令和8年度教育基本方針
太田教育長は、令和8年第1回市議会定例会(令和8年2月25日)にて、令和8年度の教育基本方針を表明しました。内容は以下のとおりです。
はじめに
混迷を極めるグローバル情勢や生成AIなどのデジタル技術の急速な発展が、社会や経済に大きな影響を与えています。さらに、少子化の進行は予想を超える速さで進み、労働力不足や労働市場の流動化が社会生活にも影響をもたらしています。
このような予測困難な時代に、未来からの留学生である子どもたちにはどのような力を育てることが必要なのでしょうか。「読み・書き・計算」と言われるように、子どもたちが、学びの基盤となる基礎的な学力を確実に身につけていくことは重要です。ただ、デジタル社会では、知識を簡単に得ることができる一方で、誤った情報であっても誰でも簡単に発信することが可能です。これからは、情報そのものよりもその意味を理解したうえで、必要なものや真偽を見極める力、俯瞰的に思考する力などいわゆる非認知能力 を身につけていく必要があります。また、不確実性の時代に対応するためには、問題を発見し、多様な他者と協働して解決する力、生涯にわたり学び続け自らの人生を舵取りする力が求められ、OECDは「21世紀型教育」として、「批判的思考」「創造性」「コミュニケーション」「協働」の4つを育む教育を提唱しています。
このような潮流を受け、国では次期学習指導要領に向けた議論が進められています。「論点整理(令和7年9月)」において、「生涯にわたって主体的に学び続け、多様な他者と協働しながら、自らの人生を舵取りすることができる、民主的で持続可能な社会の創り手を『みんな』で育む」ために、1.主体的・対話的で深い学びの実装、2.多様性の包摂、3.実現可能性の確保の3つの方向性が示されました。
この流れは、本市の教育が目指す姿と志を同じくするものです。
本市においては、多様な子どもたちに対応する「カラフルな教育」を令和7年度から推進しています。「カラフルな教育」とは、「これまでの一斉指導が果たしてきた役割を踏まえつつ、多様な教育ニーズに対応するため、集団での指導を基盤にしながら、1人1台端末の活用も含め、子どもたちの持つ個性や能力、興味関心に応じて多様で柔軟な学び方を支援し、ちがいを豊かさに変える教育」です。
また、令和7年度は大阪大学大学院連合小児発達学研究科との連携のもと、睡眠の重要性を伝える保護者や子ども向けのリーフレットを作成・配布するとともに、教員研修や保護者向けの講話を実施するなど、教育委員会事務局の全部局が睡眠を中心とした生活習慣の改善に取り組みました。さらに、保幼小接続や小中一貫教育を推進しました。
長期欠席者数は小学校において減少傾向がみられるなか、学校内の別室で学ぶことを選択する子どももおり、学びの場が多様化しています。今後は、データによる実態把握を進めながら、施策を展開していく必要があります。
一方、教員の働き方改革や人材確保については焦眉の課題です。国においては、令和7年6月に給特法 が改正され、教員の処遇改善が実現した一方で、業務量の管理や健康確保措置実施計画の作成・報告が市教育委員会や学校に求められることとなりました。
本市におきましても着実に取組を進めており、令和7年度には校務DXを推進するため、場所にとらわれず安全にクラウドサービスを利用できるゼロトラストセキュリティ を備えた教育情報インフラを整備しました。そして、中学校においては、令和8年度中に平日・休日を問わず、部活動の地域展開を始めます。少子化の中で、より豊かで幅広く持続可能な部活動を目指した施策ですが、教員の働き方改革にもつながります。令和7年度には「部活動地域展開チーム」を組織し、地域クラブ活動の募集や指導者の確保、生徒・保護者への説明などを進めてきました。
また、生涯学習では子どもだけでなく、あらゆる世代の学びの場として多様な講座・活動を展開してきました。人生100年時代において、変化に主体的に対応し、よりよく生きるために、生涯学習の必要性は高まっています。大人が主体的に楽しく学ぶ姿は、子どもにとって「学ぶことは楽しい」という気づきにつながります。こうした世代間の学び合いが相互に良い影響を与え、地域全体に学びの好循環を生み出します。本市では、このような学びの連鎖を大切にし、誰もが学び続けられる環境づくりを進めています。
