令和6年度(2024年度)施政方針

更新日:2024年02月21日

令和6年度(2024年度)施政方針

令和6年度施政方針説明風景

藤原保幸市長は、令和6年2月21日、令和6年第1回市議会定例会で、令和6年度の施政方針を表明しました。

施政方針は次のとおりです。

目次

「未来が輝くまちづくり」を目指して

1.「未来が輝くまちづくり」を目指して

2.国内外の情勢認識

3.課題認識と市政運営の基本方針

(1)未来を担う人づくり

(2)安全・安心のまちづくり

(3)デジタル改革

(4)ゼロカーボンシティの実現

4.令和6年度の取り組み

5.予算概要

令和6年度各会計予算および各議案の提案に際し、市政運営の基本方針並びに予算案の諸事業について、所信の一端と施策の大綱を申し上げます。

1.「未来が輝くまちづくり」を目指して

(はじめに)

1月1日に発生した令和6年能登半島地震によって、甚大な被害が生じました。亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、被災された皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。
目下のところ、被災地の早期復旧を積極的に支援するため、兵庫県と連携し、これまで30名を超える職員を現地に派遣しました。阪神・淡路大震災から29年が経過し当時を知る職員が減少する中、今回の派遣で得た経験や教訓は、今後30年以内に発生する確率が70%から80%とされる南海トラフ巨大地震などの災害対策へ最大限に役立ててまいります。
本市では、災害時も業務継続を可能とする市役所新庁舎や災害時には阪神北準圏域の拠点病院として機能を発揮する統合新病院の整備を進めてきました。併せて、市民や地域団体による自助・共助の取り組みとともに、多様な主体が連携した防災活動などにより地域防災力の向上を図るなど、ハード整備とソフト対策を一体とした災害に強い安全・安心のまちづくりを進めてきたところです。今後においても、来るべき大規模災害の被害を最小限に抑え、市民の生命や財産、暮らしが守られるよう、防災・減災の取り組みで備えていかなければなりません。
現在、我が国は、各地で頻発する大地震をはじめ、少子高齢化による人口減少の加速や、地球沸騰時代の到来と表現される気候変動問題、ロシアによるウクライナ侵攻を契機とした物価高騰など、一朝一夕には解決し得ない様々な課題に直面しています。また、経済面においても賃上げ、設備投資、株価などいずれも30年ぶりの高い水準となり、バブル崩壊直後から続いた「失われた30年」とも言われる経済の低迷から脱却を目指す歴史的な転換点を迎えています。
こうした、情勢の変化が激しく予測が困難な時代にこそ、明確なビジョンを持ってリーダーシップを発揮し、施策を推進することが重要です。第6次伊丹市総合計画に掲げる将来像「人の絆 まちの輝き 未来へつなぐ 伊丹」の実現を目指し、多面的な視点を持って迅速に取り組んでまいりますので、議員各位をはじめ市民の皆さまのお力添えを賜りますよう心よりお願い申し上げます。

(これからの市政運営の決意)

今年度12月から1月にかけて実施した市民意識調査では、本市に「非常に住みやすい」または「住みやすい」と回答された方は、合計87.9%と、これまでの調査の中で最も高い評価となりました。本市が展開する様々な施策をはじめ、豊かな自然環境、歴史、文化などの地域資源、交通の利便性、活発な市民活動など、多くのまちの魅力とその相乗効果によるものであると大変喜ばしく思っています。
一方で、「住み続けたい」と回答された方は76.9%で、前回の調査から10.7ポイントの低下が見られました。併せて本市の人口動態を見てみますと、国や県の傾向に反して微増傾向が続いていた人口が、コロナ禍の令和2年から減少に転じています。国が1月に公表した人口推計概算値によると、総人口は1億2,409万人で、前年同月から約0.53%、66万人の減少となり、人口動態速報では、令和5年1月から11月の出生数は前年同期と比べ、約5.3%減少しました。報道によれば、令和5年の出生数は70万人台半ばにとどまり、人口動態調査開始以来、過去最少を更新する見通しとされています。
日本全体で人口減少が急速に進む中、将来にわたり持続可能なまちであり続けるためには、子どもの健やかな成長を支える環境の整備や子育て世帯の経済的負担の軽減、さらには、社会全体で子どもや子育て世帯を支える気運を醸成することが必要です。伊丹の未来を見据えた魅力ある施策を充実させることで、「住みやすさ」の満足度が「住み続けたい」という評価に繋がっていくものと考えます。
令和6年度は、コロナ禍という未曾有の事態を乗り越えて、新たな飛躍に向けて歩み出す重要な年となります。加えて、第6次伊丹市総合計画前期実施計画の最終年度であり、市長任期の4年目となります。市民の皆さまにお約束したマニフェストに掲げた施策の実現とともに、子どもたちの笑顔があふれ、未来に希望を抱くことのできる「未来が輝くまちづくり」を目指して果敢に取り組んでまいる所存です。

