令和7年度宮城県名取市・宮城県仙台市
1.視察出張委員
委員長 永松 敏彦 副委員長 原 直輝
委 員 杉 一 委 員 竹村 和人
〃 山薗 有理 〃 川井田清香
〃 土井 秀勝 〃 加柴 扶美
〃 鈴木 隆広
2.視 察 先 宮城県名取市・宮城県仙台市
3.実 施 日 令和7年7月7日(月曜日)~8日(火曜日)
4.調査事項 下記報告のとおり
◎7月7日 13:15~ 宮城県名取市
<名取市公式ポータルアプリ「ナトぽた」について>
初めに、名取市議会議長より歓迎のあいさつを受けた後、永松委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、名取市企画部DX推進室主幹から説明を受け、質疑応答がなされた。最後に、原副委員長よりお礼のあいさつがなされた後、議場見学を行った。
<説明の概要>
1)「ナトぽた」の名称及びロゴデザイン
名称は、市内在住・在学・在勤の方を対象に公募し、市職員や関係団体で構成する審査委員会で選定した。ロゴデザインは、アプリの構築委託業者であるTOPPAN株式会社が複数候補作成したものを、名称が採用された当選者に選択していただいた。
2)情報発信の課題
令和4年度に実施した各課へのヒアリングでは、届けたい情報を届けたいターゲットに発信したいや、市民の施策参加促進の仕組みを構築し、市民の施策認知度を向上させたい、情報発信のために多岐にわたる情報発信媒体を編集しなければならず、職員に行政情報の発信やPRに伴う負担が発生しているといった要望や課題が多数出された。名取市では、広報誌やホームページ、X、Facebook、インスタグラム、YouTube、防災メールなど多岐にわたる媒体を通して市民に情報発信しており、職員がそれぞれの管理画面を編集していたため、負担が大きかった。
一方、市民目線で考えたときに、行政情報の取得には、多様な媒体の中から市民自らが情報を探さなければならず、アクセス方法に課題があった。中でも広報誌は、入稿締切りが1か月前であるため、情報の即時性という観点でも課題があった。
また、市民へのプッシュ通知について、登録されたメールアドレス宛にお知らせを配信する仕組みを以前に検討したが、カテゴリー別に送信することができないため受信拒否をされる懸念もあるという理由で、セグメント配信が可能になるまで見送ることになっていた。
3)「ナトぽた」導入の目的
市民の施策認知度向上や行政への市民参画の促進を目的とし、アプリ機能を通して市民の行政情報へのアクセスを容易にするとともに、市民との双方向のコミュニケーションを推進する。また、デジタルサービス間の連携による利便性向上を図る。今後、さらに機能の追加・拡張を通じて利便性を高めていきたい。
併せて、他の情報発信媒体との連携により、情報発信に係る職員の稼働削減を図る。
4)「ナトぽた」の特徴
アプリは、TOPPAN株式会社の自治体ポータルサイト「クラシラセル」をカスタマイズしており、行政情報の受信に特化した専用アプリであるため、UI(接点・接触点)がユーザー目線でわかりやすく、市からの通知しか届かないや、市の行政サービスにしかリンクしない、広告などがないといったメリットがあり、特に高齢者にとっては安心感がある。また、LINEと違って情報が埋もれない。
※LINEは縦スクロールとなっているため、通知が上に埋もれてしまう。いつ、どのような通知が届いているのかを探しにくい。
また、主な機能として、プッシュ通知機能、カレンダー機能、ポータル機能、地域マップ機能がある。
・プッシュ通知機能
初期設定時に登録する年齢や性別、属性情報、関心のある行政情報のカテゴリーに応じて、受け取る人にとって最適化された情報がプッシュ型で通知される。カテゴリーには、「くらし・手続き」、「子育て・教育」、「健康・福祉」、「観光・特産品」、「産業・しごと」、「市政全般」があり、その他、市防災情報を発信する名取防災メールや、宮城県警による宮城セキュリティメールと連携しており、これらがプッシュ通知される。
