令和7年度兵庫県立はりま姫路総合医療センター

更新日:2025年12月20日

1.視察出張委員

  委員長    鈴木   隆広       副委員長     大津留   求

  委   員     泊      照彦       委       員     竹村   和人

     〃        保田   憲司            〃           鈴木久美子

     〃        花田康次郎            〃           加柴   扶美

     〃        前田伸一郎            〃           原      直輝

2.視 察 先   兵庫県立はりま姫路総合医療センター

3.実 施 日   令和7年11月10日(月曜日)

4.調査事項  下記報告のとおり

◎11月10日 13:30~ 兵庫県立はりま姫路総合医療センター

<高度急性期病院としての現状と課題について>

   初めに、鈴木委員長よりお礼のあいさつがなされた後、兵庫県立はりま姫路総合医療センター病院長より歓迎のあいさつを受けるとともに、説明を受け、質疑応答がなされた。続いて、施設見学を実施した。最後に、大津留副委員長よりお礼のあいさつがなされた。

<説明の概要>

   県立はりま姫路総合医療センターは、県立姫路循環器病センターと社会医療法人製鉄記念広畑病院が再編統合され、2022年5月に640床で開院した。翌年に約100床を追加して736床となり、現在も同規模で運営している。医師数は約300名、看護師数は約1,000名、薬剤師・医療技術職は約250名で、総職員数は派遣・委託を含めて約2,500名となっている。
   西播磨地域医療圏(姫路医療圏)の医師数は人口10万人当たり170人台で、神戸市の290人と比較して少ない。この地域から年間100名以上が医学部に進学するものの、ほとんど地元に戻ってこない状況である。その理由として、若手医師を育成するキャリアプランや教育体制を持つ病院が少ないことが挙げられる。若手医師の育成には優秀なベテラン指導医が必要だが、そうした指導医は大学病院に集中してしまうため、指導医にとって魅力的な臨床研究支援体制の整備が重要である。
(1)統合の背景
   姫路循環器病センターは330床で、病床稼働率は70パーセント程度、夏になると60パーセント程度と低くなっていた。複数疾患を持つ患者への対応など、専門病院としての運営の困難さを抱えており、建物も古くなっていた。一方、製鉄記念広畑病院は392床、病床稼働率は80%と、民間病院としては低い状況であった。また、新病棟建設に伴う借入金問題により経営が悪化し、医師数が減少していた。これら2病院を統合して新病院が設立され、精神科病床も追加された。これにより、全診療科をカバーし、精神疾患を持つ患者の外科的治療なども対応可能となった。
   2つの病院を統合するメリットとして、医師数の不足解消、専門的な医療の実施、救急医療への対応力の強化、夜間・休日の勤務体制の強化、医療機器の集約化・効率的運用、消耗品や薬剤の大量購入によるコスト削減、診療圏域外への患者の流出防止などが挙げられ、これらにより病院の機能を高め、医療供給体制を強化するとともに、病院経営を改善することを目的とした。

(2)統合に向けての課題と対策
   病院統合時の課題として、両病院の職員が統合の必要性を感じていなかったこと、周辺の医療機関や医師会が病院建設に反対していたこと、両病院間の調整関係がなかったこと、医師や看護師・医療技術職の確保のめどが立っていなかったことなどがあり、批判が沢山あった。その対策として、内外に対し、「救命救急医療の提供」「高度専門医療の提供」「医療人材の育成」「臨床研究の実施」という4つのメッセージに絞り込み、病院の役割の明確化を行った。また、地域医療連携推進法人を設立し、周辺の医師会や病院の関係者に参加してもらうことで情報共有を図った。 
   また、周辺医療機関との関係を改善するための戦略として、「何をしないか」を明確にすることが重要であった。具体的には、維持透析、検診・人間ドック事業、地域包括ケア、かかりつけ医機能、全般的な一次救急、在宅医療支援をすべて停止し、周辺の病院に協力を依頼した。これにより、地域包括ケアシステムの中で、高度急性期医療を担う病院としての役割を明確にした。