これまでの取組における課題を踏まえ、本市教育の一層の発展を図るため、令和8年度は以下の事項に重点的に取り組んでいきます。
多様化な子どもたちに対応する未来志向の教育
1つめは、多様な子どもたちに対応する未来志向の「カラフルな教育」のさらなる充実です。
次期学習指導要領の方向性を踏まえ、「多様な子どもたちの深い学びを確かなものに」の実現を目指した取組を進めます。多くの学校では「子どもの主体性」「協働的な学び」等を研究テーマに、授業改善を推進し、研究発表会等を通して着実に成果をあげています。「あの先生の授業は信頼できる」から「あの学校の授業は信頼できる」へと、点が線、そして面になるように、伴走型の支援を行ってまいります。探究的な学習や自由進度学習 等を導入し、子どもが自ら問いを立て社会とつながる学びを推進します。また、日本語理解が不十分な外国人児童生徒等を支援する言語支援員や特別支援学級の介助員、不登校対策支援員等の拡充により、誰一人取り残さず、安心して学べる環境を整備してまいります。さらに、自校の子どもたちの実態を評価・分析し、「こんな子どもに育てたい」という目指す姿を学校に関わる全ての人が共有し、校長のリーダーシップのもと多様な子どもたちを包摂する柔軟なカリキュラム編成についての研究を進めます。
一方、デジタル活用と情報リテラシーの面では、GIGAスクール構想のセカンドステージとして、アナログとデジタル双方の良さを生かしたハイブリッドな学びを追求します。また、学校図書館と電子図書館の双方を活用した子どもたちの読書活動の充実に取り組みます。
さらに、教職員同士が所属にとらわれず互いのつながりを作りながら、共に教育課題に対応して学び続けるラーニング・コミュニティ の構築を積極的に進めます。
未来志向の教育を進めるためには、学校現場等における人材確保と時代の変化に柔軟に対応する教職員等の資質の向上が必要です。教師の専門性と主体性の強化においては、OECDティーチングコンパス(教師の羅針盤)の「どうあるか(存在)、どうつながるか(所属感)、どうなるのか(成長)」の枠組を導入し、教師のWell-beingを保障しながら、教師をカリキュラム変革の担い手として位置づけ、主体性を重視した学校運営を推進していきます。
接続期の段差を軽減する「縦の連携」の推進と、幼少期からの睡眠を切り口とした生活習慣の改善
2つめは、子どもたちの接続期の段差を軽減する「縦の連携」の推進と、幼少期からの睡眠を切り口とした生活習慣の改善です。
幼児期の教育と小学校教育については、学びの連続性を重視し、アプローチカリキュラムとスタートカリキュラム(架け橋期のカリキュラム)を活用して、幼児期の環境を通した体験的な学びを小学校につなぐ仕組みを構築します。
小・中・特別支援学校においては、9年間を見通したカリキュラムでつながる小中一貫教育を具体的に進めます。さらに、睡眠を中心に家庭と連携し、保護者の睡眠に対する意識を高め、子どもたちへの啓発や幼少期からの生活習慣の確立を進めます。 大学 と協力し、データに基づくアプローチを取り入れ生活習慣が整うことで、子どもたちの学びや日々の活動がより豊かになるよう支えていきます。
学校・地域をつなぐ「横の連携」の充実と、生涯学習社会の構築を目指した学びの支援
3つめは、学校・地域をつなぐ「横の連携」の充実と、生涯学習社会の構築を目指した学びの支援です。
本市では全ての市立学校がコミュニティ・スクールとして、地域全体で未来を担う子どもたちの成長を支えるために活動しています。設置から10年間、積み上げてきた実績と課題を踏まえ、学校教育、家庭教育、社会教育が枠組みを越えて連携し、子どもたちにより良い学びを提供できるように、地域資源を活かした教育活動を展開してまいります。部活動の地域展開では地域や大学、民間企業等との連携による持続可能な運営体制を構築していきます。これらの活動については、ホームページやインスタグラム等を活用し、積極的に情報を発信し、学校・家庭・地域総がかりの教育を推進していきます。
さらに、スポーツ施設の整備を着実に進めるとともに、生涯学習施設等を活用した、子どもの居場所づくりやボール遊びができる場所づくりにも積極的に取り組みます。社会教育やスポーツ活動といった生涯学習を通じて全ての市民が交流し、生きがいをもって学び、活動できるよう支援します。
