令和8年度広島県・広島県広島市

更新日:2026年07月29日

1.視察出張委員
委員長   岸田真佐人      副委員長   篠原   光宏
委    員   泊      照彦      委        員   戸田   龍起
   〃        保田   憲司           〃         鈴木久美子
   〃        松浦   晴美           〃         大江ひろと
2.視 察 先 広島県・広島県広島市
3.視 察 日 令和8年7月14日(火曜日)~15日(水曜日)
4.調査事項 下記報告のとおり

◎7月14日 13:15~ 広島県

<特別支援教育の考え方を生かした個別最適な学び推進プロジェクトの取組について>

   初めに、岸田委員長よりお礼のあいさつがなされた後、広島県議会事務局次長から歓迎のあいさつを受けた。続いて、教育委員会事務局学びの変革推進部義務教育指導課義務教育個別最適な学び推進担当から説明を受け、質疑応答がなされた。最後に、篠原副委員長よりお礼のあいさつがなされた後、議場見学を実施した。

<説明の概要>
1.特別支援教育の考え方を生かした個別最適な学び推進プロジェクト
(以下、「特プロ」という。)
1) 趣旨
    学校現場では、誰一人取り残されない教育や多様性の包摂が急務となっており、多様性の包摂を進める上で、広島県の特別支援教育の考え方は極めて重要である。中でも、特別支援教育の特徴でもある子どもたち一人ひとりの特性やニーズを丁寧に見極めるアセスメントが全ての指導の出発点と考えている。このアセスメントを基に困り感を抱える子どもに寄り添い、個に応じたきめ細やかな支援を行うことを狙いとしている。
また、子どもへのアプローチは障がいの有無にかかわらず、また、特別支援学級だけでなく、全ての学級における授業改善や個別最適な学びの実現に生かすことができると考えている。
   特プロの大きな特徴は、広島県教育委員会が、「特別支援教育の考え方を生かした個別最適な学び推進プロジェクト校(以下、「プロジェクト校」という。)」に寄り添う伴走支援を行う点にある。指導主事が定期的に学校を訪問し、具体的なアセスメントの方法や授業づくりについて指導・助言を行ってきた。また、さらに地域で核となる教員の研修を強化して、プロジェクト校で得られた成果やノウハウを県内全域に普及させていくことにある。
2) 事業内容
    毎年、小・中学校等8校程度を1年間プロジェクト校に指定し、広島県教育委員会による、障がい特性に応じた指導、特別支援学級における指導や通級による指導の進め方等に係る指導・助言・研修等を実施することにより、プロジェクト校における特別支援教育の考え方を生かした授業改善を進め、広島県教育委員会が、その成果を普及している。
   プロジェクト校として、令和5年度から令和7年度までの3年間に計29校で実施した。
3) 実施方法(プロジェクト校に対する伴走型支援)
(1) 市町教育委員会(広島市を除く。)からプロジェクト校の指定を希望する特別支援学級のある小・中学校等を公募し、8校程度を指定する。指定期間は、原則として1年間とする。
(2) 全ての教職員が特別支援教育の目的や意義について理解を深め、その考え方を生かした指導ができるよう、広島県教育委員会の指導主事等が計画的に学校訪問を行い、一人ひとりの教育的ニーズに応じた指導・支援に係る研修や通常の学級を含む全ての学級への特別支援教育の考え方を生かした授業改善に向けた具体的な指導・助言を実施する。
(3) 学校や域内における特別支援教育の中核的な役割を担う人材の育成を図るため、特別支援教育コーディネーター等を対象に研修等を実施する。