2.国内外の情勢認識

IMF(国際通貨基金)が1月末に発表した「世界経済見通し」では、2024年の実質GDP成長率を、米中の成長上振れを背景に昨年10月の予測から0.2ポイント引き上げて3.1%とし、2025年は3.2%と予測しています。また、総合インフレ率は、2024年が5.8%、2025年には4.4%へと鈍化する見込みとなっており、安定的な成長とインフレの鈍化で、大きな景気後退を招かずにインフレが落ち着く軟着陸に向かっていると表現しています。
一方、1月に内閣府が発表した令和6年度の経済見通しでは、海外の景気や物価動向、金融資本市場の変動等の影響に注意が必要であるものの、総合経済対策による経済成長の実現が期待されるとし、令和6年度の実質GDP成長率は、1.3%程度、名目GDP成長率は3.0%程度、消費者物価は2.5%程度の上昇率になると見込まれています。
岸田首相は、先の施政方針演説で、日本経済の最大の戦略課題は、デフレ完全脱却であり、新たな成長型経済に移行していくため、持続的な賃上げや少子化対策、デジタル化など、国民が直面する課題に取り組んで行くとしました。また、国際社会は「緊迫」の度を一層高めており、日本ならではのアプローチで国際社会をリードするとしています。
特に今年は、多くの国や地域で国際社会にとって重要な選挙が行われることから、安全保障や国内経済への影響などが懸念されます。本市におきましては、引き続き国内外の社会経済情勢を十分注視しながら、市政運営に努めてまいります。

3.課題認識と市政運営の基本方針

令和6年度の市政運営にあたりましては、「未来を担う人づくり」「安全・安心のまちづくり」「デジタル改革」「ゼロカーボンシティの実現」を柱とした各施策を積極的に推進してまいります。

(1)    未来を担う人づくり

昨年12月、国は若年人口が急激に減少する2030年代までが少子化傾向を反転させるラストチャンスであるとして、今後3年間で取り組む具体的施策や財源を示した「こども未来戦略」を策定しました。
私は、伊丹のまちづくりは人づくりからと申し上げ、子育てや教育施策に力を入れて取り組んできました。全ての子どもと家庭に等しく支援が届くことを考え、国に先駆けた幼児教育の無償化や中学3年生までのこども医療費の完全無償化などを実現してきました。国の抜本的な少子化対策も待たれるところですが、本市がこれまで議会のご理解もいただきながら進めてきました行財政改革の効果を、伊丹の未来を担う子どもたちへの投資に活かしてまいります。

(中学校給食費無償化・小学校給食費負担軽減事業)

学校給食費の無償化や負担軽減については、議員各位をはじめ市民の皆さまから多くのご要望をいただいてきました。財源確保の状況から各家庭の教育費関連の負担が重くなる中学生の学校給食費を令和6年度から全額無償化し、小学校の給食費については、令和5年度に引き続き食材費の物価上昇分を公費で負担します。

(不登校対策事業)

