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第2章 あらゆる場における人権教育・啓発の推進

更新日 2007年11月05日

すべての人々の人権が尊重される社会の実現は人類共通の願いである。

そのためには、学校、家庭、地域、職場等あらゆる場において、市民一人ひとりが自らのライフスタイルに合わせた人権教育・啓発を推進することにより、人権尊重の精神を高め、確かな人権感覚を確立していかなければならない。また、人権教育をより効果的に推進するために、今後とも学習機会の一層の充実、指導方法や学習教材の開発・提供、指導者の養成・確保等を図っていく必要がある。

1学校等

(1)現状と課題

学校における人権教育は、人格の形成に大きな影響を与えるとともに人権尊重のための教育の中心的役割を担うものである。

わが国においては、「日本国憲法」、「教育基本法」、「国際人権規約」及び「児童の権利に関する条約」等の精神にのっとり、基本的人権を尊重する学校教育を推進してきた。また、平成8(1996)年には、第15期中央教育審議会の答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」において、子どもたちの「生きる力」の育成を目指す教育を幅広く展開することが求められた。これは、子どもたち一人ひとりに自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる力を養うことが必要だという認識に基づいており、このことは人権教育を推進していく上でも重要な視点である。

近年、国際化、情報化、科学技術の進展、環境問題への関心の高まり、少子高齢化など社会の急激な変化、地域社会における連帯意識の希薄化など、子どもを取り巻く社会的・教育的環境は大きく変化しており、自然体験や生活体験の不足、いのちの重みに対する感受性の乏しさや人間関係の貧しさ、規範意識の低下などを背景にして、いじめや不登校をはじめとするさまざまな人権に関わる問題も生じている。

すべての人の人権を尊重し、あらゆる差別の解消を目指す人間としての成長を可能にするためには、いのちと人権の尊重を基盤とした心の教育を一層充実していくことが大切である。

本市においては、基本的人権を尊重する教育の推進が、一定の成果をあげてきたものの、他方では依然として差別落書きや差別発言などの差別事象が発生しているとともに、児童生徒の問題行動やいじめ、不登校などの問題が存在している。

学校においては、社会の変化に的確に対応し、自ら考え、主体的に行動できる子どもを育成するとともに、子どもたち一人ひとりが人権問題を正しく理解し、互いに認め合い、ともに生きていくことの大切さを認識できるよう、各教科や道徳、総合的な学習など全教育活動を通して人権教育を推進する必要がある。

また、教職員自身が人権問題についての正しい認識をもつとともにさまざまな現代的課題について理解を深め、指導力の向上を図る必要がある。さらに、教職員自身の人権感覚を磨くことにより、人権を尊重した学習環境を整備する必要がある。そのために人権教育に関する教職員研修は重要な意味をもっている。

(2)今後の取り組み

学校教育においては、子どもを権利の主体として尊重し、発達段階に応じた人権教育の推進を通して、自尊感情を培うとともに、生命や人権を尊重する心、他人を思いやる心など豊かな人間性を育てる必要がある。

幼稚園、保育所においては、「幼稚園教育要領」や「保育所保育指針」にのっとり、幼児期が人間形成の基礎となる大切な時期であることを踏まえ、身近な動植物に親しみ、生命の大切さに気づかせ、豊かな心情を育てるなど、人権尊重の精神や感性が育まれるよう努める。

小学校、中学校及び高等学校においては、「伊丹市同和教育基本方針」及び県教育委員会が策定した「人権教育基本方針」にのっとり、児童生徒の発達段階に応じて、各教科をはじめ、道徳の時間や、総合的な学習の時間など全教育活動を通じて、人権問題を正しく理解し、自他の人格を尊重し、互いの個性を認め合う心や豊かな人間性が培われるよう努める。とくに、人権教育を「人権としての教育」「人権についての教育」「人権を尊重した生き方のための資質や技能を育成する教育」「学習者の人権を大切にした教育」という4つの側面(*2)から捉えることにより、総合的・体系的な人権教育を積極的に推進し、「人権教育学校」を目指した取り組みを進めることが大切である。

児童生徒自らが人権に関わる問題について主体的に学ぶことができるように、カリキュラムや教材の開発・整備に取り組む必要がある。また、家庭や地域との連携を一層深め、外国人や高齢者、障害者、同和地区住民等との出会いや交流を図ることが大切である。さらに、ボランティア活動などの体験的な学習や男女共生の視点にたった教育の推進を行うとともに、これらの学習を系統的に展開できるよう身近な教材や資料の開発・整備に努める。