(4) 指導主事が1校につき月2回程度、年間20回程度、基本的に朝から放課後まで訪問することが多い。教材研究や研究授業に向けた指導案検討を行い、校内研修の要望があれば講話するなど、基本的には授業づくりから関わっている。
    一般的に指導主事が学校訪問する場合、授業を見た後に指導・助言を行うことが多いが、特プロでは月2回の訪問を有効に使い、1回目は教材づくりや学習指導要領を基に先生とポイントを考えて授業内容を一緒に作り上げ、2回目は授業を見て、次につなげるということを繰り返していた。
4) 経緯
    令和4年度に特別支援学級を支援するプロジェクトを実施したところ、特別支援学級だけではなく、学校全体の授業や、先生の子どもたちへの関わり方が良くなるという大きな手応えを得た。この成果をさらに広げて、通常の学級を含む学校全体で全ての子どもが大切にされる学びの場を作りたいとの思いから、全ての児童・生徒の主体的な学びの実現に向け、特別支援学級の指導の充実を図るとともに、通常学級を含む学校全体で、特別支援教育の考え方を生かした授業改善に取り組むことにより学校教育の質の向上を図ることを目的に、特プロを立ち上げた。
   具体的には、学校現場で困難さを抱える児童・生徒への支援が合致していない状況があったときに、子どもは、「分からない」、「できない」、「もうやりたくない」といった感情が態度として現れていることもあった。分からないという経験を繰り返すことで、理解しようとしなくなる、出来ない経験を繰り返すことで、頑張ろうとしなくなる、さらに、やってもらうという経験を繰り返すことで、自分でやろうとしなくなる、意欲を削いでしまうという学習性無力感が生まれていた。子どもに学習性無力感がある場合、教員からも、「どうしていいのか分からない」、「何から手をつけたらいいのか分からない」といった声があった。
   障がいや困難さといった、つまずいている部分が放置されると、同じ失敗を繰り返す状況に陥り、それ故、自己評価が低下し、不登校、問題行動、ひきこもり等の二次障がいにつながると言われている。
   また、自分は頑張っているが、周りからは頑張っていないと言われてしまう、分かってもらえない、理解されないとなれば、分かってもらえない悔しさから、自己評価が下がり、意欲が下がり、二次障がいにつながる。これらが不登校や問題行動につながっているのかもしれないとも感じたことから、学校全体で特プロを実践することにした。
2.特別支援教育の考え方を生かすとは(授業改善の進め方)
   特別支援教育とは、障がいのある幼児・児童・生徒の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立ち、幼児・児童・生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握し、その持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行うものである。
   広島県では個別最適な学びに取り組んできた。取組として、多様な選択肢と自己決定を重視し、学習環境やニーズに応じた教具の開発や場について工夫している。また、一人に対する支援が、実は他の子どもにも有効な支援であることが多く、結果として誰一人取り残さない視点につながっていると考えている。
   特プロでは、実態把握からスタートすることと、強みを伸ばして生かすという2点について授業改善に生かすことを考えてもらい、以下のとおり実践した。
1)Assessment(実態把握):障害の状態、発達・経験の程度、成育歴等