(3)開院にあたり解決すべき問題点
●人材確保と育成
   専門診療科については神戸大学から派遣をしていただけることになり、約5年間かけて神戸大学の全診療科を訪問し、話合いを重ねた。現在、話合いをした形に近い人材が派遣されている。1つの大学から全ての人材を派遣していただくことは難しく、救命救急と総合診療は、既存の両病院で専門医養成基幹プログラムを立ち上げ、現在も全国から希望者を集めて教育している状況である。事務職員、看護師は既存病院から新病院にできるだけ多く来ていただけるよう様々調整を行った。人材は継続性を持たせるためにも、「確保」というより「養成」することが重要である。
●経営企画室の設置、連携医療機関の確保、広報の重要性
   経営企画室は病院運営に不可欠で、MBAのような専門知識を持つスタッフが必要である。神戸大学の医療経営に特化した講習に職員を派遣し、病院経営について学ばせた。地域連携部門も重要で、医師の応援や研修を通じて、連携医療機関の職員との交流を図り、連携医療機関の確保に努めた。広報においては専門職員を配置し、開院前から一般市民に向けた広報や、医療機関に向けた広報を行った。特に院内職員向けの「インナーブランディング」が病院の方向性を共有する上で不可欠であった。
●消防との信頼関係の構築
   当院でも入院患者の約半分は救急入院である。そのため消防との信頼関係の構築が大切であり、消防との間で沢山のホットラインを作った。救急救命士実習への協力、指導救命士の常時配置などを行っている。
●医療安全の強化
   大型病院ではリスクの高い治療を行うため、医療安全上の問題が起こりやすく、システムによる自動化が重要である。当院もAI問診システムの導入やAIレントゲン、内視鏡画像診断、AI検査データ解析などを実施している。病床管理では、ベッドコントロールコンパスというシステムを導入し、過去の状態と今後1週間の入院患者予測数を表示して、効率的な病床運用を行っている。このシステムは経営企画部門が作成したものであり、1日4回更新され、病床の空き状況に応じて入院調整を行っている。
●診療経費に関する意識の低さ
   公的な病院は何か困ったことがあれば、コンサルタントや委託業者に頼ってしまうことが多い。病院への受診患者を増やし、入院患者を増やせばOKという時代はとうの昔に終わっており、病院経営は精密になっている。疾患1つ1つの診療内容を解析・吟味して、クリニカルパスなどを利用し、精緻に診療内容をコントロールする必要がある。他病院と比較して検査や薬剤の使用状況、入院期間などを詳細に分析している。DPC包括医療では、疾患ごとに支払額が固定されるため、検査や薬剤の使用を最適化することが収益向上につながる。こうした分析を300疾患以上について経営企画室が行っている。
※DPC…診断群分類と呼ばれる入院患者を分類する手法の1つ。病名、症状、手術などの診療行為の有無に基づいて、厚生労働省が定めた1日あたりの定額点数からなる包括評価と出来高評価を組み合わせて診療費を計算する方式のこと。

(4)急性期強化・集約型病院「はり姫」のミッション
●救命救急医療と高度専門医療
   救命救急医療では、月700?800台の救急車を受け入れている。周辺医療機関からの救急患者を含めると月2,000件程度を受け入れており、姫路市の救急受入件数では最多である。特に重症度の高い患者が多く、全体の応需率は90%程度である。高度専門医療では、33診療科22センターが活動し、循環器疾患、脳血管疾患、外傷、骨折、各種のがん、難病などに対応している。外来患者数は増加傾向で、初診患者は1日200人を超え、待ち時間の短縮に努めている。また、休日のリハビリ、栄養指導、薬剤指導、MRI検査なども実施しており、病床稼働率は90%以上を維持し、月700?800件の手術を行っている。
●医療人材育成と臨床研究
   現在、医師数は約300名で全国平均レベルに達している。研修医の募集倍率は5倍程度で、第1希望で応募する研修医は兵庫県内で2番目に多くなっている。専門医育成プログラムも充実させ、総合医や救急医としての基本的能力に加えて、特殊な能力である心臓カテーテル検査や内視鏡治療などを教えるプログラムも開始している。臨床研究については、研究支援専門員を神戸大学と共同で育成するプログラムを開始し、臨床研究支援専門職の養成講座を実施している。

(5)働き方改革と病院経営
   医師事務作業補助者90名、特定看護師の養成、AIやDXの活用などを進めているが、労働時間の短縮には至っていない。兵庫県内で16病院がB水準という、残業時間を長くできる特例措置の指定を受けているが、約9年後にはこの措置がなくなるため、対応が課題となっている。医師の現状への不満が転職サポート需要を生んでいる。やりがいのある仕事や個人の成長戦略の提案、支え合うグループ診療の醸成が重要である。
   現在、国立大学附属病院の多くが赤字経営で、2024年度は285億円の赤字、2025年度は330億円以上の赤字が予想されている。公立大学附属病院は8病院中7病院が赤字、私立大学附属病院は31病院中20病院が赤字、自治体病院は86%の病院が赤字経営となっており、過去最悪の状況である。
   高度急性期医療を担う大病院は現状多いと国は判断しており、保険点数が厳しく設定されている。年間約2億円の減額査定、保険点数の長期にわたる据置きのほか、医療材料や人件費、物価の上昇などが経営悪化の要因である。当院は2016年に計画された300億円の収益に対し、現在は330億円の経費がかかる状況である。2023年度は19億円の赤字だったが、2025年度上半期は約9000万円の赤字まで圧縮されている。年末の人事院勧告による人件費増が数億円見込まれており、一桁台の赤字に抑えることが目標である。

<質疑応答>
(問)開院時は640床で、現在は736床となっているが、その背景は。
(答)病院を統合するときに、ほとんどの病院は病床数を少なくしていたが、はりま姫路総合医療センターは当初、両方の病院の病床数を超える病床数を設計していた。しかし、736病床もおそらく使わないということと、急に病床数を増やすと他の病院の患者を吸引することになるため良くないとの判断から、640床で開院することに至った。
   また、病院の機能が高くなると多くの看護師等、医療技術職の方が必要となる。その場合には、他の病院に新人の看護師を多めに配置し、ある程度トレーニングした看護師に新病院に来ていただく体制をとるが、それでも640床に対応する看護師を配置するのが当初は限界という判断だった。病床の稼働状況や外来患者数を見ながら、病床数を1年後もしくは2年後に増やす計画をしていたが、1年で病床数を増やすことが必要になったため、そのまま1年後に736床にしたという経緯である。