また、「ナトぽた」での情報発信が職員の負担とならないよう、市ホームページの新着情報に掲載する記事が、自動的に「ナトぽた」に掲載されるよう連携している。
・カレンダー機能
初期設定時に登録しているエリアに応じて、種類別のごみ回収日等をカレンダー表示している。なお、「ナトぽた」では、今日がゴミの日である旨の通知は届かない。
・ポータル機能
市ホームページやSNS、関連する外部のアプリ等に、一元的にアクセスできるポータルサイトのような活用ができる。また、利用者が必要とするアプリ等のみを一覧で掲載できるため、探しやすい、アクセスしやすいといった声をいただいている。
・地域マップ表示機能
避難所やバス停など、地域ならではの情報を地図で表示させている。
5)これまでの事業の進捗 主な実施内容
(1)令和4年度
・名取市DX推進ロードマップ(地域版)の策定
・デジタル田園都市国家構想交付金(地方創生推進タイプ)の申請事務
(2)令和5年度
・システム構築事業者のプロポーザル公募
・情報発信プラットフォーム検討部会の設立(構築内容の協議・確認)
・「ナトぽた」の構築、愛称募集
・令和6年3月1日リリース
(3)令和6年度から
・運用保守管理をTOPPAN株式会社に委託
・追加・拡張機能の検討(既存の他サービスとの連携の検証等)・実装
※検討にあたっては、委託業者や他サービス業者、他導入自治体との意見交換を随時実施。
・周知・PR活動(広報・地域情報誌への記事掲載、スマホ教室での操作説明等)
※令和7年度は、地域情報誌への定期掲載、改修内容を踏まえたチラシの再作成を実施。
6)ダウンロード数
「ナトぽた」をリリースした令和6年3月は397ダウンロードあり、転入出の時期も重なる春頃は、想定より高い水準でダウンロードされていた。その後、夏から秋にかけて低調だったため、秋以降、スマホ教室や地域情報誌への記事掲載等を行った。
ダウンロードの促進策としては、「ナトぽた」と地域通貨なとりコインの両方をダウンロードした方に、500円分のなとりコインを進呈している。
今年度は、国の重点交付金を活用したなとりコインプレミアムの実施に合わせ、「ナトぽた」の地域マップ表示機能を活用し、なとりコイン加盟店を地図で確認できるようPRしており、4月以降、毎月400から600ダウンロードで推移している。
なお、行政アプリを導入した場合、人口の20%程度がダウンロードすれば成功といわれているため、デジタル田園都市国家構想交付金における設定KPIは、令和6年度は人口の5%、令和7年度は人口の10%に設定している。
7)事業実施による市民の反応
令和7年2月25日から3月31日まで地域DX推進事業に関するアンケートを実施し、「ナトぽた」の認知度に関する設問に対し、「利用している」は72.99%、「知っているが利用していない」は18.98%、「知らないが利用してみたい」は6.81%、「興味がない」は1.22%という結果だった。今後は、興味はあるが利用してないという層への周知が必要と捉えている。
また、同アンケートでのアプリに関する自由記述欄については、好意的な意見として、情報がタイムリーに配信されてくるので便利、見やすいし、自分の興味のある話題だけピックアップして通知がくるのでとても便利、ゴミ回収日カレンダーやなとりコイン加盟店マップなど、わかりやすく重宝しているといった内容が記載されていた。一方、否定的な意見・改善要望として、事務手続きなどがアプリとマイナンバーなどを利用しながら行う必要があるため、アプリで完結できるとよい、通知が多すぎる、静的な情報だけでなく市役所窓口の混雑状況、イベント時の市内道路の混雑状況など、動的(リアルタイム)な情報を提供してほしい、リンクから詳細ページに移動するため、結果的にリンクの寄せ集めとなっているのがもったいない、アプリ内で完結するようにしてほしいといった内容が記載されていた。
8)今後の課題・展望