   教員が見取りを丁寧にすることで、問題行動等の要因を考え、どうすれば出来るのか、指導・支援を考えられるようになる。
2)Plan(計画):目標の設定、指導計画の立案、学習指導案の作成
3)Do(実施):学習活動の工夫、個への手立ての工夫、教材・教具の工夫
4)Check(評価):研究協議の実施、学習状況の評価、指導に関する評価等
5)Action(改善):課題の分析、実態把握の再検討、改善計画の立案等
3.「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実に向けてのポイント
1)深い教材研究
・単元(題材)で育成する資質・能力を明確にしているか
・児童・生徒の深い学びを促し、教科の本質に迫る「単元を貫く問い」などを設定しているか
・児童・生徒の思考の流れを想定した単元(題材)を構成しているか
・多様な個性・特性を有する児童・生徒が存在することを前提に、授業で起こり得るつまずきとそれに対する支援を想定しているか
2)個の見取り
 ・児童・生徒一人ひとりの興味・関心や能力・特性等を把握しているか
 ・授業において、展開や振り返りの場面で、児童・生徒一人ひとりの学習進度や学習到達度、つまずき等を把握しているか(形成的評価)
・単元(題材)の終わりに、児童・生徒一人ひとりが単元(題材)で育成する資質・能力を身につけることができたか把握しているか(総括的評価)
3)個への支援
 ・児童・生徒が興味・関心や能力・特性等に応じて自ら教材・学習方法・ペース等を選択できる学習環境を整えているか
 ・個別最適な学びの中で孤立した学びに陥らないよう、また、協働的な学びの中で個が埋没しないよう、児童・生徒一人ひとりに適切な指導や関わりを行っているか
4.プロジェクト校の実践例(ポジティブな行動支援(PBS)を取り入れた授業改善)
   授業時間45分の中で課題に取り組む時間がある一方、授業中に立ち歩く時間があった場合、教員は、児童が授業中に立ち歩くことを何とかしたいと思い、そのために何ができるのかを考えていくことが、PBSの考え方では、望ましい行動を増やせば、おのずと授業中に立ち歩くという問題行動が減っていく。問題行動を減らすのではなく、望ましい行動を増やす。結果は同じであるが、着目する視点を変えることがPBSである。
    PBSの取組では、行動の原理を理解して授業に取り組んでもらっている。1つの「行動」を行うためには、「行動」の前に「きっかけ」がある。「行動」の前後をしっかり考えている。例えば、望ましい「行動」を、着席して課題に取り組むことと設定した場合、その「行動」の前に、選択肢と自己決定ができるような、望ましい「行動」を引き出す工夫を行い、その「行動」の後には肯定的な評価を返していく。一人の児童が望ましい「行動」を取るようにするには何をすればよいのかが分かるように支援し、実際に出来たときには、またやりたいと思えるような「行動」を引き出せるようにすることが大切である。肯定的な評価を返すことで、「わかる・できる・またやりたい」が生まれることが大切である。
1)PBSで期待できる効果
・望ましい行動が強化されるので、効果が持続する
・教師との関係が良好になる
・積極的になったり、主体的になったりする
・周りの望ましい行動を評価するようになり、結果、友達との関係も良好となる
5.特プロの成果
   教員からは、「この子が、なぜ困っているのか」ということを考えるようになったという声を一番多く聞く。
   また、児童・生徒からは、自分にあった課題を提供してもらえるため、学びが楽しくなったという声も聞く。