本市ではこれまでより不登校やいじめなど多様な悩みを抱える子どもへの対応として、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、不登校対策支援員などを配置し、児童生徒の将来的な社会的自立や保護者の心理的負担軽減に努めてきました。その結果、本市の在籍児童生徒数に対する不登校児童生徒数の割合は全国に比べて低く抑えられていますが、増加の傾向にあります。そこで、令和6年度は不登校に対応する専門職員などが一体となって児童生徒を支援する重層的な体制を整備し、一人ひとりの状況に応じた支援の充実を図ります。

(保育定員の確保)

保護者の就労意向の高まりにより、保育需要の増加は続いています。若い世代の結婚や出産、仕事と育児の両立といった希望を叶えるためには、子育て家庭のニーズに応じた保育環境の整備が必要です。令和7年度に向けて民間保育施設で新たに120名分の保育定員を確保するほか、保育士の奨学金返還支援事業や保育人材就職促進事業など、民間保育事業者の保育人材の確保を支援します。

(放課後児童くらぶの充実)

全小学校に設置する放課後児童くらぶでは、変化する保護者ニーズに合わせて、開所時間や対象児童の受け入れ拡大など様々な環境整備に取り組んできました。また、今年度は、児童くらぶを利用する保護者の負担軽減を図るため、夏季休業期間中の昼食提供を開始しました。令和6年度は、稲野児童くらぶで支援室1室の増設工事のほか、南児童くらぶは、令和7年度の供用開始に向けて学校敷地内に専用棟の整備を進めます。また、利用希望者の増加に加え、多様化するニーズへ対応するため、民間の児童くらぶを誘致します。

(2)    安全・安心のまちづくり

(防災対策物資備蓄事業)

能登半島地震では、建物の火災や倒壊、大規模な土砂崩れ、また道路の寸断などにより、物資の配送やインフラの復旧などが課題となりました。この状況に鑑みて、災害発生初期に必要なインバーター発電機や段ボールベット等の物資備蓄を強化します。

(学校体育館空調設備整備事業)

今年度は、避難所として利用される神津小学校の体育館に空調機器を整備し実証実験を行うための準備を進めているところですが、猛暑下の学校教育活動における児童生徒の熱中症対策にも、早急に取り組まなければなりません。令和6年度から2カ年をかけ全ての市立小・中・高等学校の体育館に空調設備を整備します。

(地域医療体制整備)

令和8年度の開院を目指し、地域医療体制の中核となる統合新病院の整備を進めています。夏頃には東棟が完成し、外来診療の仮運用を開始したのちに高度急性期医療に対応する西棟の工事に着手します。 また、近畿中央病院の跡地活用については、伊丹市医師会をはじめ阪神圏域の民間医療機関の意向を把握した上で、公立学校共済組合と跡地の売却に向けた協議を進めます。市民の皆さまが住み慣れた地域で必要な医療を受けることのできる医療提供体制の構築を目指します。

(安全・安心見守りネットワークの充実)

犯罪抑止や事件・事故の早期解決、災害時の監視体制の強化・検証などを目的として、通学路や河川を中心とした市内各所に、1000台の「安全・安心見守りカメラ」を全国に先駆け整備し、8年が経過しました。この間、通学路の合同点検により、さらに200台を増設するとともに、子どもや徘徊の恐れがある認知症高齢者等の位置情報を保護者へ通知する「まちなかミマモルメ」の検知箇所を市バスや自動販売機などへも増設しました。今では小学生の約半数が「まちなかミマモルメ」を利用しています。令和6年度から2カ年をかけて実施する安全・安心見守りカメラの更新工事に先立って、現在、地域ごとに設置場所の再検討を行っていただいているところです。
引き続き、安全・安心のまちづくりを市政の1丁目1番地に位置付け、市民の皆さまと共に取り組んでまいります。