想定よりも高水準でダウンロード数が伸びているが、引き続き浸透に向けて取り組まなければダウンロード数が伸びない。今後、アプリの利便性向上とダウンロード数増加に向けた取組が必要である。
アプリの利便性向上には、アプリ自体に魅力的で便利な機能の整備が必要であり、県や他の自治体からの情報収集、また意見交換を実施し、行政目線での改善を図るとともに、市民ニーズを把握するため、アプリ利用者からの意見やフィードバックを収集する仕組みづくりが必要と考えている。
また、市民へのアプリ普及と利用率を高めるために、使い方の啓発やトレーニングが必要と考え、令和4年度から主に高齢者向けスマホ教室を実施している。この教室で、アプリのダウンロード方法や利用方法、アプリとは何かという説明を含めて行っている。
さらに、アプリの周知を継続して行うが、なとりコインのインセンティブなど新規ダウンロードや継続的な利用への対策も検討が必要と考えている。
今後、「ナトぽた」を起点とする行政サービスの機能追加・拡張を図りたい。アプリで市民の利便性向上を図ることが第一である。様々なことが、「ナトぽた」で完結できることが理想である。既存のアプリや行政サービスと連携し、できるところから実施していきたい。「ナトぽた」の利用者数が拡大すれば、迅速な情報提供や広報誌発行・配布のコスト削減につながると捉えている。
<質疑応答>
(問)「ナトぽた」の導入経費と維持管理経費は。
(答)導入経費が1,677万円、維持管理費が年間660万円である。
(問)令和6年度までデジタル田園都市国家構想交付金を活用し、今年度は、新しい地方経済・生活環境創生交付金(デジタル実装型)を活用されていると思うが、どの程度、充当されているのか。
(答)当該交付金は事業費の2分の1に充当しており、その他、特別交付税などの措置もあり、事業費の4分の1程度を一般財源で賄っている。令和8年度からの2年間は機能拡張のための財源確保に向け、新しい地方経済・生活環境創生交付金(デジタル実装型)に申請したい。
(問)経費削減に向けて広告を入れるという工夫もあると思うが、実施していない理由は。
(答)導入当初、高齢者の利用を考えたときに詐欺メール等に不安を抱えている方が多かった。広告を入れることにより、「ナトぽた」に対して拒否反応を示す方がいるのではないかと考えた。現在は、市のみの情報が届くということを強みにしているが、今後、利用者の考え方が変われば、そのようなことも考えていきたい。
(問)LINEではなくアプリを導入した理由は。
(答) LINEにも機能拡張の可能性はあると思うが、情報が埋もれて見づらいと考えた。また、他社のアプリはカスタマイズ性がなく、市が求めることができなかった。
(問)アプリをダウンロードするとなれば、データ容量、通信容量が少ないスマートフォンであれば躊躇することも考えられる。「ナトぽた」を選択した理由は。
(答)容量については考えておらず、「ナトぽた」のカスタマイズ性から選択した。また、同アプリは3世代前までのスマートフォンにしか対応していないため、アプリをダウンロードできないとの声もあるが、アプリであることの利便性を優先した。
(問)近隣市における独自アプリ、LINEの導入状況を教えてほしい。その中で、名取市はどのような優位性をとっているのか。
(答)LINEのほうが導入コストや手間がかからないため、他自治体はLINEのほうが多い。仙台市は、マイナンバー連携など今後の目的も考えて独自アプリにしている。名取市もマイナンバー連携を考えていたが、宮城県が独自アプリでマイナンバー連携しているため、「ナトぽた」は情報発信に特化した。
(問)「ナトぽた」と地域通貨なとりコインの両方をダウンロードしたら500コインを進呈するようにして以降、ダウンロード数はどのくらい伸びているのか。
(答)令和6年度は、920件の申請のうち881件のなとりコインの進呈があった。令和7年度は、6月30日時点で759件の申請がある。
(問)「ナトぽた」に搭載する機能を検討するにあたり、事前にどのような調査、情報収集を行ったのか。
