令和7年度神奈川県平塚市・神奈川県川崎市

更新日:2025年10月28日

1.視察出張委員
 委員長   齊藤   真治      副委員長   新内   善雄
 委    員   加藤   光博      委       員   北原   速男
     〃       高塚   伴子           〃        大津留   求
     〃       花田康次郎           〃        前田伸一郎
     〃       森   華奈子
2.視 察 先 神奈川県平塚市・神奈川県川崎市
3.実 施 日 令和7年8月5日(火曜日)~6日(水曜日)
4.調査事項 下記報告のとおり

◎8月5日 13:45~ 神奈川県平塚市

<まちなか活性化の取組について>

   初めに、平塚市議会議長より歓迎のあいさつを受けた後、齊藤委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、平塚市都市整備課長及び課長代理から説明を受け、質疑応答がなされた。最後に、新内副委員長よりお礼のあいさつがなされた後、議場見学を行った。

<説明の概要>
1)平塚駅周辺地区活性化推進事業
   平塚駅周辺地区では、近隣都市での商業施設の出店や郊外での大型店舗の出店、またインターネットの普及に伴い、消費者のライフスタイルが変化していること等により、商店街を取り巻く環境が変化し、買い物客や歩行者の通行量が減少するとともに、にぎわいが失われつつある。
   まちなかの活性化に向けては、商業者や地域住民等の自主的なまちづくりも必要であるとのことで、若手商業者を中心とした任意団体「平塚まちなか活性化隊」が組織された。この団体は、ソフト面での事業展開を実施しており、市は、団体支援で関わっている。
   また、これらの取組と合わせて、市は公共空間の活用方法などを含めたまちづくりの方向性や、実現手法を示したハード面での取組につなげるために、概ね20年後の将来像を示す平塚駅周辺地区将来構想を、令和6年度末に策定し、駅周辺地区の活性化に取り組んでいる。
(1)事業の目的及び内容
   本事業では、平塚駅周辺地区の活性化や持続可能なまちづくりの実現を目指しており、「平塚まちなか活性化隊」(通称:まち活)が行う地域主体のまちづくりの推進への取組を支援している。
(2)平塚まちなか活性化隊の取組
ア)まちなかベース「きちきち」の開設・運営
   多様な人の活動拠点、自由に滞留できる場所として、空き店舗を、チャレンジショップなどの活用の場となるコミュニティハブ、まちなかベース「きちきち」を開設している。このスペースは、商業者や住民による交流の場、学生の部活動、チャレンジショップ、マルシェなど様々な用途で活用されている。
イ)商店街や通りごとのまちづくりビジョンづくり
   什器の設置による通りの雰囲気づくり等を実施するなど、商店街や通りごとに進めたいまちづくりの内容を設定したまちづくりのビジョン作成を推進している。
   また、商店街の魅力を発信するため、駅周辺地区のイベントに併せてイベント会場に店舗紹介を提示し、来場者が商店街の店舗を知る契機としている。
ウ)公共空間を活用した滞留スペースの設置
   道路等に人工芝やテーブル、椅子を設置し、滞留スペースを作る社会実験を実施した後、実施結果を検証して、今後のまちなかの整備等の検討材料としての活用を目指している。
エ)新規出店支援
   1例として、まちなかベース「きちきち」をチャレンジショップとして、「きちきち」のメンバーや市職員が、工事や広告の相談、内装の珪藻土塗りのサポートを実施した。
オ)活動のPR・チラシ
   「きちきち」で行うイベントや駅周辺地区の新規店舗の紹介チラシを作成し、商業施設での配架や、駅周辺ホテルの宿泊者向けの食事場所の案内チラシを作成し、ホテルへの配架を実施している。
(3)事業の課題
   新たなメンバーが増えず固定化してきていることや、イベントを実施するための資金集めが課題となっている。