(3)    デジタル改革

少子高齢化の加速による生産年齢人口の減少は、今後のさらなる労働力不足を招き、社会機能を維持していくことが喫緊の課題となることから、あらゆる分野でデジタル・トランスフォーメーションによる業務の効率化や生産性の向上が求められています。
本市では新庁舎の移転を契機に「行かなくていい」「待たなくていい」「書かなくていい」をコンセプトとしたスマート申請・スマート窓口の導入など、行政サービスのデジタル化に取り組み、業務の効率化、最適化を進めてきました。実際に窓口を利用された方に行った調査では、約9割の方が、「手続きの時間が短くなったと感じた」と回答されています。また、日本経済新聞社が、国の令和4年度「自治体DX・情報化推進概要」をもとに、推進体制や行政サービスの向上などを評価したDX偏差値では、本市が全国9位にランクインしました。
誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を進める中で、教育分野においても子どもたちの学びの環境がより豊かなものになるよう、児童書を中心とした電子書籍約1,400冊が閲覧できる子ども電子図書館を導入します。また、児童生徒のタブレット端末からデジタルドリル等をはじめ、複数の学習コンテンツに1度のログインでアクセスできる環境を整備します。
デジタル化は、より良い未来を実現するために必要不可欠な手段と考え、行政サービスだけでなく暮らしの利便性向上を目指したデジタル改革を一層推進してまいります。

(4)    ゼロカーボンシティの実現

気候変動問題は、人類が直面する最大の課題と言われるなど、深刻さを増しています。昨年、ドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議「COP28」では、COP史上初めて「化石燃料からの脱却」に向けたロードマップが承認されました。
今ある地球環境を守り次世代に引き継ぐため、本市においては、ゼロカーボンシティ宣言を新たな起点とし、「創エネ蓄エネの普及拡大」、「移動手段の脱炭素化」、「使用電気の脱炭素化」、「環境価値の創造」、「省エネの普及拡大」など5つの柱に基づく取り組みを進めています。
令和6年度は、豊中市伊丹市クリーンランドで発電した非化石電力を市内の学校施設などへ導入し、家庭や学校のごみから発電した電力が学校へ供給されるという、資源循環を学ぶ機会に繋げます。また、本市と姉妹都市で森林資源を有する飯南町や海洋資源を有する阪南市などとの連携で、市民参画による環境保全活動を引き続き行い、同事業で創出したカーボンクレジットを活用するなど、地域資源を補完し支え合う取り組みで地域活力を高めます。
2050年カーボンニュートラルの実現には、地域ぐるみでの取り組みが不可欠です。脱炭素に向けた情報の発信や事業者に向けた脱炭素経営への支援など、脱炭素型のライフスタイルとビジネススタイルの普及を目指してまいります。

4.令和6年度の取り組み

令和6年度の諸事業について、第6次総合計画の大綱に沿って、ご説明いたします。

大綱1 安全・安心

大綱の1つ目、「安全・安心」です。
阪神・淡路大震災から30年の節目に、災害の教訓を風化させることなく次世代に伝えていくため、啓発イベントを実施します。
令和6年度末の市庁舎グランドオープンを目指し、旧庁舎跡地に災害時は防災広場となる、市民広場を整備します。
雨水整備方針に基づき、荒牧地区の雨水管渠布設工事に向けた実施設計を行います。また、中野東雨水ポンプ場の電気設備更新工事及び渕雨水ポンプ場電動ポンプの分解整備工事を実施します。
消防車両整備計画に基づき、東消防署の救急車および化学車を更新します。

大綱2 育ち・学び・共生社会

次に、大綱の2つ目、「育ち・学び・共生社会」です。
学校教育の質を高め魅力ある授業が展開されるよう、小学校教職員に対して指導助言を行う「授業アドバイザー」を学校に派遣します。
小学生の夏季休業期間中の「居場所づくり」「体力づくり」の場として、市内4カ所の公共プールと、新たに3カ所の民間プールで無料開放を実施します。
休日の中学校部活動の地域移行実証事業において、現在の運動部8部活動に加え、新たに文化部についても1校で実施します。
中学校給食の食材に農薬や化学肥料を使用しない有機栽培による米や野菜を取り入れます。
安全で快適な教育環境を提供するため、大規模改修工事や空調設備改修工事などを実施します。また、太陽光発電設備設置のための実施設計を行います。

