令和元年度神奈川県横須賀市・東京都練馬区

更新日:2021年03月31日

1.視察出張委員
 委員長      戸田 龍起        委員         竹村 和人
 委員       佐竹 璃保         〃       北原 速男
  〃     小西 彦治         〃       吉井 健二
  〃     佐藤 良憲                     

2.視 察 先 神奈川県横須賀市・東京都練馬区
3.実 施 日 令和元年8月7日(水)~8日(木)
4.調査事項 下記報告のとおり


◎8月7日 14:00~ 神奈川県横須賀市

<空き家対策について>

 初めに、横須賀市議会事務局長より歓迎のあいさつを受けた後、戸田委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、横須賀市都市部 まちなみ景観課 課長補佐から説明がなされた後、質疑応答がなされた。

<横須賀市の空き家状況>
 総務省の統計局の住宅・土地統計調査では、横須賀市の総住宅数は196,300である。そのうち空き家総数は28,830となっており、空き家率は14.7%である。
 空き家総数の中には、別荘などの二次的住宅、賃貸住宅、現在使用されていない国の官舎等が含まれている。実際、市民や地域から通報される空き家の多くは所有者不明で人が住んでいない戸建て住宅であるため、実態とは乖離している。
 国と県の空き家率と比較した場合、総住宅の空き家率は国平均・県平均を上回っており、戸建て住宅の空き家率は国平均と同じくらいである。
 空き家総数28,830の内訳としては、戸建て住宅が10,130戸、長屋・共同住宅等の空き家が18,700戸となっており、過半数は長屋・共同住宅等である。
 戸建て住宅の空き家のうち約7割は、売却にも賃貸にも出されておらず、大半が腐朽・破損があり、管理が行き届いていない。
 市内の空き家戸数・空き家率も近年右肩上がりの傾向となっており、平成30年度は過去最高となっており、全国的に増加している。

<空き家等の適正管理に関する条例>
 平成24年6月に議員立法により横須賀市空き家等の適正管理に関する条例が制定され、10月に施行された。
 平成28年6月には空家等対策の推進に関する特別措置法に伴い、一部改正された。
 条例では、空家法では対象としていない「区分所有長屋建ての建物の空き区画」を空き家等に含めて対象とし、市民等が空き家等の情報について市へ通報することや緊急時に職員が空き家等の敷地内へ立ち入り、必要最小限の措置を行うことができるよう「軽微な措置」について規定し、窓・門扉の閉鎖や、市道の通行に支障のある枝葉の伐採などを行っている。

<空家等対策計画>
 従来、行ってきた空き家等対策を一層推進していくために策定したものである。
 計画期間は2018年度から2021年度、対象とする地域は市内全域である。
 空き家等対策に関する課題としては、所有者等の管理不全の空き家等に起因する課題、「そこに人が住まないこと」に起因する課題に区分している。
 対策計画ができた背景としては、対策計画を策定することが国からの特定財源を確保するための要件にもなっており、財源確保の損失を防ぐために、早急に策定した。

<適正管理に関する取り組み>
 空き家等のまちなみ景観への通報件数は近年増加しており、平成30年は110件で過去最高であった。通報により職員が現地へ行き、空き家等の適正管理の支援を行っている。
 現在、適正管理支援は担当係長が兼務で2名、担当職員が兼務で2名、非常勤専属職員の1名で行っており、概ね200棟程度の空き家に関して、常時、職員が回って所有者に適正管理に向けた助言や指導を行っている。通報があった際には、空き家の位置情報を統合GISシステムで地図上に表示し、関係各課で閲覧可能し、関係課で空き家等の位置情報を共有している。
 また、空き家等の除却と跡地の活用促進として、空き家解体費用補助金と旧耐震空き家解体補助金を運用しており、平成30年度は各々8件の申請実績があった。

<活用促進に関する取り組み>
 平成28年度に、多岐にわたる空き家の相談を市民からワンストップで受ける窓口として空き家所有者の相談窓口が設置された。窓口での相談件数は、平成30年度22件、今年度は現時点で7件あり、内容としては、不動産価値の低い空き家や相続問題による空き家などの相談が多い。
 また、市主催で空き家所有者・管理者向け相談会を年3回開催し、不動産業者や司法書士などの専門家から直接アドバイスを受けることができ、今年度は7月に1回目の相談会を行い、相談者は12人で定員を超える結果であった。
 さらに、売れない空き家を流通させる目的で空き家バンクを運営しており、中でも丘陵地が浸食されて形成された地形である谷戸地域においては、階段40段以上の場所にある一戸建てまたは長屋建ての中古住宅および空き地を対象に行っている。これまでの成約件数は令和元年5月15日現在で32件である。空き家バンクの課題としては、空き家所有者は高齢者や遠方に在住する相続人などが多く、バンクへの問い合わせや内見、条件や金額の交渉、契約書の作成や契約締結の対応などをすべて所有者自身が行うことは現実的に困難である。
加えて、空き家の利活用と子育て世帯の定住促進を目的とした最大で50万円の子育てファミリー等応援住宅バンク補助金制度の運用を行っており、今年度は、現時点で4件の実績があった。
 また、谷戸地域で空き家や空き店舗を活用した場合に補助金を受けることができる谷戸地域コミュニティ再生提案事業にも取り組んでおり、補助額は空き家活用に向けて行った改修費用に対して最大で100万円とし、補助率は要した費用の3/4となっている。