2)平塚駅周辺地区将来構想
   本構想は、平塚駅周辺地区の20年後の将来像(=理想像、あるべき姿)をまとめ、持続可能なまちづくりを進めるために、令和4年度からの3か年で検討し、令和7年3月に策定した。特に、ハード整備に関する施策や公共空間の活用方法など、まちづくりの方向性や実現手法をまとめた内容になっている。なお策定に向けては、初期段階から市民をはじめ企業や関係団体等の意見を積極的に取り入れている。
   また、本構想では、まちの将来像を、行政・市民・事業者等まちに関わる様々な人が共有することで、公民が連携したまちづくりを推進する。
(1)平塚駅周辺地区将来構想の構成
   平塚駅周辺地区でどのような過ごし方ができるのか、どんな体験ができるのかといったライフスタイルを設定して、自身の関わり方を想像することを大切にしながら示している。また、買い物や飲食に加え、働く場や学習する場、市民活動ができる場など、様々な活動ができるまちを目指している。
(2)まちづくりのコンセプト
   住む人、働く人、遊びに来る人、事業を始める人など、誰もがそれぞれのお気に入りの空間や体験を見つけることができるように、平塚駅周辺地区を家の中で家族が集まり、くつろぎ、様々な目的に合わせて過ごす「リビング」に見立てている。充実した日々の中にときめきを感じられる、それぞれが居心地のよいまちを目指す。
(3)グランドデザイン
   コンセプトを実現するため、46.2hという広範囲の駅周辺地区の中で、全体を見渡して中心となるエリアを設定するなど、メリハリを持った整備を進めていく。
   グランドデザインでは、三つの考え方を設定している。
ア)都市機能の集積を誘導するエリア
   多様な活動を行う中心となるような都市機能の集積を誘導するエリアを設定
イ)ウォーカブルネットワーク
   主要な道路を中心に居心地が良く歩きたくなるネットワークを形成
ウ)交通マネジメント
   ウォーカブルネットワークを実現するため、多様な交通機能が集中する駅前広場の機能分担などを推進
(4)まちづくりの方針
   平塚駅周辺地区の各通りやエリアの将来像を描くために必要となる考え方を、7つの方針として整理している。
ア)地域資源・商店街の特色を生かしたまちの魅力づくり
   湘南ひらつか七夕まつりや東海道の歴史など特色ある商店街を生かしたまちづくりの推進
イ)交流・にぎわいを創出するウォーカブルネットワーク
   広場、公園、公開空地等を活用した交流・賑わいが出来る空間の配置
ウ)多様な活動を支える機能誘導と配置
   コンセプト「みんなのリビング」を実現するために、様々な機能の誘導
エ)市街地の更新
   地区内の建物が老朽化しているため、建物の共同建替えの誘導
オ)グリーンインフラの活用による快適性・防災性の確保
   道路や公園、公開空地等の緑化によるみどりのネットワークの形成
カ)移動しやすい環境づくり
   駅前広場のバス、タクシー、自家用車等の交通の機能分担
キ)スマートシティーと平塚発の新技術の活用
   デジタル技術を生かしたまちづくり
(5)将来構想実現に向けた進め方や体制
   市は、民間開発や周辺施設のリニューアルを誘発するために、まちづくりの種となるプロジェクトを積極的に推進する。建物の建替え、道路や公園、駅前広場などのハード整備と、ある程度のエリアで建物や公共施設のデザインを調整していくことで、イベント時の空間の活用や店舗誘致等のソフト的な取組を一体的なエリアで推進する。
   なお、まちづくりは、行政だけで進めていくことができず、商工会議所や企業、学術機関、大学など、同じ土俵でまちづくりに参加する体制を作っていくことが必要と考えている。

