有岡城跡

更新日:2022年04月14日

有岡城跡は,猪名川の西岸,伊丹段丘(だんきゅう)東縁部の一角に位置します。もとは伊丹氏が南北朝時代から戦国時代にかけて伊丹城を築いていたところです。
天正2年(1574年)11月,織田信長の武将荒木村重は,伊丹氏にかわって伊丹城に入城しました。そして城の名を有岡城と改めて,大改造をおこないました。城だけでなく,侍町と町屋地区をも堀と土塁で囲んだ惣構(そうがまえ)の城としての価値を認められ,昭和54年12月に国の史跡に指定されました(昭和63年5月追加指定)。

有岡城の構造

有岡城は城である「主郭部(しゅかくぶ)」と家臣団の住む「侍町」,そして一般町人の住む「町屋地区」に分かれています。主郭部は伊丹段丘が東に突出した位置に築かれ,西側と南側に人工の堀を設けていました。そして,侍町と町屋地区を含む東西800メートル,南北1,700メートルの範囲を堀と土塁(どるい)で囲んだ「惣構(そうがまえ)」の城としました。また,北・西・南の要所にはそれぞれ「岸の砦」「上ろう塚(じょうろうづか)砦」「鵯塚(ひよどりづか)砦」の3つの砦を築いていました。

有岡城惣構の説明図

落城以後近代まで

天正6年(1578年)秋,村重は織田信長に反旗をひるがえし,有岡城は包囲攻撃をうけました。10ヵ月の篭城の末,村重は嫡子村次(むらつぐ)のいる尼崎城に逃れ,まもなく主を失った城は侍町を焼き払われて陥落しました。

天正8年,信長の家臣池田信輝の嫡子之助(ゆきすけ)が入城しますが,天正11年には美濃へ移り,伊丹は秀吉の直轄領となりました。その後大名は置かれず,いつしか城は放置され,江戸時代には地元の人々から「古城山」と呼ばれるまでになりました。しかし,焼け残った町屋地区を中心に伊丹の町は酒造りで発展し,15ヵ村一続きの“伊丹郷町”として繁栄しました。明治に入ると,川辺馬車鉄道や阪鶴(はんかく)鉄道(いずれも現在のJR宝塚線の前身)の建設工事により主郭部の東半分が失われました。

発掘調査と史跡指定

国鉄伊丹駅前の整備事業にともない昭和50年(1975年)から主郭部の発掘調査が始まり,北部の金光教跡からは本丸跡の石垣や建物跡,駅西側の荒村寺跡からは庭園遺構が見つかるなど,予想以上によく遺構が残されていることがわかりました。その結果,駅前再開発計画の再検討がおこなわれ,遺跡のうち主郭部の一部(伊丹1丁目地内)と「きしの砦」が置かれていた猪名野神社境内,そして惣構の輪郭線である水路と道路敷きの一部が国の史跡に指定されました。また,その後の発掘調査により確認された堀跡についても,追加指定を受けました。有岡城跡・伊丹郷町遺跡の発掘調査はその後も続き,発掘次数は400次を超えています。

有岡城跡主郭部の史跡公園整備は,昭和58年度から始められ,平成5年度に完了しました。土塁の石垣や建物・井戸・堀跡などが復元され,市民の歴史学習や憩いの広場として活用されています。なお,有岡城跡・伊丹郷町遺跡からの出土品の一部は市立伊丹ミュージアムで見ることができます。

有岡城跡史跡公園全景

有岡城跡史跡公園全景

有岡城の石垣

有岡城の石垣

所在地

有岡城跡史跡公園

伊丹市伊丹1丁目地内ほか(JR伊丹駅前)

〔交通〕

JR伊丹駅前すぐ

当公園内では野球・ボール投げ・サッカー・バレーボール・バスケットボール・ゴルフ・テニス・フリスビーなど、他の利用者や近隣にお住いの方、歩行者の迷惑になる行為はしないでください。

球技・ボール遊びのできる公園は、伊丹スポーツセンター、瑞ケ丘公園、古池公園、猪名川河川敷緑地の一部があります。(いずれも有料となっています。)

岸の砦跡

伊丹市宮ノ前3丁目ほか(猪名野神社境内)

〔交通〕

市バスJR伊丹駅前・阪急伊丹駅前 1番のりばより市バス49・51・53系統で清水橋下車,北へ約250m。

阪急伊丹駅から北へ徒歩で約700m。

参考文献

  • 八木哲浩「有岡城の荒木村重」『伊丹市史』第2巻、伊丹市、昭和44年
  • 鈴木充「伊丹城」『地域研究いたみ』第4号、伊丹市立博物館、昭和50年
  • 浅岡俊夫「伊丹城(付・有岡城)」 『日本城郭大系』第12巻新人物往来社、昭和56年
  • 和島恭仁雄「荒木村重時代の有岡城」『兵庫県の歴史』18兵庫県、昭和56年
  • 小長谷正治「有岡城跡の発掘調査」『新・伊丹史話』伊丹市立博物館、平成6年
  • 「有岡城跡」『伊丹の文化財』伊丹市教育委員会、平成7年
  • 藤本史子「有岡城跡・伊丹郷町遺跡出土遺物について-震災関連発掘調査による出土遺物を中心として-」『地域研究いたみ』第27号、平成10年
  • 解説資料第41号「荒木村重とその時代~伊丹城から有岡城へ~」伊丹市立博物館、平成12年
  • 解説資料第53号「荒木村重と有岡城」伊丹市立博物館、平成18年
  • 伊丹市立博物館史料集13『伊丹城(有岡城)跡‐主郭部の発掘調査を中心として‐』伊丹市立博物館、令和2年
  • その他発掘調査報告書が多数あります。

地図情報

この記事に関する
お問い合わせ先

都市活力部まち資源室文化振興課(文化財担当)
〒664-8503伊丹市千僧1-1(市役所4階)
電話番号072-784-8090 ファクス072-784-8048

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