<発生抑止に関する取り組み>
 空き家所有者・管理者向け相談会の前に、戸建ての住宅団地の町内会や自治会と連携して、地域内の空き家等実態調査をし、所有者等に相談会の案内や家屋の利用状況や活用意向に関するアンケートをダイレクトメールしている。送付件数としては、平成28年度以降から令和元年7月までに28自治会等と連携し、約349人の空き家所有者に送付した。
ダイレクトメールについては、所有者等からの連絡がない限り送り続けており、2、3年後に関係者が相談会に来られることがあった。
 転入促進と相続空き家発生防止を目的に、市内の戸建て住宅に住む親世代が市外から転入する子ども家族と同居する際に必要となるリフォーム費用に対して補助する2世帯住宅リフォーム補助金制度の運用を行っており、最大で30万円とし、補助率は要した費用の1/2となっている。実績として平成30年度は5件であった。
 空き家対策の基本姿勢は、「市民の安全・安心と住環境を守る」ことであり、地道に対症療法に取り組んでいかなければならない。空き家の利活用のためには、市場に出ていない空き家を市場に流通させ、不動産業者等の事業者と連携しながら中古住宅の流通を促進していくことが重要である。

<質疑応答>
(問)谷戸地域コミュニティ再生提案事業は、いつ頃から開始されている事業なのか。
(答)事業として開始されたのは、平成30年度からである。
(問)1年間を通してどのくらい応募があったのか。
(答)平成30年度は実績ゼロであった。初期費用の段階での補助であるため、その後のランニングコスト問題などがあり、なかなか売り込みが難しい。現在、募集期間中であり、今年度の実績は把握していない。
(問)補助金額の率を決めている理由は。
(答)補助率を決めていることについては明確な回答はできないが、おそらく財政との予算措置の中で、最終的に個人の資産になるため満額を補助するのではなく、一定の負担をかけるということで補助率を決めたのではないか。
(問)谷戸地域に特化して事業等を行っているのはなぜか。
(答)谷戸地域には、住宅が多く、また高齢者が多いため、従来は特化して補助事業等を行っていたが、現在は、谷戸地域限定の補助事業はなくなり、市全域で同様の補助金事業を行っている。
(問)空き家の敷地内の木が道路上に出て、通行の妨げになる場合は、対応などはしているのか。
(答)市道が空き家からの木などにより、通行上支障がある場合は、市の土木部で最低限の伐採作業を行っている。
(問)貴市の山間の地域について、ケーブルカーを導入するといった開発はなかったが、開発する上で規制などがあったのか。
(答)山間の地域は戦後から多くの住宅があり、それらを解体しない限り開発ができなかった。現在は、山の上を切り開いて開発を進めている地域もある。
(問)所有者不明で放置されている空き地については何か対策はしているのか
(答)空き地になると雑草問題が関係するため、市の環境部が担当になる。空き地については、空き家と異なり特別措置法等の条例がないため、市で指導要領を作成して対策を行っている。


◎8月8日 09:30~ 東京都練馬区

<無電柱化推進事業について>

 初めに、練馬区議会事務局長より歓迎のあいさつを受けた後、戸田委員長よりお礼のあいさつがなされた。続いて、練馬区土木部 計画課長、計画課地中化係長から説明がなされた後、質疑応答がなされた。

<事業の背景>
 災害時に電柱の倒壊により避難、救急活動や物資輸送の妨げになることを防止し、災害に強い安全なまちづくりを目指すために、無電柱化の推進事業を始めた。
 推進に向けて、平成28年5月に「練馬区無電柱化基本方針」を策定し、区道の無電柱化を総合的・計画的に推進するために「練馬区無電柱化推進計画」を平成30年3月策定した。平成37年(2025年)度までの8か年を計画期間としている。
<事業の現状>
 現在、練馬区の無電柱化推進事業は、地中化推進係班3名で取り組んでいる。無電柱化については、幅員の広い国道や都道では進んでいるが、幅員の狭い区道では進んでいない。
平成12年度から都市計画道路や生活幹線道路の整備や駅周辺のまちづくりにあわせて電線共同溝方式により無電柱化を進めてきたが、社会情勢の変化や国の無電柱化推進に関する法律の制定もあり、平成27年から推進事業を強化してきた。
平成29年12月現在、区道の無電柱化実績は約13kmで、その中には電線管理者単独で行った地中化等を含んでおり、区が整備したものは約2.1kmとなっている。
 区道において無電柱化が遅れている要因としては、整備のための空間確保が困難なことや地域住民の生活への影響、また財政面での負担が大きい。国の統計では、1kmあたり約5.3億円の工事費用がかかるといわれており、練馬区では、1kmあたり約10億円かかるといわれている。