3)将来構想を実現するための今年度以降の取組
(1)社会実験の実施
   今年度は、湘南ひらつか七夕まつりのメイン道路と街区公園である新宿公園での社会実験を予定している。取組目的は、将来構想に示す将来イメージの具体化を進めることにあり、整備に向けた設計や空間形成を進めるためのガイドラインに反映していきたい。また、社会実験を実施することで、関係団体である自治会や商店会の施設整備計画への参加を促したい。
(2)実施計画の作成
   将来構想で示す将来像を実現するための20年分の事業計画を策定し、うち5年ごとの計画である都市再生整備計画を国に申請している。整備資金を確保していきたい。
(3)将来構想の進捗確認や普及の場づくり
   多様な主体が関わり、長期的に将来構想に沿ったまちづくりを進めるための情報共有、情報交換の場を作るという将来構想の中での部分を踏まえ、まちづくりサミット(仮称)の開催に向けて取り組んでいる。
   まちづくりサミット(仮称)は、商工会議所や商店会、まちなか活性化隊などのまちづくり団体、市民活動センター、自治会、町内会、関係行政機関、民間企業など、平塚駅周辺地区のまちづくりに関わる多様な主体をメンバーとして、まちづくりを官民で実現していくために、市や各団体の取組、また、互いの情報提供や意見交換を実施し、将来的にはエリアマネジメントの構築につなげたい。
(4)将来構想実現に向けた課題
   市民や事業者に対して、将来構想やアクションプランのさらなる周知を図り機運を醸成する必要がある。また、全国的な問題だが、建築資材や労務単価の高騰によって、民間事業者が開発や建築を控えている状況で、民間の事業の進み方が厳しい状況であるところが課題と考えている。

<質疑応答>
(問)現在の平塚市の人口は262,000人弱だが、20年先の人口の想定数は。
(答)国立社会保障・人口問題研究所に準拠した数字になるが、2040年には約22万人、40年後の2065年では162,000人と推計している。

(問)2040年で約4万人減、40年先で約10万人弱減の人口を想定されているが、中心市街地の活性化には多額の財源が必要になる。後の世代の負担とならないのかを心配するが、全体の予算規模は。
(答)総額は確認できていない。最初の5年間分については都市再生整備計画を作成し、約11億円で申請しているが、市保有の土地や施設を開発する費用は積算していないため、今後必要になる。

(問)11億円の中に、平塚駅周辺地区のまちづくりを進めるための補助金はどのくらいを見込んでいるのか。
(答)まちづくりをサポートする補助金に係る事業は都市再生整備計画に含めていないが、今後、補助金メニューにある市街地再開発事業等の申請があり、都市再生整備計画に含めることが可能であれば本計画に含む予定である。そうでなければ市単独となる。現時点で見込額はわからない。

(問)中心市街地に商店等を集約することは、逆ドーナツ化現象を引き起こすことにつながるのではないかと懸念されるが、中心市街地のまちづくりは、コンパクトシティーを目指したものなのか。
(答)現在、神奈川県が平塚市と厚木市の境にある寒川町に新幹線の新駅を誘致し、平塚市を含めた一帯でまちづくりを行おうと、ツインシティ整備計画を策定している中、平塚市側には物流施設や大型施設が立地されるなど非常に賑やかなまちができている。一方、市内では、市北側にだけ力を入れているのではないかといった意見もあり、過去には栄えていた南側も全体的なリニューアルを図っていこうということが、今回の計画の背景としてある。

(問)再開発エリアに公共施設や市有地はどのくらいあるのか。それはどのような土地なのか。
(答)駅前に1つ、その他で2つ、大きく分けて3つのエリアにある。駅前広場はバスのロータリーになっている。その他は、立体駐車場と広場である。

(問)地権者との合意形成はどのように進める予定なのか。
(答)地権者との合意形成には至っていない。今後、熟度が増してきた段階で、各民間ディベロッパーが合意形成に当たる場合、平塚市が個人と調整することはないが、金銭的に支援するために補助メニューを設けている。

(問)地権者が土地を手放すとなればハードルが高いと思うが、どのように考えているのか。
(答)市有地以外は民間開発に期待している。民間開発に合わせて市街地再開発に係る公共貢献メニューに当てはまれば、補助金を出していく。

