旧石橋家住宅
県指定有形文化財(建造物)
石橋家は宮ノ前商店街に面して古風な町家の表構えを見せていた雑貨商の老舗(しにせ)でしたが,都市計画事業のために立ち退きを余儀なくされました。しかし,その建造物としての重要性から,平成13年3月に兵庫県指定文化財(有形文化財)に指定され,重要文化財旧岡田家住宅の東隣に移築して公開されています。
移築以前の石橋家
石橋家は17世紀後期に伊丹郷町内の昆陽口村に移り住みました。4代目から北少路村の一角(現在の宮ノ前1丁目)に移って古手屋の屋号で紙・金物等の売買に携わり,明治になってからは酒造業も営みました。
旧石橋家住宅の建築
主屋は19世紀中期の建築で,間口八間,奥行六間で,桁行15.8メートル,梁間12.8メートル,切妻造,本瓦葺で,正面には桟瓦葺(さんがわらぶき)の庇(ひさし)がついています。
前半間は半間の下屋庇がつき,そのうちの右手(南側)のみ室内に取り込んで土間としています。また建物の北端の幅1.4メートル,奥行二間分は坪庭となっています。内部は前半部奥行二間分の店の間と,残る後半部の居室部に分かれます。店の間は右手から番頭部屋・畳敷きの店,板敷の店があって,残りはL字形の土間となっています。北居室部は,左手(南側)三間幅が土間で,残る右手(北側)に整形で4室の部屋が設けられています。土間には広敷が張り出し,背面寄りにカマドが設けられています。2階は後半部の土間の上が吹き抜けとなっている以外は間仕切りが設けられて,前半部は板敷のツシ二階,後半部は食い違いで5部屋が設けられています。
表構えは中央部に摺り上げの大戸,その左脇には吊り上げ式の板戸,右側は吊り上げ式の板戸で一部揚見世(ばったり床几)を用いています。これらの部分以外は出格子がはめ込まれています。2階は4ヵ所に虫寵窓(むしこまど)を設け,軒まで白壁で塗りこめています。
当初は土間境にナカノマ・ダイドコロを通して一本溝の板戸で閉じており,前半部の土間の南端と正面側に床が張られていた時期がありました。しかし,全体に大きな改造はなく,建立当初の姿をよくとどめています。
軒高が低く,摺り上げ戸が多用されて古風な外観を呈していますが,背面側には本二階の部屋を設け,土間の上の架構は梁・束(つか)・貫(ぬき)を整然と組んで,貫は背違いであることなど,幕末から明治初頭の新しい技法を用いています。
このように,近世から近代初頭の伊丹郷町の町家の形態を知る上で,きわめて重要な遺構です。
旧石橋家住宅(竣工時) 南東側より
店の間(竣工時) 東南面
座敷内部(竣工時) 東面
現在の利用
現在は市立伊丹ミュージアムに属して旧岡田家住宅の隣にあり、店の間は工芸品等を展示・販売する「伊丹郷町クラフトショップ」、座敷・茶室は句会・茶会など文化活動の場として活用されています。ツシ二階では江戸時代から戦後までの宮ノ前や石橋家の歴史などを紹介しています。
所在地
伊丹市宮ノ前2丁目5番20号(市立伊丹ミュージアム)
交通
阪急伊丹駅から徒歩北東へ約9分、JR伊丹駅から徒歩北西へ約6分
専用駐車場はありません。宮ノ前地下駐車場(有料)をご利用ください。
参考文献
- 山岸常人「石橋家住宅」『伊丹の歴史的建造物』伊丹市教育委員会、平成12年
- 『伊丹市有形文化財旧石橋家住宅主屋保存修理工事報告書』兵庫県伊丹市、平成13年
日本遺産『「伊丹諸白」と「灘の生一本」下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷』
関連リンク
日本遺産『「伊丹諸白」と「灘の生一本」下り酒が生んだ銘醸地、伊丹と灘五郷』
地図情報
この記事に関するお問い合わせ先
都市活力部まち資源室文化振興課(文化財担当)
〒664-8503伊丹市千僧1-1(市役所4階)
電話番号072-784-8090 ファクス072-784-8048
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更新日:2022年11月01日