大綱3 健康・医療・福祉

次に、大綱の3つ目、「健康・医療・福祉」です。
出産後の体調不良や育児不安に対し必要に応じて産後ケア事業を利用することができるよう、施設数やサービスの利用時間を拡充します。
聴覚障害を早期発見し、早期療育に繋ぐため、市民税非課税世帯を対象に医療機関等で受診した新生児聴覚検査の受診費用を助成します。
高齢者に対するフレイル予防の啓発を効果的に進めるため、歯科衛生士が、地域に出向いて口腔機能低下予防に関する健康教育を実施します。
いつまでも住み慣れた地域で生活できるよう、地域密着型サービスの介護施設整備を推進します。
障がいのある方が地域で安心して生活できるよう、地域生活支援拠点の強化として、夜間休日も対応可能な緊急時の相談や受け入れ等の体制を整備します。
令和6年12月に国民健康保険の保険証がマイナンバーカードと一体化されることに伴い、資格確認書などを被保険者へ交付するためのシステム改修を実施します。

大綱4 市民力・にぎわい・活力

次に、大綱の4つ目、「市民力・にぎわい・活力」です。
令和7年度供用開始予定の地域拠点施設「(仮称)伊丹交流センター」の建築工事を実施します。また、地域コミュニティの基盤を強化し、参画と協働による地域づくりを進めるため、南小学校地区および瑞穂小学校地区の地域ビジョンの策定を支援します。
2025年大阪・関西万博の開催に合わせ、「ひょうごフィールドパビリオン」の取り組みを市立伊丹ミュージアムなどで展開し、「清酒発祥の地 伊丹」や「日本遺産」などのPRを実施します。
市内商業の振興発展を図るため、市内商店街振興組合等に対し、商店街が実施する活性化イベント等の実施に要する費用を補助します。
若年者の市内定住ならびに本市産業を担う人材確保を促進するため、奨学金を返済しながら市内企業で働く市内在住の若年就労者に対し、奨学金の返済にかかる費用を補助します。
地域経済の活性化や雇用の創出を図ることを目的として、市内で創業する事業者に対し、賃借料などを補助します。

大綱5 環境・都市基盤

次に、大綱の5つ目、「環境・都市基盤」です。
脱炭素社会に向けた取り組みとして、市庁舎の一般駐車場に電気自動車の急速充電器1台を設置するとともに、民間活力による市内の公共施設への普通充電器の導入可能性について、調査を実施します。
また、脱炭素型ライフスタイルへの意識変容・行動変容を促進するため、省エネ、再エネ等をテーマにした体験型環境啓発イベントなどを実施します。
市内を走る公共交通の利用促進と次世代利用者の増加を図るため、市内小学生を対象として、夏季休業期間中に伊丹市営バス全線、阪急バス、阪神バスの伊丹市域を走行する路線が乗り放題となる企画乗車券を販売します。
昆陽池公園の多目的広場トイレを、自然エネルギーにより災害時にも使用が可能で、景観や環境にも配慮した誰もが安心して快適に使える「人と環境にやさしいトイレ」に更新します。
市営住宅等整備計画に基づき、建物の長寿命化を図るため荻野団地2棟の耐震補強工事などを実施します。また、高齢者の住宅確保に向け、玉田団地において住戸タイプの小型化工事を実施します。
一般財団法人 地方自治研究機構との共同事業として、地中レーダーによる道路の空洞を調査するとともに、危険個所の早期検出について研究します。
安全・安心な通行空間を確保するため、街路樹管理計画に基づき、市道森本8030号線などの歩道再整備工事を実施するとともに、令和5年度に引き続き、市道中央天津線の点字ブロック設置工事を実施します。
橋梁等の安全性及び信頼性を確保するため、道路インフラ長寿命化修繕計画に基づき、有岡大橋等の補修・耐震工事を実施します。

大綱6 参画と協働・行政経営

最後に、大綱の6つ目、「参画と協働・行政経営」です。
令和7年度末までに全ての地方公共団体が自治体情報システムの標準化・共通化を目指すため、住民基本台帳システムなど基幹系システムについて、現行システムと標準システムとの業務分析を実施します。
内部事務の効率化を図るため、文書を作成する際の素案作成や要約などの汎用的な事務に活用する、データ連携型生成AIを導入します。
財務会計事務の効率化・省力化を図るため、電子決裁機能を搭載した財務会計システムに更新します。
伊丹市政を担う意欲ある優秀な人材を確保するため、職員採用情報のSNSによる発信やインターンシップを実施します。

