と連携を図り、改善要望等がある箇所に対し、迅速な対応を行うとともに、地域等の協力による登下校時の交通安全指導や、「まちなかミマモルメ」の効果的な活用を充実させてまいります。
   「教職員の意識改革と資質の向上」については、教職経験に応じた事例研究やワーク等の実践的研修を継続してまいります。また、いじめや不登校などの教育課題対応研修の実施や新学習指導要領の全面実施に向けた研修を行ってまいります。

施策目標3 ライフステージごとに学び活躍する人づくり

主要施策1 生涯にわたる主体的な学習の支援

   「市民の主体的な学習や活動の支援」については、市民の主体的な学習活動を支援していくとともに、学びによる地域の課題解決・活性化を図ってまいります。公民館においては、学びによる地域活性化支援事業「まちなか公民館」を引き続き実施してまいります。
   「社会教育施設等の効果的活用」については、地域等との連携と利用者の利便性向上を図りながら、各施設の特色を活かし施設間のネットワーク化をさらに拡大してまいります。
また、生涯学習センターにおいては、大規模改修に向けた設計を進めてまいります。
   「伊丹の特色を活かした学びの創出」については、「ことば蔵」において、「図書館を使った調べる学習コンクール」を定着させ、調べる力やまとめる力、表現する力を育んでまいります。また、「交流フロア運営会議」などを中心に、人と人とがふれあい・語りあい・学びあう「交流事業」を企画・実践してまいります。
   博物館においては、地域と連携した調査・研究事業を実施し、その成果を展示や刊行物等で公開・報告することで、市民の郷土伊丹に対する誇りと愛着を育ててまいります。また、博物館ボランティアとの協働による普及教育事業を実施し、歴史文化への関心を高めてまいります。

主要施策2 生涯スポーツの推進

   「生涯スポーツの環境づくり」については、「東京2020オリンピック・パラリンピック」、「ワールドマスターズゲームズ関西2021」に向けて機運を高めるため、多くの市民が参加できる各種イベント等を検討してまいります。
 また、「伊丹市スポーツ推進計画」に基づき、世代や性別の違い、障がいの有無等に関わらず、あらゆる市民が気軽にスポーツに親しむことができるよう支援してまいります。
   「伊丹の特色・資源・人材を活かしたスポーツ振興」については、全中学校での「なぎなた授業」の充実を図るとともに、「全国高等学校なぎなた選抜大会」を引き続き開催し、「なぎなたのまち伊丹」を全国にアピールしてまいります。

政策目標3 にぎわいと活力にあふれるまち

施策目標1 個性とにぎわいあるまちづくり

主要施策3 文化資源の保存・継承・活用

   「文化財の保存と情報発信」については、国指定史跡「有岡城跡」をはじめとする文化財の適切な保存・管理を継続してまいります。また、子ども向けの体験学習、講座等を実施し、郷土伊丹の埋蔵文化財・歴史遺産の情報発信を図ってまいります。
   「文化財を活かしたまちづくり」については、文化財を保護・継承する市内文化財保護団体と連携し、講演会や史跡めぐり、史跡一斉清掃などの事業を継続し、郷土への愛着心を育成してまいります。


   以上、平成31年度の伊丹市教育基本方針について、ご説明申し上げました。伊丹の教育のさらなる充実・発展を目指して、全力で取り組んでまいりますので、ご理解・ご支援賜りますようお願いいたします。
 

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