ここまでは、今後の教育施策の方向性について申し上げましたが、引き続き各分野における主要な取組をご説明申し上げます。
施策1 子育て・子育ち
初めに、大綱2の「施策1 子育て・子育ち」です。
中学生世帯については、令和6年度から実施している学校給食費の無償化を引き続き実施し、小学生世帯の給食費についても、国の制度を活用し、無償化を継続実施してまいります。また、引き続き保育所等における第2子の保育料の無償化などに取り組み、子育てに係る経済的負担の軽減を図ります。
こども発達支援センター「あすぱる」では、各関係機関との横断的な連携と、0歳から18歳までの縦断的な相談体制により、子ども一人ひとりの状況に応じた適切な発達支援に繋げます。さらにICTを活用した療育支援により、利用者の利便性向上と効果的な支援を実践してまいります。
施策2 青少年の健全育成
続いて、大綱2の「施策2 青少年の健全育成」です。
児童会館「こらくる」や青少年センター等において、多様な体験活動や交流の場を広げ、子どもたちが安心して成長できる居場所づくりを推進してまいります。
さらに、放課後の居場所の一つとして、多様な保護者ニーズに対応するため、引き続き、民間事業者が設置・運営する私立児童クラブの誘致を進めるとともに、老朽化した公立児童くらぶの施設改修工事を実施してまいります。
また、乳幼児期の子どもたちの健やかな発達につなげるため、子どもの睡眠改善アプリの活用等により家庭や就学前施設等と連携し、睡眠を中心とした生活習慣の改善に取り組んでまいります。
少年愛護センターでは、青少年の問題行動等の未然防止と安全確保のために見守り活動に努めるほか、学校や関係機関等と連携しながら相談事業に取り組んでまいります。
施策3 幼児教育・保育
続いて、大綱2の「施策3 幼児教育・保育」です。
子どもの資質、能力の育成や学びの連続性を確保し、幼児期から児童期への円滑な接続を目指します。「架け橋期の教育連絡協議会」において作成した、5歳児版カリキュラムと小学校1年生版カリキュラムの活用を促進し、実践交流や好事例の共有などを通して、架け橋期の教育の充実を図ります。
幼児教育センターでは、保育者の実践的指導力の向上に向けて引き続きアドバイザー訪問、研修会、自主勉強会等に取り組みます。
待機児童の解消を図るため、保育需要の見込まれる地域に民間保育所の誘致を行うとともに、保育人材の確保に向けて、引き続き保育教諭等の新規採用と定着への支援を行ってまいります。
また、子育て支援の充実を図るため、病児・病後児保育における受け皿の拡大を目指すとともに、令和8年度から全国的に開始するこども誰でも通園制度の円滑な実施に取り組んでまいります。
施策4 学校教育
続いて、大綱2の「施策4 学校教育」です。
「縦の連携」については、架け橋期(5歳児~小学校1年生)から中学校卒業までの一貫したカリキュラム編成と教職員の意識改革を行い、切れ目ない教育を組織的に推進してまいります。
また、実社会の課題解決には情報技術の利活用が不可欠であることを踏まえ、子どもたちがフィルターバブル などデジタルの負の側面に適切に対応できるよう「情報活用能力の育成」に取り組みつつ、ネットリテラシーを向上させ、自らの人生や社会のために課題解決や探究ができる子どもを育てていきます。
いじめや長期欠席児童生徒への対応については、文部科学省の「COCOLOプラン」に基づき、不登校対策支援員による校内教育支援センターの充実や、教育支援センターやまびことの連携、学校風土の「見える化」等を通して、学校が、児童生徒にとって安心して学べる場となるよう、チームとして取り組んでまいります。また、大阪大学大学院連合小児発達学研究科と連携した出前授業の実施等睡眠を中心とした生活習慣の改善に引き続き取り組み、児童生徒自らが生活時間を調整できる力を育成することで、長期欠席児童生徒の未然防止につなげていきます。
中学校部活動の地域展開については、学校施設の整備、就学援助を受給している世帯への支援、地域クラブへのスタートアップ支援、ヘルメット購入助成などを実施します。多くの課題はありますが、丁寧に対応し、生徒が充実感・満足感を味わい、自分の夢を実現できる地域展開を目指します。