<質疑応答>
(問)特別支援教育の考え方を生かした取組を実施されるに当たり、例えば広島県教育委員会の教育ビジョンに係る考え方を示されたなど、どのようなことが行われたのか。
(答)広島県には政令市の広島市を除き22市町あるが、広島県教育委員会の義務教育指導課が事業を進める場合、例年12月に、次年度の指導方法や重点的に取り組む内容について説明を行い、方針を示す。その方針に対して、考え方が一致した市町が手を挙げて、次年度の4月から一緒に取組を進めている。
(問)文部科学省が、広島県で行われたこれまでの取組を全国に広げるといったことは考えられるのか。
(答)文部科学省は、全国の指導主事が参加する会議で各県の好事例を広げる取組をしている。併せて、研究開発学校として指定された学校では、教育課程によらない指導が可能となり、次期学習指導要領に研究開発学校で開発された取組を反映させる取組も行われている。
(問)PBSに関して、広島県教育委員会の指導主事が1年間支援した後の評価方法は。
(答)各学校からPBSに関する評価は聞いてはいないが、例えば、すごく子どもたちが落ち着いてきて、行事にも多くの子どもが参加できるようになったとの声を伺う。また、各学校は不登校が減っているといった実感もあるようだが、PBSによる効果なのかどうかの検証をしていない。
(問)プロジェクト校の指定期間は1年とのことだが、指定期間を延長することは可能なのか。
(答)指定期間終了後、広島県教育委員会からの支援がなくなると継続できない可能性があるため、指定期間の翌年には年に2回、フォローアップとして学校訪問し、そのときの取組内容については、学校からの要望事項を基に決めている。また、特プロの取組を広げるために、プロジェクト校が翌年以降に公開授業を実施する場合、5回程度、学校訪問し支援している。最終目標は学校が自走して取組を進めていくことであるため、指定期間終了後も、学校が自走して取組を続けられるスキームになっている。
(問)プロジェクト校の指定後は自走することが目的とのことだが、実際に自走して継続している学校はあるのか。
(答)ある。
(問)プロジェクト校として指定された学校に特徴が出てくる中で、指定されていない学校との特別支援教育の差が生じることはないか。
(答)広島県教育委員会からの支援が約2年であるため全てを把握できてはいないが、差が出てきたとは言え、大切にしたい考え方は、人事異動等によりプロジェクト校の指定で頑張っていた教員が他に移って、新しい学校では取り入れられていなかったとしても、異動した教員が特プロの考え方を持って授業していることを、市町教育委員会を通じて伺うことがある。実際には差が出ているのかもしれないが、少しずつ横展開しており、成果はあると考える。
(問)学校訪問する指導主事は、どのように学校への助言やアドバイスの方法を身につけるのか。
(答)指導主事は、教材研究に対する技能とコミュニケーション能力を身につける必要がある。
   初めに、指導主事の技能がなければ教員も育成できないため、広島県の特徴的な取組として、以前は、広島県及び教育事務所の全ての指導主事が週に1度、1日研修をしていた。研修では、毎回決められたテーマのもと、専門のプロパーからの講義を受けたり、参加者全員で協議したりしていた。また、毎年4月に市町も含めた県内全ての指導主事が参加する指導主事協議会で、今年の方針について共通認識を持ち、各教科の指導主事会議を年3回程度行っている。指導主事の力量発揮に向けて様々な取組を行っている。併せて、プロジェクト校訪問前の事前準備では、広島県教育委員会に配属されている各教科の専門の指導主事にレクチャーを受けている。
   次に、伴走支援では対話を重視して取り組んでいる。もう来て欲しくないと思われてしまうと、1年間の伴走支援の効果が薄まるという危機感を常に持っている。信頼関係がなければ、1年間の指導・支援が届かなくなる。そのため、事前に、学校のニーズ、校長の思い、先生が困っていることが何かということと、広島県教育委員会の求める内容のすり合わせを行う等、学校の管理職と対話した上で、支援方法を決定し、また、授業終了後も、担当する教員だけでなく校長にも説明している。
(問)初めからポジティブな行動を肯定する方法を体系化して、研修等で教員に紹介することはしていないのか。
(答)PBSに限らず、様々な場面で様々な方法を紹介していることに加えて、プロジェクト校には講師紹介などもしていた。各学校が児童・生徒につけたい力を決めているため、学校のニーズに応じて支援していきたい。広島県教育委員会からは様々な方法を案内し、各学校が選択した内容について支援することにしている。
(問)プロジェクト校に指定されたとしても、担当教員によって授業に差が生じてくると考えるが、特プロの課題やその課題に向けた取組内容は。
(答)各教員の経験値が異なるため、そのようなことは感じるが、組織的に研究体制を組んでいる学校が非常に多い。
   特プロは、特別支援教育コーディネーターが取りまとめて研究主任と一緒に取り組むほうが、効果が高いと伝えているため、特別支援教育コーディネーターが核となり、授業中に気になる子どもを見取り、特定の子どものアセスメントをすることから始めている。この段階で、学校によっては、全教職員が関わる場合や、学年団や教科部会といった枠組みを使いながら1人に任せない取組が進んでおり、指導主事も、その中に入っていた。
(問)学力の高い子どもへの対応方法は。
(答)各授業では到達基準が決まっているため、紹介した学校では、学力の高い子どもへの個別カリキュラムはなかった。ただ、その子どもの学びも深まるようにしたいということで、高校教師とつないで高校の問題を解いてみるといった連携はしていた。また現在、次期学習指導要領の決定に向けて、国では、特異な才能のある児童・生徒に係る議論が行われているため注視していきたい。