(問)民間主体で開発を進める中に行政が入り、駅周辺地域を活性化していこうということなのか。
(答)道路は当然市所有であるため、道路や公園の整備は本構想に基づき実施する。その沿道に、民間が開発する魅力ある店舗にきてほしい。

(問)再開発事業としてハード事業を行う場合、容積率を緩和しなければ再開発が進みにくいと考えるが、建物の高さを緩和する等といった施策はあるのか。
(答)国の基準に沿って総合設計制度を設けており、要件が整えば制限を緩和することはある。また、容積率についても、プラス200%まで可能である。ただ、市街地再開発では、もう少し緩和してほしいという希望が出てくると予測できるため、今後、基準を定めて対応できるように考えたい。

(問)まちづくりサミット(仮称)は議論だけするのか。その協議体は、直接事業をする団体ではないのか。
(答)まちづくりサミット(仮称)にどのようなことを担っていただくのかについては決定していないが、おそらく、その協議体をまとめる事務局が実行することになると考える。

(問)まちづくりサミット(仮称)の活動には予算が絡むと思うが、どのように考えているのか。
(答)まちづくりサミット(仮称)は始動したばかりであり、どのような団体になるのかはわからない。今後、協議の進め方や、役割分担が決まれば、予算に関することも決まってくると考えている。

(問)若手商業者の力が必要との説明があったが、彼らを引き込むために、どのようなことを実施しているのか。
(答)直接関わっていないため詳細は不明だが、各商店が自身の専門内容を客にレクチャーする企画を実施しており、その企画に参加する比較的若い人に、平塚まちなか活性化隊が声掛けをして集まっていると聞いている。

(問)平塚駅周辺地区のまちづくりを進めるために案内されている補助金の予算額は。
(答)今年度は、まちなかリニューアル応援の500万円と敷地共同化推進支援事業で数百万円の予算となっている。希望者からの相談を受け、必要であれば予算化していく。

(問)平塚市にはJリーグのチームがあるが、市の経済や地域振興に、それらスポーツは効果があるのか。まちづくりに生かせるものはあるのか。
(答)平塚市は25万人の都市だが、野球場やサッカーも出来る陸上競技場、全国大会が出来る規模のバスケットコートのある体育館もあり、スポーツをする、見る環境は整備されている。本構想にある公園通りはスタジアムにつながる通りであるため、スポーツを生かしたまちづくりとして、店舗等を誘導できれば良いと考えている。

(問)市内には駅が1つしかなく全体的に市域の南側に偏っているが、北部の住民等の移動手段はバスになるのか。バスの運転手は不足していないのか。
(答)神奈川中央交通が市域をカバーしている。バスの運行本数は不明だが、住民にとってバスは、駅に出てくるための重要な交通手段のひとつになっていると考える。併せて、自転車が大切な交通手段になっている。
   また、運転手不足については、現在、駅南側で自動運転バスを走らせようと、実証実験を実施している。本構想においても、駅南側は自動運転バスが走行できるように、短期的な整備を進めることにしている。

<視察の様子> 

平塚市行政視察写真1枚目

平塚市行政視察写真2枚目

 

◎8月6日 9:30~ 神奈川県川崎市

<都市部における自動運転バスの取組について>

   初めに、齊藤委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、川崎市まちづくり局交通政策室自動運転バス推進担当課長から説明を受け、質疑応答がなされた。最後に、新内副委員長よりお礼のあいさつがなされた後、議場見学を行った。

<説明の概要>
(1)川崎レベル4バスプロジェクト
   全国に先駆けて、自動運転バスレベル4のシステムを搭載した車両を納車し、令和7年1月27日から羽田連絡線(大師橋駅~天空橋駅)及び川崎病院線(川崎駅~市立川崎病院)の2ルートにおいて、令和9年度の自動運転バスレベル4の実装を目指した実証実験を開始している。