(答)市民がDXによって解決してほしいと求めている課題は、各課へのヒアリングを実施してもわからなかったため、職員の情報発信に係る課題をもとに機能検討を進めた。市民の情報収集等は、今後行っていく。
(問)「ナトぽた」にチャット機能が入っていない理由は。
(答)クラシラセルのアプリがAI対応していない。Q&A方式で掲載しているが、シナリオの更新が行われていない。
(問)今後、自治会や町内会から、「ナトぽた」での配信依頼があった場合の対応は検討しているのか。
(答)検討していない。行政からの情報発信であるため、掲載する情報は取捨選択を求められていると考えている。様々な内容を発信するようになると、アプリを削除される懸念もある。町内会の中には、自身でアプリを入れて回覧をしているところもある。
(問)「ナトぽた」のターゲット層は設定されているのか。
(答)現在のところ設定していない。「ナトぽた」がもっと有効利用されるようになれば、ターゲット発信ができるようになっていくと思う。
(問)道路・公園情報(市公式LINE)は双方向になっているのか。登録している全員が閲覧できるのか。
(答)情報を投稿していただき、その内容に対してレスポンスしている。やり取りと言えるところまではしていない。また、実際は個々のやり取りになるため、全員が閲覧できるわけではない。
(問)アプリで混雑情報を出すのは難しいのか。
(答)アプリだけではできないので異なる媒体を利用しなければならず、検討が必要である。
(問)「ナトぽた」の学習用タブレットへの導入状況は。
(答)学校にもチラシ等で周知はしているが、学習用タブレットへのアプリの導入はしていない。
(問)スマホ教室の参加者は何人くらいなのか。
(答)令和4年度から市内の携帯キャリア会社に協力を得て、テーマを設定して開催しているが、そのテーマ内容について知りたいと思って来られる方もいれば、もっと違うことが知りたいと思って来られる方もいた。参加者のスキルが違うため、昨年、試行的にスマホ個別相談窓口を実施したところ、スマホ教室では2~20人程度の参加が、個別相談窓口にすると月20人前後の参加がある。
(問)スマホ個別相談窓口の課題、利用促進策は。
(答)利用促進策として、広報に掲載している。また、実際にデマンド交通の予約をして目的地に行って、なとりコインを使うという体験をしていただくなど、実践型スマホ教室も行っている。
(問)広報誌の発行頻度は。
(答)過去には月2回発行していた時期もあったが、現在は月1回の発行である。
(問)伊丹市では、デジタルを活用した広報に費用をかけておらず、コミュニティFMに費用をかけている。名取市では、今後、広報の手法について、どのように考えているのか。
(答)「ナトぽた」を活用したり、ホームページも閲覧しやすいように工夫している。また、広報誌の発行以外に、コミュニティFMの番組作成も委託している。デジタル化は、構築だけでなく保守にも経費がかかる。
(問)有料イベントの予約・支払は、「ナトぽた」だけでなくホームページでも構わないが、ペイペイ等での支払いは可能なのか。
(答)できていない。
<視察の様子>
◎7月8日 9:50~ 宮城県仙台市
<防災における自助・共助の取組について>
初めに、仙台市議会事務局調査課長より歓迎のあいさつを受けた後、永松委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、仙台市危機管理局防災・減災部減災推進課係長から説明を受け、質疑応答がなされた。最後に、原副委員長よりお礼のあいさつがなされた後、議場見学を行った。
<事業の概要>
(1)仙台市地域防災リーダー(SBL)
仙台市地域防災リーダー(SBL)は、仙台市独自の講習カリキュラムに基づき、平成24年度から養成を開始した。令和7年4月1日時点で、活動中のSBLの数は988名であり、男性が722名(73.1%)、女性が266名(26.9%)である。なお、令和6年度までに合計1,349名を養成したが、うち361名は活動をすでに辞退したため、現在は988名となっている。