<視察の様子> 

広島県議会視察の様子1

広島県議会視察の様子2

 

◎7月15日 10:00~ 広島県広島市

<平和教育の取組について>

   初めに、広島市議会事務局市政調査担当部長より歓迎のあいさつを受けた後、岸田委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、広島市教育委員会学校教育部指導第一課の担当者から説明を受け、質疑応答がなされた。最後に、篠原副委員長よりお礼のあいさつがなされた後、議場見学を実施した。

<説明の概要>
1.広島市における平和教育の取組
1) 平和教育の目標と取組
    広島市は、人類史上初の被爆都市であり、こんな思いを他の誰にもさせてはならないという、被爆者の平和への願いを原点に、世界恒久平和の実現に向けた取組を進めており、教育委員会では、広島の被爆体験を原点として、生命の尊さと、一人ひとりの人間の尊厳を理解させ、国際平和文化都市の一員として、世界恒久平和の実現に貢献する意欲や態度を育成するという平和教育の目標を掲げ、平和教育プログラムを策定している。当該プログラムに基づき、被爆の実相を継承することを目的とした「継承」と、被爆の実相や平和についての自らの考えを発信することを目的とした「発信」を主軸とした平和教育の取組を進めている。
2) 平和教育プログラム
    広島市では、学校における平和教育の取組を充実させるため、児童・生徒の発達段階に即した目標や内容を体系化した学習プログラムによる平和学習を推進している。
策定した背景については、平成22年度に行った平和に関する意識実態調査の結果、原爆投下の年や日時の正答率が低かったということが挙げられる。具体的には、小学校で正答率が33%、中学校で56%、高等学校で66%であった。また、それまでの平和教育に対して、子どもたちは、良い・大切であるというイメージよりも、受け身で一面的というイメージを強く持っていることが分かった。さらに、それぞれの校種間で十分な連携が図れていないため、平和教育の具体的な指導方法や内容が必ずしも体系化されていないなどの実態が見えた。そのような状況で、小学校から高等学校までの各発達段階に即した目標・内容を設定すること、市民が平和への願いや希望を持ち生活を営む未来志向の学習内容にすること、児童・生徒の興味関心を生かした自主的・自発的な学習を重視すること、国際社会の諸問題を探求する活動を重視することの4つを当該プログラムの基本方針として掲げ、平成25年度に広島市立の小・中・高等学校一貫の平和教育プログラムを策定した。
   当該プログラムの概要としては、小学校から高等学校までの12年間を、小学校の第1学年から第3学年、小学校の第4学年から第6学年、中学校、高等学校の4つに区切り、目標や内容を設定している。当該プログラムが進むにつれて、自分のことから他者、身近な集団、社会、世界と視点が広がり、発展するように考えている。小学校低学年では、被爆の実相に触れ、生命の尊さや人間愛に気付くこと、小学校高学年では、被爆の実相や復興の過程を理解すること、中学校では、世界平和に関わる問題について考察すること、高等学校では、平和で持続可能な社会の実現について展望することを目標としている。
   当該プログラムの主な教材として、ひろしま平和ノートを作成し、市立学校の全児童・生徒に副教材として配付している。ひろしま平和ノートは、各学年3時間で構成し、学習1が「気づく」、学習2が「考える」、学習3が「発信する」と設定している。令和5年度に改訂し、被爆のエピソードや被爆を素材とした学習、核兵器を巡る世界の現状から自分でできることを考える学習、平和への思いを英語で表現する学習などを盛り込んでいる。
   具体的に、小学校4年生の学習では、「気づく」、「考える」、「発信する」の3時間構成だが、広島の被爆と伝えたいことをテーマとしている。ひろしま平和ノートの2ページから5ページまでが学習1の「気づく」時間であり、原子爆弾が投下された当時の様子や被害について理解する学習を行う。熱線や爆風、放射線の3つの観点から、原子爆弾の影響について調べることを通して、原子爆弾による被害について理解を深めていく。次に6ページから8ページまでが学習2の「考える」時間となり、被爆された河本明子さんの話を題材として、戦争や原子爆弾によって自由を奪われた人々の思いについて考え、最後に学習3の「発信する」時間が9ページから10ページまでとなるが、牛田中学校PC放送部の、河本明子さんの被爆ピアノを伝える取組から、自分たちが残したいことや伝えたいことを話し合い、学級の友達に発表する。
 3) 「継承」を柱とした取組
(1)被爆体験を聴く会
     広島市立幼稚園・小学校・中学校・高等学校において、地域の被爆体験者等を講師として、被爆体験を聴く会を開催している。被爆者の高齢化に伴い、被爆体験を話す方が非常に少なくなっており、市民局平和推進課において、被爆体験伝承者を養成している。広島平和文化センターでは、学校等へ当該伝承者を講師として派遣しており、関係課と連携しながら被爆体験を聴く会を開催している。