(2)事業実施の背景
   人口は増加傾向であり、令和6年4月8日に人口155万人を超えたが、今後は日本全体のトレンドに沿って、2030年度くらいまでがピークとなると見込んでいる。一方で、路線バスは平成30年度に一日当たり12,400便だったが、令和6年度には一日当たり9,900便となり、2,500便の減少となっている。その理由は運転手不足と労働環境が挙げられる。残業規制等に伴い、ローテーションを組むことが難しくなっており、便数を減らさざるを得ない状況である。

(3)事業の目的・目標
ア)目的
   バス運転手が不足する将来において、地域交通を維持し、まちの価値を保つ。
イ)目標
   営業運行しているバス路線において、自動運転レベル4の実装を目指す。また、全国への横展開モデルを形成する。

(4)施策の5本柱
ア)バス路線の効率化
   現金よりICカードで乗車する人が多いため、ICカードデータから得られる情報を分析して、バス路線を効率化する。
イ)路線バスの輸送力確保
   連節バスを導入することで、運転手一人当たりで輸送できる乗客数を増やす。
ウ)新たなモビリティの導入
   大きなバス以外にも、定員が8名ほどのワゴンサイズのバスを予約していただく。
エ)モビリティハブの導入
   路線バスと新たなモビリティバスの乗り換えが必要となってくるが、乗り換える時に、そこで用事を済ませられるというように、乗り換えすること自体が不便ではなく、新たな価値となるようなものを生み出す。
オ)市民への啓発・意識醸成
   市民への啓発・意識醸成を戦略的に行っていかなければ、市民の行動変容につながらない。昨年、啓発の一環として、交通を担う事業者が一堂に会し、市民を対象とした「かわさきのりものフェスタ」を開催した。クイズを出題して、楽しみながら学べる機会をつくった。当初3,000人の集客目標だったが、約16,000人の来客があった。今年度はもう少し大きな公園で11月22日に実施予定である。

(5)運行ルート
ア)羽田連絡線
   京浜急行の大師橋駅から、羽田空港エリアの天空橋駅を結ぶ、片道約4.4キロの路線バスルート。全国初となる都道府県をまたぐルートである。
イ)川崎病院線
   川崎駅の東口と市立川崎病院を結ぶ2点間の路線。川崎駅の利用者は一日約30万人となっており、社会受容性も重要なテーマであることから、新しい技術をどのように市民に受け入れていただくか、どのように土壌を作るかという面においては、非常に多くの市民に見ていただけるルートとなっている。

(6)2024年度の実証実験結果
   自動運転の割合は、昨年度と今年度はレベル2の実証実験で、86.8%であった。13%程度は運転手の手動介入があった。これは平均値であり、一番高かった自動運転の割合は96%であった。手動介入が1便あたり約7.3回起きており、介入の一番の理由は路上駐車車両の回避である。車両には路上駐車を回避できるシステムが備わっているが、やはり事故を起こしてしまうと実験が1~2か月止まるため、その機能を100パーセント解放することは慎重にならざるを得ない。
   しかし、少しずつチャレンジしていかなければならないと考えるため、路上駐車を自動で回避するプログラムを徐々に解放し、手動介入を減らしていくことが今年度の大きな目標である。昨年度は10日間走行して、約1,000人が乗車した。乗車率は9割で、再度乗りたいと言う方の割合も9割だった。

(7)国庫補助等
   令和6年度から自動運転バス事業に取り組んでおり、当時は国から100パーセントの補助があった。令和7年度は、国補助は80パーセントに変更され、区分も重点支援と一般支援の2つに分かれた。重点支援区分は3億円、一般支援区分は1億円で、昨年度は全体で約90件採択されたが、今年度は50件程度に絞られた。川崎市は、今年度も重点支援を選択し、事業費27億円で採択をいただいた。
   取組のポイントは、レベル4早期実現と、事業採算性の向上である。国庫補助を来年度も80パーセントある保障はなく、おそらく徐々に補助率は下がってくるということを考えると、いかにコストを下げるかを考えていかなければならない。
   現在は自動運転バス内に立って乗車することが出来ず、また13人しか乗車できないため、大型車両の導入が必要である。現在、自動運転バスは無償で運行しているが、今後、いつまでも無償とすることはできないため、有償で運行していくことを考えなければならない。収益構造の多角化を図りながら、持続可能な自動運転バスサービスモデルの構築を進めていく。