水泳授業については、熱中症対策や水質管理の負担軽減、施設の老朽化の課題を踏まえ、学習環境の安定化と授業運営の円滑化を図るため、荻野小、池尻小を対象に「TOYO TIRES伊丹スポーツセンター」の屋内プールを活用した実証を行います。そして、その検証結果をもとに、今後の水泳授業のあり方について検討します。
市立伊丹高等学校については、普通科新学科となったグローバル共創科における探究学習の取組をさらに充実させるとともに、その実践や成果を普通科へと広げ、学校全体として探究学習の質的向上を推進してまいります。
教職員の資質向上については、時代の変化に柔軟に対応し、多様な子どもたちの学びをデザインできる高度専門職としての力が求められています。本市が目指す「カラフルな教育」の実現に向け、教職員同士のつながりを重視した「ラーニング・コミュニティ」の構築を通し、教員の主体的な実践を重視し、やりがいを感じながら活躍できる伊丹市の教職員を育成してまいります。
施策5 教育環境
続いて、大綱2の「施策5 教育環境」です。
コミュニティ・スクールの充実については、各学校運営協議会における効果的な実践や、小中一貫教育に向けた各中学校ブロックにおける合同研修会、子どもや教員が参画した取組等の情報共有を通して学校運営協議会の質の向上を図ります。また、各学校運営協議会における協議内容や地域と連携した取組等について、地域や保護者に積極的に情報発信するなど、学校運営協議会と地域学校協働活動の一体的な推進に取り組んでまいります。
教職員の働き方改革については給特法 改正を踏まえて基本方針を改正し、令和11年度末までに時間外勤務を平均月30時間程度まで削減することを目標として取組を進めます。
また、新たな取組として、少子化が進む中での幼児教育及び学校教育のあり方について、望ましい教育環境と施設規模の観点から検討し、中長期ビジョンとしての「いたみ教育未来戦略」の策定に取り組みます。
施策6 生涯学習・スポーツ
続いて、大綱2の「施策6 生涯学習・スポーツ」です。
「伊丹市生涯学習推進基本指針」に基づき、多様な学習機会の提供や学びの成果の地域還元に取り組んでまいります。また、生涯学習施設における自習環境の充実を進めてまいります。
図書館では、地域、学校、家庭を通じた市域全体での読書活動を推進するため、「こども電子図書館」を活用した身近に本に触れられる機会の提供、市内書店との連携、市民が気軽に参加できるイベントの実施など、読書ファンを増やす取組を進めてまいります。
さらに「スポーツ施設ストック適正化計画基本方針」に基づき、施設の老朽化対策や有効活用等を進めるとともに、「伊丹スポーツセンター整備方針」に基づいて、本市のスポーツ施設の核である、「TOYO TIRES 伊丹スポーツセンター」の整備を着実に進めることで、市民の持続可能なスポーツ環境を確保してまいります。
施策7 人権
続いて、大綱2の「施策7 人権」です。
人権が尊重されるまちを実現するために、「伊丹市人権教育・啓発推進に関する基本方針」に基づき、人権教育の推進と主体的な学びの場の提供に努めてまいります。
就学前教育においては、遊びや生活を通して非認知能力を育成し、一人ひとりの個性を尊重する教育・保育を実践してまいります。
学校教育においては、教育活動全体を通じて、多様性を認め合う子どもを育成する人権教育を計画的に推進してまいります。
地域においては、市民団体との連携や人権教育指導員の派遣等の支援を行い、学校、家庭、職場等における人権意識の向上を図ってまいります。
結びに
令和8年度の伊丹市教育は、引き続き「Well-beingにつながる 未来につながる みんなでつながる 伊丹の教育」をコンセプトに、「全ての市民のWell-beingを基盤に、主体的で協働的な学びを創造する」ことを目指します。
今後も、市民や教職員、児童生徒の声を聴き、中央教育審議会における論点整理が示す方向性とOECDラーニングコンパス及びティーチングコンパスの理念を融合し、未来社会を切り拓く教育を推進してまいります。
この記事に関するお問い合わせ先
教育委員会事務局教育総務部教育政策課
〒664-8503伊丹市千僧1-1(市役所2階)
電話番号072-784-8081 ファクス072-784-8083
更新日:2026年02月25日