 (2)平和を考える集い
     広島市立小・中学校では、平和記念日である8月6日に、平和を考える集いを開催し、平和記念日の意義について指導するとともに、学校や地域の特色を生かした創意工夫のある平和学習を行っている。例えば、平和に関する本の読み聞かせや、地域と連携し、慰霊祭等の日は関連行事を行っており、各校によって内容は様々である。
(3)平和教育アーカイブス
    各学校園における児童・生徒の学習教材や、教職員・保護者の研修用資料として活用することができるよう、平成20年度より、毎年、被爆体験者2名の証言を映像記録としてデータ化しており、現在、36本になる。平和教育アーカイブスDVD一覧には、対象者や収録時間が書かれており、各校が研修に使用している。
4) 「発信」を柱とした取組
(1)こどもピースサミット
    広島市内の小学6年生を対象に、平和についての作文を毎年募集し、選考された20名の児童が意見発表を行い、平和記念式典で「平和への誓い」を読み上げる代表児童2名を決定している。文面は、選考された20名の児童が検討会議で意見を出し合い作成し、8月6日の平和記念式典では、代表児童2名が「平和への誓い」を世界に向けて発信する。現在、8月6日に向けて、代表児童2名が発表の練習をしているところであり、今年度は、141校から1万251名の応募があった。
(2)こどもピースボランティア
    昨年度から開始した取組であるが、平和の意見発表会に参加した20名の児童のうち希望者が、広島を訪れた観光客や修学旅行生等に対し、被爆の実相や広島市の平和教育の取組について説明している。昨年度は、20名のうち10名が参加し、ガイドボランティアから心構えなどを聞いたり、グループに分かれて説明内容や伝え方を練習したりするなど、3回研修を実施した後、実際に街頭ボランティアとして活動した。
(3)全国こども平和サミット・広島こども平和サミット
    参加を希望した広島市内及び市外の児童・生徒が、8月6日に言葉や音楽、演劇などで平和への思いを発信し合う。令和7年8月6日開催の全国こども平和サミットでは、北海道、千葉県、沖縄県などから、8団体の参加があり、各学校における平和に関する活動の報告や、平和への願いを朗読で発表した。令和7年11月16日開催の広島こども平和サミットでは、広島市内の学校から4団体の参加があり、被爆ピアノの演奏や学校での取組について発表した。
(4)「平和への誓い」アクションプログラム
    広島市立幼稚園、小・中学校、広島中等教育学校、広島特別支援学校を対象に参加者を募り、希望した幼稚園、学校が、平和交流会やテレビ会議等を開催し、平和へのメッセージを発信している。昨年度は、市内小・中学校の5校がこの活動に取り組み、大阪の小学生や東京の中学生などと交流し、被爆の実相や平和への願いについて伝え合う活動を行った。
(5)中学生による「伝えるHIROSHIMAプロジェクト」
    広島市内の中学校を対象に参加者を募り、各学校での平和学習や教育委員会が開催する研修会を通して、平和の思いを込めたメッセージを英語で作成し、平和記念式典に参列する各国駐日大使や海外の一般参列者に発信している。令和8年度は、市立中学校63校と私立中学校4校の合計67校の3,775名の中から、各校1名、合計67名の生徒がメッセンジャーとして選ばれている。メッセンジャーは、被爆体験伝承者の講話を聞くことや平和公園を訪れている海外の方に英語でインタビューを行うなど、どのようにすれば自分たちの思いや考えが海外の方に英語で伝えられるのかを学び、一人ひとりが平和への願いの詰まった英語のメッセージを作成し、8月6日に発信している。また、被爆から80年経過した昨年度は、より多様なメッセージの発信・意見交流の場面を拡充するため、当該事業に参加した生徒の中から選ばれた5名が、8月8日と8月9日に、長崎市で開催された青少年ピースフォーラムに参加し、全国から集まった中高生と平和について意見を交わした。今年度も、他都市への生徒派遣を通して、多様な考えに触れる機会を得る予定にしている。昨年度は、生徒がメッセージを伝えた大使が、長崎にも来られており、再会を喜んでいた。当該生徒は、平和を通して縁が繋がっていくことを痛感したという感想を持っていた。
(6)高等学校の特色ある取組
    各高等学校の特色を生かし、平和教育に関する様々な取組を実施している。
市立高等学校が8校あるが、例えば、広島中等教育学校では、広島を訪れる外国人観光客に対して、英語で平和公園を案内するガイドボランティア活動に取り組んでいる。また、基町高等学校では、創造表現コースで、広島平和記念資料館の「次世代と描く原爆の絵」の作成に取り組み、被爆の実相を後世に伝える取組を行っている。