(8)2025年度の取組
「レベル4早期実現に向けて」
ア)路上駐車車両の回避と車線変更技術の進化
イ)回送ルートの自動化に向けた準備
   回送ルートを運転手が運転してしまうと人件費の削減にならないため、営業所を出るところから自動化する。
「事業採算性の向上」
ア)有償運行の開始
・キャッシュレスの実施
・運賃収入の拡大に向けて、着席・急行料金を設定
・デマンド交通等とシームレスな接続
イ)車両の大型化・複数台運行
・羽田連絡線に国産大型車両を投入
・複数台運行(1人で2台同時監視)
   これらア)イ)の取組を組み合わせながら、費用と収入の適正化を図り、まちの価値を高める持続可能な事業モデルを構築していく。
「国庫補助対象外の自主事業」
ア)路上駐車対策の強化
・民間駐車場と連携した荷捌き対策の推進
・行動経済学を活用した駐車対策
・路上駐車車両への呼びかけの強化
イ)通年運行の開始
・補助対象期間外は事業者負担で運行
ウ)社会受容性の向上
・筑波大学・名古屋大学と連携し、ラッピングのコンペを実施

(9)スケジュール
   羽田連絡線と川崎病院線をレベル4で運行する目標を2027年度に置いている。今年度延べ140日間の走行を行い、運賃有償で、レベル2での実験を行う。来年度は一部区間でレベル4の許認可を取得できれば、レベル4での実証実験を行い、2027年度の実装につなげていく。

<質疑応答>
(問)自動運転バスは、例えば狭い道路で車両同士が行き交う際の間隔など、どこまでシミュレーションやプログラミングができるのか。
(答)自動運転の方法は2通りある。1つはマップ上に仮想の線路を引き、その線路上を走る方法。もう1つは、エンドトゥエンドと呼ばれ、カメラデータを人口知能で認識する方法。全国的には多くが、マップベースの自動運転となっている。後者の方法が一般化すれば、もう少し柔軟に対応できるようになると思うが、現状では人の介入が必要となっている。

(問)自動運転の手動介入の要因について、路上駐車車両の回避が約40パーセントとのことだが、それ以外の要因は。
(答)車線変更時等の円滑な走行を目的とした介入が多い。自動運転システムは安全を重視して作られているため、システムが車線変更の指示を出さないことがある。その他は、警備員や対向車を障害物と認識する場合や、右左折時の巻き込み確認などがある。

(問)緊急車両が自動運転バスの前を走っている場合は認識すると思うが、自動運転バスが先頭を走っている場合、交差点に近づいてくる緊急車両は認識できるのか。
(答)認識できる。レベル4の場合は車と車との間で緊急車両等が来るという情報のやりとりを行い、交差点の手前で事前に車両を制御することが可能である。レベル2の場合は運転の主体が運転手となるため、その機能はオフにして、運転手が判断して車両を止めることになる。

(問)現在は本部で常にバスを監視し、指令を出しながら実施されていると思うが、本部の人間がハンドルを握って、遠隔で操作することも今後可能なのか。
(答)現在、メーカーによっては遠隔操作を導入しており、今後、技術的にはできるようになるが、通信環境等の面でコストの問題に直面するため、川崎市は現状選択していない。

(問)天候の感知など、センサーの技術面の精度は。またより良い製品が出てきたときの組替えは可能か。
(答)国内に4、5社のベンダーがいる。センサー以外にも、例えば、信号情報との連携を実施しているが、製品によって、規格の違いが存在する。組替えができるように規格の統一化が必要になることをベンダーには伝えている。