<事業概要>
 無電柱化推進事業の目的は、都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保、良好な都市景観の創出であり、特に練馬区のような都市部では、防災機能の強化が重要であると考えている。
無電柱化の整備方針としては、区内道路の軸となる都市計画道路や生活幹線道路の整備にあわせて無電柱化を進めており、無電柱化のネットワークを形成し、災害時に避難や緊急活動ができる体制づくりをしている。また、住民と協働して駅周辺地区の無電柱化に取り組み、無電柱化ネットワークの充実を図っている。
 整備事業を推進するために、電線管理者、東京都、区とで技術検討会を設置し、工事費削減や工期短縮ができる整備方法を検討している。無電柱化推進住民協議会を設置し、意見交換を行い、区民と協働しながら整備を進めている。
手法は、電線共同溝方式を基本とし、道路の地下に電線を収容する管路等を区が埋設し、その中に電線を収容する方式である。
無電柱化する道路については、都市防災機能の強化を実現できる効果的な道路や効率的に整備できる道路や補助金等を確保できる道路などを優先的に選定している。
 現在、無電柱化に取り組んでいる区内道路の延長は、3.52kmであり、計画期間の8か年で段階的に行い、最終的には9.76kmを整備する。
無電柱化推進に向けた施策として、電線管理者が所有する管路やマンホール等の既存施設を活用し、巨額な移設工事費用を回避している。

<無電柱化モデル事業地区>
 練馬駅南にある豊中通り地区は、緊急輸送道路である環状7号線に接続する防災上重要な路線であり、無電柱化モデル事業地区として指定している。事業期間は平成30年3月から平成37年(2025年)3月予定しており、1,700mを整備区間としている。
平成28年から住民協議会を組織し、意見交換を行ってきた。区民からの意見などを活用し、地上機器等を公共用地等に設置する方式や、街路灯上に設置するソフト地中化方式の2つの方式を採用した。当地区路線は、区道の無電柱化がほとんど進んでいないが、当該路線の狭い歩道の無電柱化にチャレンジすることで、地区の防災性の向上および無電柱化が可能となる区道の拡大を目指す。

 説明後、実際に無電柱化事業を行っている練馬駅周辺を担当職員同行のもと現地視察を行った。

<質疑応答>
(問)無電柱化の補助金においては、国と東京都の補助金の割合はいくらか。
(答)国が1/2で、残りは東京都が負担している。
(問)財源の捻出において、国からの優遇財政とかはあるのか。
(答)国からの補助金はあるが、無電柱化に熱心に取り組んでいる東京都からの補助金による財源が大きく、区が本来負担すべきものを時限的に東京都が負担している。
(問)整備費の低コスト化として、掘る深さを浅くすることでどれくらいの割合が安くなるのか。
(答)おおよそ一割程度は安くなるが、道路の舗装構造にもよるので一概にはいえない。
(問)地中に埋められた管路は、震災の際にどれぐらいの震度までであれば耐えることができるのか。
(答)管路は地中に埋めたとしても壊れるが、壊れる率は地上よりも少ない。また地上の管路は壊れて倒れてしまうことで、緊急車両の通行に支障があるが、地下であれば防止することができる。
(問)管路の材質とはどんなものか。
(答)管路の材質は塩ビ管のようなものである。
(問)管路が地中にあることで、水漏れによる感電の恐れはないのか。
(答)地下水との接触はないため、感電の恐れはない。
(問)埋設物調査をしている地中レーダーは、どのようなものを探すことができるのか。
(答)モデル事業として始めたばかりであり、効果については現在検証中である。
(問)地中レーダーの製造業者は多いのか。
(答)色々な製造業者があり、検知する手法も異なる。
(問)計画の中であげている無電柱化を検討する道路について、全部の道路を進めた場合、何年かかるのか。
(答)道路整備と連携しているところもあり、現時点で期間については不明である。
(問)優先的に無電柱化する道路の中で、駅周辺500mを防災という観点で選んだ理由は。
(答)駅周辺は人口が密集しており、火災などがあった際には、駅を利用して避難する人が多いという理由から優先的に行うことにした。
(問)街路灯上に地上機器を設置した理由は。
(答)街路灯は軽いし倒れにくく、倒れた場合も電柱のように緊急車両の通行を妨げない。
(問)事業を進めてきた中で、区民からの反対により、事業が進まなかったことはあるのか。
(答)無電柱化自体について反対はなかったが、事業計画の説明の際に、工事期間が長いことや地上機器の位置について区民から意見等などがあり、計画段階から十分に区民と話し合いを行い、工事の際の初期トラブルを防止してきた。
(問)今後も新しい道路を建設する場合は、無電柱化を行う予定なのか。
(答)行う予定である。

以上

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