<質疑応答>
(問)ひろしま平和ノートはどの教科で使用するのか。
(答)例えば小学1年生は図画工作や道徳と関連付けて、高等学校は特別活動として学べるようになっている。ひろしま平和ノートは、平和教育プログラムを進めるための教材の一つなので、すべての学校が使用しているわけではない。
(問)ひろしま平和ノートは、初版から10年後に改訂されているが、どのような点を意識して改訂したのか。
(答)長い時間をかけて議論したが、まず、検証会議において、今までの平和教育プログラムやひろしま平和ノートの取組について、成果や課題を確認し、その後、改訂会議を3年かけて行った。現場の先生からは、学ぶ時間が限られているので、より分かりやすい教材に、また、10年経つと内容が古くなるので、新しいものを取り入れたいとの声があり、各学年で定めている目標により近づけるよう、どのような教材がふさわしいのか検討した。決定前には試行的に教材として使用し、検証を行った。
(問)教育委員会として政治的中立性についてどのように配慮しているのか。
(答)広島市では、子どもたちが様々なことを知った上で、自分の考えをどう持つのかという部分を意識して平和教育を行っており、例えば、読んで考える平和ということで、これまで50冊以上の書物を紹介するなど、多様な学ぶ機会を与えている。
(問)平和教育の取組を行う中で、その成果や児童・生徒の成長について、どのように感じているのか。
(答)こどもピースサミットに参加した子どもが大学生になり県外で平和について発信しているという話や教員になったという話を聞く。また、昨年度のこどもピースサミット参加者は、非常に意欲的で、今年度の意見発表会で卒業生としてトークセッションに参加したり、ボランティア活動をしたいと集まったりもした。子どもたちの交流の中で、互いに触発され、例えば英語学習に意欲的になる等、自分たちにできることはないかを考えようとする姿勢が直近では見られた。
(問)平和教育プログラムがどの程度身についているのか、その評価はどのようにしているのか。
(答)昨年度、平和に関する意識実態調査を実施したが、原爆投下の年や日時の正答率に成果が表れており、平和教育プログラムを続けてきたことが今回の結果につながったのではないかと考えている。クロス集計では、子どもたちが、ひろしま平和ノートや平和に関する書籍等で学んだことが、意欲の向上に繋がっているということが分かった。また、資料館や原爆ドーム、慰霊碑等の被爆関連施設に実際に足を運んだ子どもたちの方が、知識の定着が図られていたという結果が出た。その次の「行動」につなげることはなかなか難しいが、家族や身近な人から直接学んだ子どもたちの方が、次の「行動」につながっていることも分かった。
(問)平和教育プログラムを電子化し、さらに発展させる考えはあるのか。
(答)あくまで学校での学びが平和教育プログラムである。平和教育アーカイブスは電子化され、映像がデータ記録として残る。学校では、1人1台タブレットを持っており、例えば、他都市との交流として、オンライン会議を行っている。昨年度は、北海道の子どもたちとつながり、同じ平和でも、北方領土と原子爆弾で内容が違うことを学んだ。
(問)幼稚園の子どもたちは、被爆体験を聴いて、どのような受け止め方をするのか。
(答)園によって講師は違うが、地域で平和活動をされている方から話を聴くこともある。子どもたちは大変素直で、自分たちで平和についてできることは何か一生懸命考え、折り鶴タワーを作る等、子どもたちなりに平和につなげている。
(問)未就学児への平和教育について、保育園は含まれないのか。
(答)教育委員会として市立幼稚園を18園所管している。保育園の所管はこども未来局となっており、幼稚園・保育所・小学校の連携は様々行っているが、平和教育プログラムについては、市立の幼稚園から高等学校までとなっている。保育園でも平和について学んでいるとは思う。
(問)平和記念式典には、毎年、何人の大使や海外の一般参列者が参加するのか。
(答)報道では、127か国である。
(問)平和記念式典に参加するすべての大使や海外の一般参列者と対話をする機会を設けているのか。
(答)国際会議場や平和記念公園で声を掛けるので、ある程度限定的となっている。

<視察の様子>
広島市議会視察の様子1   

広島市議会視察の様子2

以 上

この記事に関するお問い合わせ先

市議会事務局
〒664-8503伊丹市千僧1-1(市役所3階)
電話番号072-783-1344 ファクス072-784-8092

市民サービスの品質向上のため、通話内容を録音しています。