いじめや不登校の問題については、児童生徒一人ひとりの豊かな人間性を育成するとともに、教師自らが日常的に子どもの内面を理解するよう努める。また、学校園・保育所が家庭や地域と一体となって子どもを育てる教育環境を醸成するため、より一層の連携に努める。

人権教育の推進にあたっては、教職員自身の人権感覚・意識が大きく影響するので、教職員の意欲と関心を高め、指導者としての資質の向上を図るため、課題別・職務別研修会などを計画的・継続的に推進する。

2家庭・地域

(1)現状と課題

人権教育は、一人ひとりが人権問題について深い理解と認識をもち、人権感覚を高揚させ、自他の人権を尊重する態度を培い、行動に結びつけることにより、人権という普遍的文化を構築することを目的としている。生涯学習分野における人権教育の推進は、日常生活の隅々にまで人権意識を浸透させ、豊かな人権文化を備えたまちづくりを実現するためにも、大きな役割を担うものである。

家庭教育は、他人への思いやりや善悪の判断など、幼児期からの子どもの基本的倫理観を育む上で重要な役割を担っている。また、家庭における子どもの教育は、温かい家族関係のもとで、親子の絆を深め、親等が自ら模範を示していく中で進めることが大切である。少子化や核家族化の進展などにより家庭の教育力の低下が指摘されているが、本市では、親自身の差別的な意識や言動が子どもの人権感覚の形成に大きな影響力をもつという認識にたって、子育て相談や子育て冊子の発行など、子育てを支援する取り組みを行ってきた。今後、さらに家庭教育への支援を強化することが必要である。

私たちの地域社会においては、依然として偏見や家意識、ケガレ意識などが残っており、人間関係を阻害し、差別、排除、隔離などの人権侵害をつくり出す要因になっている。これらの要因を取り除くためには、地域における人権教育の推進が大切である。

公民館、生涯学習センター、総合教育センター等においては、人権・同和、平和、環境、国際理解等各種の課題について、その時々の社会背景、時代要請を考慮しながら、それらの学習ニーズに対応した各種の講座の開催や事業を実施するなど、市民啓発に努めてきた。とくに、人権・同和問題については、部落差別をはじめとする一切の差別の解消を目指し、共同会館や解放児童館における教育・啓発事業の実施、「伊同教」における研究大会の開催や伊丹市同和教育指導員による研修会の実施、伊丹市人権啓発推進委員による地域別人権啓発講座や啓発映画の実施等、広く市民に学習の場と機会を提供するための積極的な取り組みを行ってきた。

しかし、これらの取り組みは、知識伝達型の講義形式をとることが多く、参加者も固定しがちで広がりが見られないという問題も抱えてきた。今後、市民に対して魅力的な学習機会を提供していくことが、人権教育を幅広く展開するための課題である。

(2)今後の取り組み

家庭・地域における人権教育を推進するためには、生涯学習の振興をはじめ、各種の施策を通じて人権に関する学習を一層推進していくことが大切であり、幼児から高齢者に至る幅広い層を対象に、生涯にわたって、それぞれのライフスタイルに対応した人権に関する多様な学習機会の充実を図る必要がある。

家庭における推進については、家庭は教育の原点といわれるように幼児期から豊かな情操や思いやり、善悪の判断など、人間形成の基礎を育む上で家庭の果たす役割は極めて重要である。このため、家庭の教育力の向上を図るとともに、親自身が偏見をもたず差別をしないことなどを、日常生活において自らの姿をもって子どもに示していくことが必要であり、子育て学習など親の学習機会の充実を図る。

地域における推進については、地域の教育力が重視されている現在、共同会館や解放児童館等の役割がますます重要となってきている。今後も、人権の拠点施設として部落差別をはじめ、あらゆる差別の解消に向け、さまざまな取り組みを展開していく。また、各小学校区において人権問題の啓発推進に携わる人権啓発推進委員の一層の資質向上なども積極的に取り組む必要がある。

学習プログラムの開発については、従来の講義形式中心の知識伝達型の学習方法に加え、参加者の意欲を喚起し、主体的に学ぶことができる参加体験型の学習方法等の導入を図り、知識の普及に努めるだけでなく、自分の身近な問題であることに気づき、共感をもつことによって、自他の人権を尊重する態度を身につけ、それを行動に移すことができるよう努める。また、直接人権問題に関する学習を推進するだけでなく、「人権教育学校」を目指すためには、地域の事業所、各種団体、NGO(*3)、個人などをはじめとするさまざまな地域教育資源を活用することが大切である。その意味では、「トライやるウィーク」(*4)などの地域と学校が連携した取り組みを積極的に推進することで、開かれた学校づくりを進めることも重要である。