SBLの新規養成カリキュラムは2日間、計12時間の講習である。受講の要件は、「居住する町内会等の自主防災組織と連携し、できるだけ長い期間(概ね5年以上)活動できる。」こと、「災害発生の際、率先して活動できる行動力がある。」こと、「自分の連絡先を町内会長や市立学校、他のSBL等に提供することに同意できる。」ことの3項目である。
SBLは各年度で計100名程度を養成しており、そのうち70名程度が各区連合町内会長協議会の推薦である。その他30名程度は一般公募枠で、各区連合町内会長協議会の推薦とは別に応募を受け付けている。なお、昨年度は計130名程度が受講しており、これまで受講者が100名を下回ることはあまりない。このSBL講習の後、仙台市からの貸与品としてヘルメットとビブスを渡している。
SBLには平時と災害時の大きく分けて2つの活動がある。
平時は、町内会長等を補佐し、地域に応じた計画づくりや防災訓練を企画立案するなど、災害予防の中心的役割を担っている。
災害時は、地域住民の避難誘導や避難所運営、救助・救護活動を指揮する役割を担う。仙台市の指定避難所は、地域住民、施設管理者、行政機関、この3者が一体になって運営する。この避難所の運営のために避難所運営委員会を立ち上げており、この委員会に、地域のSBLには積極的に関わっていただいている。
SBLは毎年、バックアップ講習会を年2回受講し、様々な新しい情報を学んでいる。全市バックアップ講習会と各区バックアップ講習会があり、全市バックアップ講習会の目的は、知識・技術の向上、情報交換である一方、各区バックアップ講習会はSBLのほかに、各地区の連合町内会長にも案内しており、SBL間のネットワーク作りや地域との関係構築を主眼に実施している。
SBL活動の普及・啓発として、市ホームページ等の広報媒体でSBLの活動を掲載しているほか、コミュニティーFM4局でSBLラジオも行っている。加えて、SBL通信を年3回発行しており、防災・減災活動に係る情報や、自主防災活動のポイント、SBL活動の紹介など、有用な情報を掲載している。SBL通信は、活動中の約1,000名のSBLや連合町内会長、町内会長に郵送している。
(2)仙台市における防災学習
仙台市では、防災学習として地震・津波・台風等の災害に関する一般知識を備え、緊急時の避難行動に関して、様々な取組を活用し、知識の習得に努めている。
防災学習に取り組む背景として、「気候変動等の影響による災害の激甚化・頻発化」と「大規模災害を経験していない若い世代の増加」がある。取組項目としては、「VR映像視聴による災害体験」、「マイ・タイムラインの作成」、「防災講座・防災パネル展等の開催」、「防災リーフレット、ハザードマップの配布」等、様々な取組を行っている。
(3)せんだい災害VR事業
せんだい災害VR事業は、バーチャルリアリティー(VR)の映像視聴による災害体験を通じた体験型の防災学習である。運用開始は令和4年7月で、地域や各種団体の防災研修会等に専門スタッフを派遣し、仮想現実による疑似体験を用いて各種災害への備えや具体的な対応方法等を学ぶことができる。なお、専門スタッフの派遣は、公益社団法人仙台市防災安全協会へ業務委託をしている。利用会場は、集会所や市民センター、事業所、学校などの屋内である。対象は、概ね10名以上の町内会、事業所、学校などの各種団体である。なお、災害をVRで見るため、未就学児は対象としていない。
VR映像の種類は、地震災害編、内水氾濫編、津波災害編、洪水・土砂災害編の4種類があり、視聴したVR映像の内容に合わせて、災害に対する日頃の備えや、避難行動の重要性など、防災・減災に必要な知識を身に付けられるようになっている。各編の視聴時間は約20分だが、洪水・土砂災害編のみ、マイ・タイムライン作成が含まれるため、約50分の学習時間である。
