被害を受けた文化財への対応
阪神・淡路大震災において被害を受けた文化財への対応は,それまでの地震やあらゆる天災の場合と異り,迅速でしかも多様でした。
文化財の被害状況の報道
テレビ・新聞などで文化財の被災状況について迅速な報道がおこなわれたため,文化財関係者をはじめ一般市民の関心が盛り上がりました。その結果,次のようなレスキュー活動が活発におこなわれました。
民間ボランティアによる文化財レスキュー活動の展開
歴史研究者で組織された「歴史資料保全情報ネットワーク」(現在の「歴史資料ネットワーク」。通称「史料ネット」)など多くのボランティア団体や個人ボランティアの活動がありました。市内でも,代々医術を家業としていた南野の笹山家から多数の医学関係書や古文書・民具類が収集されたのをはじめ,火縄銃・消火ポンプ・屏風・婚礼道具などが倒壊寸前の旧家から救い出され,市立博物館に収蔵・寄託されました。
国の文化財救援事業
文化庁が後援する文化財レスキュー隊も,荒牧の容住寺から本尊の十一面観音座像(平安時代中期。のちに市指定)や古文書類を救出して市立博物館に搬入したのをはじめ,阪神間で顕著な活動実績を上げました。
被災文化財への財政的支援
国・県・市・町指定の文化財については国・県・市の補助金および財団法人阪神・淡路大震災復興基金から助成措置がなされましたが,多くを占める未指定文化財については救済措置に限度がありました。そのため,さまざまな形での民間救援組織の活動がおこなわれました。伊丹市では,市内の文化財の保存と修復のため,伊丹市文化財保存協会によって「阪神・淡路大震災被災文化財修復・保存募金」が募集され,約700万円が市に寄付されました。
震災復興と埋蔵文化財
兵庫県下の被災地の地下には、約250ヘクタールの面積にのぼる遺跡(埋蔵文化財包蔵地)が存在していると考えられました。これだけの面積を従来のペースで発掘調査すると,計算上は10年以上の期間が必要となります。そこで県教育委員会では文化庁の指導にもとづき,復興事業に迅速に対応するため,「人・資金・法」の3本の柱を立てました。とくに「人」つまり調査担当者としては,全国の政令指定都市から121名の派遣があり,平成7年度から9年度までの3ヵ年に370件以上の発掘調査が派遣職員の手によりおこなわれました(くわしくは『ひょうごの遺跡』34号参照)。
そのうち伊丹市においては同じ3ヵ年に全国からの派遣職員(一部県の職員も含む)延べ54人の派遣があり,計26件の発掘調査がおこなわれました。その後も震災復興にかかる調査数件には,県職員の応援をいただきました。
この記事に関するお問い合わせ先
都市活力部まち資源室文化振興課(文化財担当)
〒664-8503伊丹市千僧1-1(市役所4階)
電話番号072-784-8090 ファクス072-784-8048
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更新日:2021年05月25日