指導者の養成については、人権教育を広く市民に広げていくために、学習リーダーの養成が急務である。現在、人権・同和教育における研修会は、同和教育指導員を中心に実施しているが、質・量ともに不足している現状であり、教員をはじめとするさまざまな分野で活動している人材の活用を図るとともに、参加体験型学習を推進するためのファシリテーター(*5)の養成に努める。

人権問題に関する市民の多方面にわたる学習活動を支援するにあたっては、講座などの開設状況、教材や資料、講師や指導者など、市民の人権学習の参考となるさまざまな情報収集に努めるとともに、これらの情報を広報紙やインターネット等を活用して市民に提供するよう努める。また、市民の多様な学習相談に対応できるような相談体制の充実を図る。

3職場(企業等)

(1)現状と課題

本市におけるあらゆる施策を人権尊重の精神を基礎として展開するためには、施策の推進者としての市職員が、鋭い人権感覚と人権問題に対する正しい理解・認識をもつよう努めなければならない。

現在、市職員に対する人権・同和研修は、新規採用時も含む階層別研修を実施し、その他にも、講演会や派遣研修を実施している。その結果、平成12(2000)年度においては、延べ数にして約4割の職員が研修に参加し、人権・同和問題について認識を深め、考える機会をもっている。

今後、職員研修については、生活体験や生活感覚に根ざし、参加者が主体的に学ぶことのできる参加体験型研修手法の開発や市民とともに考える共同研修など、新たな手法を活用した研修の実施に取り組む必要がある。また、すべての職員が、人権尊重の理念について理解を深め、常に人権尊重の視点から自ら担当する業務等を見直していく必要がある。

企業等においては、経営者・従業員双方の人権意識を高め、一人ひとりの人権が尊重される職場づくりを目指す必要があり、企業全体としての取り組みが強く求められている。

本市においては、「伊同教」を通じてさまざまな学習活動や研修会への積極的な参加を促してきた。また、本市の同和教育指導員の派遣を通じて、人権問題についての今日的課題の把握や採用時における面接など、企業としての認識を深めるための研修会を行ってきた。

しかし、いまだにすべての企業が人権問題に対して積極的に取り組んでいる状況ではなく、「調査報告書」にみられるように一部の企業のみの取り組みにとどまっている面もある。多様な人たちで構成される企業等の事業所では、出身地や国籍による不公正な採用や男女間の賃金格差、配置・昇進の格差、さらには職場での悪質ないじめ、セクシュアル・ハラスメント(*6)など、性や出身地、国籍、年齢、障害の有無等による人権問題が起こることが懸念される。また、女性や障害者等が能力を十分に発揮できる職場環境の整備についても十分であるといえない。

(2)今後の取り組み

すべての市職員が行政の責務を自覚し、人権尊重の視点にたって自らの職務を行えるよう、総合行政としてあらゆる職場で人権教育の推進に取り組む。そのために、同和問題をはじめさまざまな人権問題への理解を深めるとともに、「人権という普遍的文化」を創造していくという国際的・今日的課題についての認識を深めるための研修を積極的に実施するよう努める。また、職員一人ひとりが人権問題を自ら学ぶ姿勢をもつための動機づけを重視し、参加体験型の研修など研修内容・方法について継続的に研究・開発を進める。

また、直接市民に接する業務や人権問題に関わりのある業務を所掌する部局をはじめ、すべての部局において、施策、事業毎の人権尊重の視点にたった取り組み課題の整理とその周知のための職場での啓発・研修の充実に努める。

企業等においては、人権問題の解消を図り、人権が尊重される職場づくりを進め、人権尊重の理念に基づく企業活動を進めるために、積極的に従業員等の研修に努めることが大切である。さらに、地域における社会貢献活動の推進という視点から、積極的な人権啓発活動への参加、障害者等の就業体験の受け入れなどに取り組むことが期待される。

また、公正な採用や職員配置、企業活動等、人権に関わる課題についての研修会の実施や地域における実践活動等の自主的な取り組みを促す。そのために、伊丹市同和教育指導員の派遣や啓発資料配布をはじめ、情報の提供など主体的な学習を推進するための支援を行う。

お問い合わせ先  
  • 部署名:教育委員会事務局人権教育室
  • 住所:〒664-8503 伊丹市千僧1-1 (市役所1階)
  • 電話:072-784-8113 ファックス:072-780-3519