(問)統合する両病院で歴史的な背景などが違う中で、どのようなスケジュールや内容で調整したのか。またそれは順調に進んだか。
(答)進めやすかったのは医師グループである。医師グループは色々な病院を人事異動で動いているため、あまり違和感はなかった。最も早くから準備をして、育成を一緒に行っていたのは看護師のグループである。これは数年間かけて、それぞれの病院の看護師の育成を一緒に行っていた。一番調整が難しかったのは、人数が少ない事務系グループである。事務系の方が使用する県のシステムと民間病院のシステムとは大分違っていたため、最初は様々混乱もあったと聞いている。現在はそれぞれのシステムに慣れ、落ち着いた状態にある。

(問)新病院開院にあたり、交通アクセスの工夫はあったか。
(答)駅と病院間でシャトルバスを動かしたいという思いがあったが、神姫バスの路線と重なっており、民業圧迫となるため難しいと県からは聞いている。

(問)県内に医療機関がいくつもある中で、連携体制や取組は。
(答)県立病院13病院と1診療所があるが、毎月それら病院長が集まって病院長会議をしており、それ以外にも多くの会議が行われているため、連携は取れている。さらに、現在は病院の稼働状況や運営状況がデータベースの中に入っており、幹部職員であればいつでも、どこの病院の分でも見ることができる。それらを参考にしつつ、良いところを自院にも取り入れている。

(問)県の一般会計からの繰り出しについて、どのような要望をしているのか。
(答)県立直営10病院の分だが、全部で150億円程度頂いている。基本的には、総務省で作られた計算式に基づき頂いている。それ以外のものは頂いておらず、もう少し欲しいとずっと言っているところである。

(問)色々な合併症がある場合などは、クリニカルパスの作成が難しいこともあるが、クリニカルパスは委員会を作り、毎年見直しをしながら進めているのか。
(答)仰るとおり。クリニカルパスを作成するほぼ専従の方もいる。現在、はりま姫路総合医療センターのクリニカルパスの利用率は約60パーセントとなっている。予定入院の方だともっと高くなり、緊急入院の場合はもっと下がる。クリニカルパスにおいて、以前までは、同じような医療を多くの方に間違いなく提供するという「医療安全」が重視されていたが、最近はこの医療安全に加えて、「医療経営」の観点が含まれている。そこで使用される検査、検査の回数、種類、薬剤など、そういったものが全部クリニカルパスに記載されて、できるだけ原価割れしないように色々な配慮がなされている。2年に1回、医療保険の改定があれば、基本的にクリニカルパスは何らかの見直しをする。ただ、対象が何百もあるため、2年に1回タイムリーに見直すことはなかなか難しいというのが現状である。

(問)看護師の離職率は。看護師の交代勤務は、2交代制、3交代制など本人の希望で選べるのか。また、職員の宿舎は病院の近くにあるか。
(答)日本全体の看護師の離職率は10パーセントを少し超えていたと思うが、県の看護師の離職率はその半分程度となっている。交代勤務は基本的に3交代制だが、希望すれば2交代制も選択できる。研修医や先生は、病院の近くにマンションを借り上げており、看護師も場所は違うが専用のビルが一棟作られている。

(問)院内に保育所はあるか。
(答)建物の1階に、定員50名の保育所を作っており、夜間保育や病児病後児保育も行っている。年間約数千万円の費用がかかっている。

(問)どうしても出身大学のグループがあると思うが、今後は大学の壁を越えて、医師の方々に来ていただくことも考えているか。
(答)微妙な問題をたくさん含んでいる。それぞれ手技が微妙に違っていたり、使用する道具が違っていたりするため、異なるグループを統合することはなかなか難しいことである。ある病院では、医師が一気にいなくなるということも起きており、グループのよく事情を知っている方が調整に入って、注意して進めなければならない。一方で、救急救命医療や総合診療というのはかなり新しい部門であり、それらを担う人材は病院で育成されているグループのほうが多い。大学にあまりこだわることがなく、色々な病院で勤務されている。

(問)県の経営対策委員会の中で、病床の稼働が低迷している3病院(加古川医療センター、淡路医療センター、がんセンター)の一時休止が決まっているが、その影響はあるか。
(答)影響はほとんどない。

(問)たつの市にある県立粒子線医療センターとの連携、患者の紹介などはあるのか。
(答)紹介などはほとんどなく、当院でIMRTという特別な放射線治療により何とか対応できている。粒子線医療センターで粒子線を当てやすくするための前準備として、手術的操作をするために、はりま姫路総合医療センターに2、3日入院される患者はたくさんいる。

<視察の様子>
兵庫県立はりま姫路総合医療センター写真1枚目

兵庫県立はりま姫路総合医療センター写真2枚目

以 上

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