受講者数は令和4年度、令和5年度を合わせると、1万683人である。昨年度も速報で6,000人弱が受講しているため、既に3年間で1万6千人ほどが受講している。各VR映像の受講の割合は、地震災害編が非常に多く、津波災害編や内水氾濫編が少ないという状況である。利用申込団体等の内訳は、町内会・自主防災組織の受講が一番多く、その他、学校関係の受講も20.8%で2,000人を超えている。
(4)防災・減災アドバイザー
防災・減災アドバイザーには、市民や地域団体等の防災・減災意識の醸成や災害対応力の向上を図るため、防災・減災に関する取組を普及啓発する目的がある。現在、市職員1名を仙台市防災・減災アドバイザーとして任命し、市民への啓発活動に取り組んでいる。
普及啓発の取組として、研修・講習会・講話等における講師等を受けたり、テレビ・ラジオ等を活用した普及啓発、新聞・広報誌等への寄稿等を実施し、年間を通して啓発活動に当たっている。
令和6年度の活動実績としては、研修・講習会を計120回実施し、6,638人が受講した。また、出演・寄稿等は、テレビが5回、ラジオが48回、各種紙面への寄稿が18回であり、1年間に計200回程度の普及啓発活動に取り組んでいる。
(5)マイ・タイムライン作成
マイ・タイムラインとは、大雨・台風災害に備えた家族の避難計画のことで、避難情報の種類などを学んだ上で、「いつ」、「誰が」、「何をするのか」を時系列に記入するものである。マイ・タイムラインを普及させるため、市ホームページに特設のページを開設している。
(6)仙台市総合防災訓練
総合防災訓練の趣旨は、東日本大震災等の地震災害や、台風等による豪雨災害を踏まえ、災害対応力を向上することである。自助・共助・公助の充実とそれぞれの連携を強化し、市民の総合力による防災を目指すものである。
仙台市総合防災訓練は6月の「市民防災の日」に実施されており、シェイクアウト訓練(身体保護訓練)に取り組んでいる。また、防災関係機関連携実動訓練も同日に実施しており、防災を担う各機関とともに、実践的な訓練を通してさらなる連携強化を図ることを目的としている。消防や警察、自衛隊、海上保安庁、あるいは、水道やガス、電気などの様々な機関が集まり、一緒に連携訓練を実施している。
各地区総合防災訓練は9月から11月に実施されている。自主防災訓練や避難所運営訓練などにより、地域の防災力を向上させることを目的としている。
11月には津波避難訓練を実施している。津波の到達予定時刻までに緊急避難するという、命を守ることを最優先とした避難で、消防、警察、海上保安庁や携帯電話会社等による広報訓練も併せて実施されている。
加えて、防災・減災強化月間として6月、9月、11月を定め、様々な訓練に取り組んでいる。特に、避難所運営訓練を全市展開することが重視されており、地域と学校が連携して避難所運営訓練に取り組んでいただいている。
(7)帰宅困難者対策
帰宅困難者対策は3つの柱を設定し実施している。1つ目は「一斉帰宅行動の抑制」、2つ目は「徒歩帰宅者支援」、3つ目は「一時滞在場所の確保」である。
まず、「一斉帰宅行動の抑制」に係る周知・啓発として、市民、企業、学生対象のリーフレットをそれぞれ作成しており、市ホームページで掲載している。また、駅周辺で事業活動を行っている企業には、一斉帰宅しないよう呼び掛けている。
次に、「徒歩帰宅者支援」のため、平成26年8月、災害時における帰宅困難者等の支援に関する協定を、仙台市と宮城県、日本フランチャイズチェーン協会の3者で締結し、災害時に徒歩で帰宅する方に対して、水道水やトイレ、道路情報等を可能な範囲で提供してもらえるようにしている。
次に、「一時滞在場所の確保」として、仙台駅周辺、和泉中央駅周辺、長町駅周辺の事業者と協定を締結し、一時滞在場所を確保している。収容人数は1万1,510人であり、東日本大震災の際、1万1,000人程度が仙台駅周辺で、帰宅困難者になったと推計しているため、現状、同程度の災害が起きても、一時滞在場所として、収容が可能である。
最後に、帰宅困難者に対して、年に1回、様々な場所で訓練を実施している。JR仙台駅では10月末ごろ、帰宅困難者対策として、シェイクアウト訓練や一時滞在場所への移動、一時滞在場所での受付を行ったりしている。