5.予算概要

次に、令和6年度歳入歳出予算案の概要についてご説明いたします。

令和6年度当初予算の編成に当たっては、足元の物価高や賃上げ、金利の上昇に対応しつつ、能登半島地震の教訓を踏まえ、避難所となる学校体育館の空調設備やインフラの老朽化対策をはじめとする防災・減災機能を強化するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けて、公共施設への太陽光発電設備の整備や非化石電力の導入などを進めます。更に健全な財政基盤を維持しながら阪神間で初めてとなる中学校給食の完全無償化や小学校給食の食材費上昇分を公費負担するなど、市民の皆さまの生命と暮らしを守り、未来を担う子どもたちの成長を支える「未来への投資」に重点的に予算を配分いたしました。
その結果、一般会計は総額870億円で、前年度当初予算に比べ42億円、率にして5.1%の増加となっております。
主な歳入歳出予算の状況について、概算で申し上げますと、歳入の根幹をなす市税収入は、企業業績の伸びなどによる法人市民税の増収や評価替え等の影響により固定資産税・都市計画税の増収などが見込まれる一方、定額減税等による個人市民税の減収が見込まれることから、市税全体では前年度に比べ7千万円、率にして0.2%減の321億9千万円となりました。
なお、定額減税による減収分、約9億4千万円については地方の財政運営に支障が生じないよう、地方特例交付金として全額国費で補てんされておりますので、国の定額減税がなければ、市税収入は増加傾向を維持できている状況でございます。
市債は、好調な国税収入を背景として臨時財政対策債が減少する一方で、新庁舎整備事業の外構工事や学校体育館の空調設備整備工事を実施することなどにより普通建設事業債が増加することから、市債全体では前年度に比べ10億9千万円、率にして27.2%増の51億円となりました。
歳出につきましては、扶助費では児童手当が拡充されることに加え、物価高や賃金上昇などを踏まえた診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の同時改定に伴い社会保障関係経費が増加することなどから、前年度に比べ19億9千万円、率にして7.2%増の294億4千万円となりました。
人件費は、人事院勧告による影響や、会計年度任用職員にかかる勤勉手当の創設などから、前年度に比べ13億3千万円、率にして9.6%増の153億円となりました。
公債費は、前年度に引き続き公債管理基金を活用した市債残高の縮減として、22億円の繰上償還を実施することなどから、前年度に比べ2億7千万円、率にして3.0%増の92億9千万円となりました。
特別会計では、6会計総額で394億5千万円となり、前年度に比べ9億6千万円、率にして2.5%の増となりました。これは、主に介護保険事業において保険給付費が増加したことによるものです。
また、病院事業会計をはじめとする6つの公営企業会計の総額は712億9千万円となり、前年度に比べ1億7千万円、率にして0.2%の増となりました。
次に、主な財政指標について申し上げますと、実質公債費比率は5.2%となり、前年度より0.1ポイントの増となりました。また、将来負担比率は、公債費充当可能財源等が将来負担額を上回るため、発生いたしません。
なお、新庁舎や統合新病院整備事業の進捗に伴い、今後、実質公債費比率及び将来負担比率は増加することを見込んでおりますが、いずれも早期健全化基準を下回る見込みです。
市の貯金である財政調整基金は、中学校給食費の完全無償化や豊中市伊丹市クリーンランド負担金の年度間調整のために4億円を取り崩すことなどから、残高は79億9千万円となりました。
今後とも歳入・歳出両面における改革を進め、将来を見据えた持続可能な行財政運営の実現に努めてまいります。
以上、令和6年度の市政運営の基本方針並びに予算案の諸事業について申し上げました。議員各位をはじめ、市民の皆様におかれましては、市政運営に、より一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。