(問)障がいのある方や高齢者等、何らかの配慮が必要な方への対応は。
(答)道路交通法には2つの自動運転の方法が規定されており、1つは、遠隔で監視する方法、もう1つは車掌が乗車し運行する方法である。全てを自動で行おうとするとコストが高くなってしまうことにあわせ、配慮を必要とする方がいた場合、対応できなくなる。それらを考え、バスには車掌が乗車し、車掌が対応することになる。車掌には大型第二種免許が不要であるため、運転手不足の解消ともなる。

(問)車内事故が起きた際の対応は。
(答)車内での対応は車掌が行う。

(問)民間駐車場と連携した対策の内容は。
(答)川崎市では、建物を建築する際に一定の基準を超えるものに関しては、駐車場を設けるよう規制している中、昨今車の利用台数の減少に伴い、駐車場の利用率が一時と比べると減少してきているため、駐車場スペースがあまり活用されない状況が生まれている。そこを荷捌き場として活用できないかというアプローチも検討している。

(問)バス1台あたりの価格は。
(答)中型のミニバスで約9,900万円である。

(問)バスを大型化した場合、乗車定員は何名になるのか。
(答)着座の前提で25名。立つ人を含めると約70人の定員を想定している。

(問)二連結のようなバスがあれば人件費を削減でき、また、ストックしておくバスも減ると思うが、どのように考えているか。
(答)そのような予定はない。運転手が運転しているバスの後に、自動運転バスがついてくるという実験は、今年度他市町で実施すると聞いている。

(問)実証実験のルートを2つ設定しているが、その理由は。
(答)2ルートのうち、羽田連絡線は羽田空港エリアを走るという注目度があること、川崎病院線は起点と終点の2点間輸送であり、かつ、終点が病院ということで高齢者に幅広く利用していただき、自動運転バスを見ていただけるためである。また、川崎市内にはバス運行会社が4社ある。予算を議決いただく前に自動運転バス事業参入の意向調査を行った際、1社から手が挙がったため、まずはその手の挙がった会社の運行ルートである必要があった。

(問)川崎市に4つのバス事業者があるとのことだが、市営バスのシェアはどのくらいか。
(答)川崎区、幸区は市営バスと川崎鶴見臨港バスが半々程度で運行している。中原区、高津区、宮前区などは東急バスがほぼ占めており、北部では市営バスはほとんどなく、小田急バスがメインとなっている。

(問)初期投資が大きく、今後メンテナンス費用等もかかってくる一方、国の補助金が徐々に削られていく可能性が考えられるが、今後膨らむ予算をどのように考えているのか。
(答)令和9年度までの間、実装後はバス事業者が運営できる仕組み作りを前提に、実証実験は川崎市が行っている。川崎市の予算ばかりが膨らむことがないように考えているが、横展開していく中で、企業単独では難しいという声は出てくると想定されるため、行政としてどのような支援が必要なのかという議論を平行して行っていく。

(問)自動運転バス事業を市が確立した後は、他の事業者に渡すことになるのか。
(答)確立したもの全てを他事業者に渡すとなると、これは守秘義務の問題がある。導入時のノウハウを市でしっかりと持った上で横展開を行うことを想定している。

(問)ソフト部分を市側から共有し、ハード部分は各事業者で持つというイメージか。
(答)今回、バスは川崎市で購入したが、考え方としては、各事業者で購入していただきたい。今後、コストの面などにおいて都度勉強していかなければならない。

(問)雨の日はバスに乗車する人が多いのか。
(答)普段自転車を利用している方が、雨の日はバスを利用するという傾向はデータとしてある。

(問)市と事業者とで一定横の連携をとり、限られた資産を有効に利用できるような制度があればと思うが、どのように考えているか。
(答)現状考えていないが、民間のバス会社から、実験が進む中でそのようなことにチャレンジしていきたいという提案があった場合は、本市として何ができるのかを考えていきたい。

<視察の様子>

川崎市行政視察写真1枚目

川崎市行政視察写真2枚目

以 上

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市議会事務局
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