<質疑応答>
(問)SBLの年間の活動頻度について伺う。
(答)バックアップ講習会として2時間を2回と、各地区の防災訓練が年1回か2回であるため、2日程度。加えて、その防災訓練のための打合せが何回かあったとして、年間通せば5日程度と思われる。
(問)SBLは連合町内会長等が担うことが多いのか。
(答)当初は、連合町内会長や、各町内会長がSBLになったりしていたが、今は周知もされ、役員や各町内会のキーマンが担っている。
(問)一般公募への応募はあるか。
(答)一般公募は30名程度の枠だが、50名弱の方が応募することもある。
(問)若い世代のSBLへの参加状況と、今後のSBL活動の推進に向けた取組予定について伺う。
(答)若い世代の養成としては、学生SBLという制度があり、大学生・大学院生に対してSBLになっていただけるよう取り組んでいる。学生SBLは歴史が浅く、令和3年度スタートであることから、まだ50数名しか養成できていない。また、小学校のPTAの方に担っていただけるよう、案内を出したりして、昨年度は5人に担っていただいた。
(問)自治会等に加入していなくてもSBLになれるか。
(答)構わないが、町内会に連絡先を伝えることに納得いただかないと講習を受けられないため、SBLに就任した後は必然的に町内会等と関わっていただくことになる。
(問)無理にSBLになってしまい、辞める人もいるのか。
(答)実情としてはいると考える。
(問)SBLは災害時に指示を出すことが役割ということだが、その役割については、訓練等で周知はなされているのか。
(答)周知できている町内会もあれば、できていない町内会もある。町内会が活発なところは、防災訓練を年1回実施するため、新しい知見が積み重なるし、SBLも積極的に関わるため、指示ができる。一方で、周知できていないところは、そもそも訓練を実施せず、人も集まらないため、周知が進みにくい。
(問)SBLと防災士の役割に差異はあるか。
(答)市として特段、防災士の取組を設けていない。防災士は勉強して資格を所持しているが、訓練等は行っていない。一方、SBLは訓練も含めて現場でどう動くかを2日間かけて覚えて対応しているため、仙台市の避難所の数や独自の避難所の運営のルール等も、その講習会で伝えていることから、災害対応に関してはSBLしかないと考えている。
(問)SBLのモチベーションを保つための取組と、SBLが災害計画等の中でどのように位置づけられているのか伺う。
(答)SBLは地域防災計画に各地域の自主防災組織の長を補佐する立場と明記している、また、モチベーションの維持については、バックアップ講習会の中で連合町内会長とグループミーティングというところで、各地域で情報交換をして、さらに地域に入り込んでいくことができるよう取り組んでいる。
(問)在宅避難については、どのように取り組んでいるのか。
(答)昨年末、在宅避難の新しいリーフレットを作成し、市民、特に、各連合町内会長及び町内会長に対して郵送する段階である。昨年度、避難所の運営に非常に力を入れて取り組んできたが、避難所は、本当は来ないほうが良く、家で生活できない人が行く場所だと認識していただくように取り組む。
(問)外国人への対応はどのように行っているのか。
(答)外国人に対しては、文化観光局や仙台市観光国際交流協会が窓口となり、防災に関する情報などの発信や、事前対策をお願いしている。また、東北大学の災害科学国際研究所からも様々な情報を発信していただいている。一方、実際に災害が起こった後、例えば避難所での受入れに対して、避難所運営訓練の中で外国人への対応訓練は実施しているが、外国人特有の対応は特段ない。
<視察の様子>
以 上
この記事に関するお問い合わせ先
市議会事務局
〒664-8503伊丹市千僧1-1(市役所3階)
電話番号072-783-1344 ファクス072-784-8092
更新日:2025年07月31日